Euthanasia of the Rentier 不労所得者の大往生

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ケインズ経済学のお手本のような金融政策を続けてきた日本が、失われた20年脱却を見事に果たしたかのように思われる昨今ではありますが、上級国民・下級国民間の貧富の差に代表される格差社会の拡大という新たな問題に直面しています。ケインズはその自著、”General Theory”(一般理論)の最終章の中で、以下のような事を書いています。

The outstanding faults of the economic society in which we live are its failure to provide for full employment and its arbitrary and inequitable distribution of wealth and incomes. The bearing of the foregoing theory on the first of these is obvious. But there are also two important respects in which it is relevant to the second. (Keynes 1936)

「ケインズの時代の経済社会の際立った欠陥は、完全雇用実現の失敗、そして恣意的で不公平な富と所得の配分にある。一般理論が前者に関係があるのは明らかだが、後者についても2つの重要な側面が関係している。」

ケインズの時代からかなり経つのに、格差社会と富の再配分は未だに解決されていません。

Now, though this state of affairs would be quite compatible with some measure of individualism, yet it would mean the euthanasia of the rentier, and, consequently, the euthanasia of the cumulative oppressive power of the capitalist to exploit the scarcity-value of capital. Interest today rewards no genuine sacrifice, any more than does the rent of land. The owner of capital can obtain interest because capital is scarce, just as the owner of land can obtain rent because land is scarce.

「ところで、この状況はある種の個人主義のはずなのですが、それにもかかわらず、金利生活者の大往生、延いては資本の寡占により好き放題やってきた投資家達の大往生を意味してしまうのです。現代における利子は、地代同様に、不労所得です。地主が土地が希少故に地代を得られるのと一緒で、資本の所有者は資本が希少が故に利子を得ることができているのです。」

不労所得者は、資本を独占する事で資本を希少化させ巨利を貪っている資本収奪者であって、彼等を安楽死させた方が社会の為であるという意味です。地主も土地を独占する事で、土地を希少化させて巨利を貪る収奪者である言えます。

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国の富は誰のものなのか?

1930年代という時代は、fascism (日独伊)、communism(ソ連)、liberalism(米英仏)の3陣営に分かれ、世界大恐慌の中、独自経済を発展させる事で不況脱出する事に躍起になっていた時代でした。その混沌とした時代に、John Maynard Keynesが1936年に発表した”The General Theory of Employment, Interest, and Money”(雇用、利子、通貨に関する一般理論)の中で、マクロ経済的に社会主義、ミクロ経済的に資本主義(個人主義)のような社会主義的資本主義が理想社会のような書き方をしています。理想社会の最終進化形態として、ケインズは、不労所得者(資本家、投資家)の安楽死が起こると言っていて、ただ、それがいつ起こるかについては明記していません。

keynesian economics is out of fashion ケインズ経済学は時代遅れみたいです
確かにケインズ経済学は時代遅れかもしれませんが、ケインズ経済学を実践しなければ、世界大恐慌まっしぐらなのが今の世界経済なのです。ケインズ経済の本質は既得権益の保護にあり、シュンペーターが提唱した創造的破壊とは、ケインズ経済学が保護している既得権益の破壊に他なりません。中高年世代が今の贅沢な生活を維持するために、若年世代に全ての負債を丸投げしていることが、今の世界経済の閉塞感の根本原因と言えます。

マイナス金利と完全雇用の現代社会(日本)はケインズのいう不労所得者の安楽死を体現しているように思えるのですが、しかし、現実には、不労所得者と勤労所得者の経済格差が人類史上未曽有の拡大を続けるという、彼の理想論とは真逆のことが起きてしまっています。勿論、これはあくまで通過過程であって、最終的に貪欲な資本家達がいなくなるのかもしれないのですが、一番問題なのは、政府が経済介入すべきというケインズの経済理論では、不労所得者の安楽死は絶対に起こり得ないという事なのです。TBTF(Too big too fail:大企業は潰せない)をexcuse(錦の御旗)にして貪欲な資本家、投資家達を政府が守り続ける限り、貧富の差は拡大を続けるだけです。社会主義的資本主義から縁故資本主義へ方向転換した先進国経済の行き着く先が、今アメリカで起こっているサンダース革命(共産主義革命)だとしたら、結局時代は繰り返すだけなのかもしれません。

そもそも、土地や資本が希少という人類最大の課題は、資本家達がそれらを独占しているからであって、現在、1%の富裕層が世界の富の99%を独占していると言われているだけでなく、The world’s richest 62 people now own more than the poorest 3.65  billion people. (世界の上位62人の大富豪が下位36.5億人よりも多く資産を保有している)貧富の差の拡大は人類史上未曽有の領域に達してしまっています。ワープアが身を粉にして(命を削って)汗水垂らして働いて稼いだ賃金を、不労所得者達に搾取されまくっている構図がそこにはあります。お金というものは、本来、労働から生まれるべきものなのです。労働者から搾取するだけの存在である不労所得者は、社会の害悪でしかなく存在価値すら否定されて然るべきなのです。

不労所得者にとって天国な世の中は、裏を返せば、労働者にとっては地獄を意味しています。少ない収入の半分以上を家賃に毟り取られるワープアも少なくありません。アメリカで起こっているサンダース革命は、不労所得者から資本を引き上げ、労働者にその資本を再配分するという社会主義革命であり、不労所得者の安楽死を目指しています。サンダースが大統領になる確率は今現在限りなくゼロに近いですが、未来は予測不能という事を考慮した場合、アメリカで社会主義革命が起こる可能性は決して否定出来ません。しかし、皮肉なのは、サンダースを支持者の多くが、学生や、いわゆる、free loader(政府支援で生活している人々)達だということです。彼等は、労働そのものを否定していて、富裕層が不当に蓄積した富を政府が収奪して、その富を俺達/私達に分配しろ!と言っています。つまり、彼等も労働者から搾取するだけの不労所得者と何ら変わりはないということです。

3世帯に1世帯がまともな食品を得るのに苦労するぐらい困窮している
経済格差も遂にここまで来てしまったのかという感があります。貧乏なのは貧乏人が悪いとい近視眼的な思考停止意見も未だに根強いのですが、真面目に清く正しく品行方正に生きている、薄給精勤若年労働者のワープア達が、結婚できないどころかあまりにも貧し過ぎて恋人を持つことすらできないぐらいの貧困に喘いでいる現状は、兎にも角にも異常であるとしか言いようがありません。
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