大統領選挙 クルーズ撤退 サンダース勝利 トランプ革命

ドナルド・トランプのインディアナ州予備選挙での圧勝を受けて、遂にここまで粘りに粘ったテッド・クルーズがレースからの撤退を表明した。これにより、トランプの共和党大統領候補指名選挙における勝利が確定した。トランプ vs クリントン、誰も想像すらしていなかった戦いが今始まろとしている。去年7月の時点での大方の予想は、共和党予備選はブッシュ、ウォーカー、ルビオの3強争い、トランプフィーバーは真夏の夜の夢、というものであった。political pundits, political analysts, political scientists 達の予想というか願望を見事なまでに裏切り続けてきたトランプではあるが、これから本番を迎える11月の大統領選に向けての熾烈な戦いを前に、果たして党内の反トランプ陣営を自陣に取り込むことが出来るのか、という非常に大きな問題を抱えている。

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トランプ勝利が意味するもの

トランプが共和党の代表候補となったわけではあるが、アメリカ国民の7割が嫌悪感を抱いていて、人間としての資質まで疑問視されているような人間が、果たして大統領候補としてふさわしいのだろうか。民主党のクリントン代表候補も負けず劣らず嫌われてはいるが、それでもトランプのように人間性までは疑われてはいない。トランプというアメリカの最悪部分の権化のような人物が大統領になった場合、残念ながら世界は未曾有の悲劇に見舞われる事は言うまでもないだろう。アメリカ国民が常識と良心を持っていれば、こんな人間を大統領に選ぶわけはないのだが、白人 vs 有色人種のような展開に発展していった場合、トランプ勝利は確実なものになると予想する識者もいる。トランプが白人至上主義を鼓舞すれば、これが白人優位な社会を堅持する最後のチャンスと悟った白色人種達が、雪崩の如くトランプに投票するだろうからだ。トランプ勝利が意味するものは、少なくともトランプを代表候補へと押し上げた共和党員達が、自分達は誇りある人種差別者、国粋主義者、孤立主義者だという事を声高に宣言した、新自由主義に対する挑戦状ではなかったろうか。その一方で、トランプはクリントンと大親友のニューヨークリベラルだという事実を完全無視して、彼を共和党候補に祭り上げた事は、共和党員達にとって、ある意味壮大な大冒険(大実験、賭け)とも言えるだろう。

経済的文明の衝突

Samuel Huntington (サミュエル・ハンチントン)のThe Clash of Civilizations and the Remaking of World Order (文明の衝突と世界秩序の再構築)では、イスラム、中国、日本の台頭に警鐘を鳴らしているわけだが、トランプ思想こそがまさにそれなのだ(Theory of Clash of Civilizations)。トランプは過激な反イスラム主義者というレッテルをリベラルメディアから既に貼られており、中国に対しても猛烈な批判を繰り返している。さらに日本という異質な文明(文化)に対しても敵意を抱いている。もちろん、メキシコに代表されるラテンアメリカ文明にも敵意剥き出しである(全て計算の上で為されているという説もある)。トランプの戦術はこの文明の衝突の根底にあるテーマを見事に利用した高等戦術であり、共和党支持母体である白人の中に眠っていた、異質な文化・文明に対する拒絶反応を見事に呼び覚まさせたのだ。トランプ自身についてはと言えば、トランプを良く知る彼の知人の全てが、トランプは人種差別者でも外国人嫌いでも何でもない、それどころかその全く逆だと言っているので、彼に投票した共和党員の多くは、彼の手のひら返しに失望させられるのかもしれない。

トランプとプーチンと中東問題

トランプはロシアのプーチンが大のお気に入りである(というよりも、彼に強い憧れを抱いている節がある)。ロシアのプーチンと協力して中東問題を解決したいという思いが非情に強い。NATOなんかいらないという彼の大胆な発言も、プーチンに対する熱烈なアピールとも見て取れるだろう。米ロ同盟を真剣に考えた場合、一番のネックはやはりイランの存在だろう。ロシア・イラン・シリア・ヒズボラの今の関係を解消する事なく、ロシアとアメリカが新たな同盟関係を模索する事は難しいというか、まず不可能な事だと言える。トランプとしては、白色人種 vs イスラム、のような構図を描きたいのかもしれないが、国内にイスラムを多く抱える欧州の国々にはまず受け入れられないだろうし、この辺の所は、トランプ大統領がプーチン大統領とどこまで密な関係を構築できるかにかかっているのかもしれない(Trump’s Putin Fantasy)。米ロ同盟が達成された場合、日本と欧州はどういう立ち位置をとるべきなのか、日本のNATO入りをすすめるドイツのメルケル首相の狙いは(メルケル首相 日本にNATO加盟を提案)、トランプ大統領誕生という最悪のシナリオを見据えた、米ロ同盟に対抗し得る新たな勢力の構築にあるのかもしれない。

大統領選挙勝利 = トランプ革命成就

トランプ革命の第一の関門を突破した今、第二の関門である大統領選挙勝利へ向けた、トランプの情け容赦の無いクリントン叩きが始まろうとしている。トランプが大統領になれたとしても、弾劾裁判にかけられる可能性が残っているので、それが最後の関門になる(Could Trump Be Impeached Shortly After He Takes Office?)。可能性は低いと言えるが、トランプがあまりふざけた事をすると、そうなる可能性も出てくる。副大統領をトランプ以上に酷い人間にしておけば、間違っても弾劾される事はないだろうと言われている。そういう事もあって、トランプは副大統領にテッド・クルーズを選ぶべきだという声も上がっている。トランプ革命には白人至上主義者だけでなく、アメリカで絶滅危惧種の中間層の力が不可欠だとされている。いわゆる、Reagan Democrat (レーガン民主党員)、というやつだ。そんなものはとっくの昔に絶滅したという声もあるが、Sanders Democrat という一種の、Reagan Democrat が存在しているので、トランプにとってはこの層を取り込むことが至上命題とされている。Welcome to the revolution に気になる記事が載っているので、一部引用させてもらう。

A study by the Federal Reserve found that 25 percent of adults and families could not come up with $400 to meet an unexpected emergency. A similar study that raised the amount to $1,000 learned that 57 percent of the population could not come up with that money. This is well into the middle class who are still struggling with debts that arose as equities fell during the Great Recession of 2008. Since then relative income that has fallen more even with minor inflation.

57%のアメリカ国民は貯蓄1000ドル(10万円)以下らしく、2008年の世界大不況から未だに立ち上がれていないアメリカの実態を浮き彫りにしている。これを受けての

The benefits of the government change that has taken place has gone to the wealthy in an economy where the number of executives who earned more than $30 million or more a year doubled between 2014 and 2015.

2014年~2015年の一年間で、年収30億円を超える企業役員の数が倍増、さすがにここまで格差が酷いと、貯蓄が10万もないアメリカ国民は納得できないだろう。

To those who back both Donald Trump and Bernie Sanders, the opposite ends of the social spectrum, the issues of social change, same sex marriage, transgender restrooms, abortion, immigration, environmental pollution are less important this year than increased wages, secure pensions, and a better economic life for themselves and their families.

トランプとサンダースは主義・主張は全く違うが、アメリカ経済優先という点では一致していて、今年の選挙は、社会問題以上に経済問題がクローズアップされるている以上、サンダース支持者達がトランプに投票する可能性はかなり強いと言える。しかし、その一方で、fiscal conservative な共和党員達がヒラリー・クリントンに挙って投票する事も予想されている。クリントンがマイノリティー票をどれだけ獲得出来るのか、そして、トランプが白人票をどれだけ獲得できるのか、白人票 vs マイノリティー票、あるいは、男性票 vs 女性票、の戦いになるだろうと思われる。トランプが11月に大統領に当選した途端に世界金融不安が始まり、年末までに金融恐慌が始まるのではないかという、そんな嫌な予想もされ始めている。