ドル円、為替レートの調整が通貨価値に影響を及ぼす

為替レートとは不思議なもので、一時期1ドル130円を超えると言われていたドル円が、今度は90円を割れるとまで言われだし、今は100円近辺で落ち着いていますが、今後どっちに走るのかは全く予想が付きません。何を尺度にすればいいのか分からないからです。日銀緩和の限界も確実に一因になっています。

アメリカのQE3の開始(2012年9月)以降、為替相場は既に円安傾向にありました。その後の日銀金融緩和期待で一気に円安株高が進み、2013年4月の異常な金融緩和発表で株式市場は狂乱状態に陥ります。円安株高が急ピッチで進み、加熱し過ぎた株式相場は、翌5月に暴落するわけですが、その後もドル円は120円台、株価も2万円台まで値を上げて、今年に入って遂に音を上げて、ドル円も株価も低空飛行を続けています。

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新たな通貨評価基準

Forthcoming research from Cass Business School and the Bank of International Settlements has found that newly proposed currency valuation metrics display strong predictive power for exchange rates, offering valuable insights for global policymakers and investors alike.

「カス・ビジネス・スクールと国際決済銀行の今度の研究は、新たに提案された通貨評価指標が為替相場のための強力な予測力を提示し、世界の政策立案者と投資家に対して、一様に貴重な洞察を提供することを明らかにしました。」

Bank of International Settlements(BIS)はBank for International Settlementsとも言います。currency valuation metricsは通貨評価指標でいいかと思います。

何だかよく分かりませんが、すごい自信なのは確かです。

Currency Value, a paper forthcoming in the Review of Financial Studies, proposes a novel way of adjusting real exchange rates (RER) for key country-specific fundamentals to obtain better gauges of currency valuation levels.

Review of Financial Studiesに近刊予定の研究論文、Currency Valueは、通貨評価水準のより良い判断基準を得るために、主要国ごとのファンダメンタルズのための実質為替レートを調整する今までにない方法を提案しています。」

The paper argues that accounting for productivity, export quality, foreign assets, and output gaps isolates information related to currency risk premia across countries. The resulting measure of currency value displays a stronger predictive power for currency movements, serving as a more precise input into investment and policy decisions.

「論文は、生産性、輸出品質、海外資産、GDPギャップを明らかにすることが、国ごとの通貨リスクプレミアムに関連している情報を分離させると主張しています。結果として生じる通貨価値の尺度は、為替動向のより強力な予測力を誇示し、投資と政策決定のためのより正確なインプットとしての役割を果たします。」

inputはアドバイス、データとも訳せますが、インプットが一番無難かもしれません。投資や政策を最終決定する際の判断材料を提供する、判断材料という意味で、国ごとのリスクプレミアム情報を明確にすることで、本当のその国の通貨価値を決めることが可能であるということです。この指標に照らし合わせて日本円の通貨評価をした場合、生産性は低い、輸出品質はそこそこ、海外資産はアメリカやイギリスに次ぐ世界第三位ですが、対外純資産では圧倒的第一位なので超優良、GDPギャップは借金1000兆円超、異常でメチャクチャな金融緩和を続けているにもかかわらず改善されないので最悪。

日本の場合は人口動態や国の借金、公務員の異常に高額な人件費、日銀の出口無き狂気の沙汰の金融緩和を考えた場合、国としてはとっくに終わっているのですが、対外純資産と欧米経済の体たらくぶりのおかげで通貨が暴落せずに済んでいるだけとも言われています。少なくとも国民の8割は終わりがいつやってきてもおかしくありません。

円は過大評価通貨の代表か?

“Typical currency strategies such carry trades – which buy low interest rate currencies and sell low interest rate currencies to gain from interest rate differentials – are simply unattractive when all interest rates around major economies are so low. It then becomes necessary for currency investors to search for yield in other ways that are not related to interest rates, and the first thing that comes to mind is build a currency value strategy that buys undervalued currencies and sells overvalued currencies, irrespective of the interest rate on offer.”

「低金利通貨を買って、低金利通貨を売って金利差で稼ぐキャリー・トレードのような典型的な通貨戦略は、どの主要国通貨も低金利な時は単純に魅力がありません。通貨投資家が金利に関連しない別の稼ぎ方を探す必要があり、最初に思い浮かぶのは、低くされている金利に関係なく、過小評価されている通貨を買って、過大評価されている通貨を売る通貨価値戦略を構築することです。」

キャリー・トレードは低金利通貨を借りて、高金利通貨に買い換えて、金利と借りた通貨の下落でダブルで稼ぐ手法です。つまり1ドル100円で円を借りて、その円でドルを買った場合、ドル金利で稼ぐ以外に、円を返す際に円が借り値よりも下落していれば、そこでも儲けが出るということです。1ドル100円で1億円借りて、100万ドル買った場合、1ドル125円だと借りた1億円は85万ドルになり、15万ドル儲かる計算になります。さらに日米金利差による利鞘も加わるので、儲けはさらに大きくなります。日米金利差が大きくなると円安になって、小さくなると円高になるのはそういう理由からなのです。

ただ日本円はスイスフランに匹敵する安全通貨(セーフヘイブンカレンシー)になっているために、リスクオフだと円高になってしまいます。これは欧米の銀行に比べて、日本とスイスの銀行が盤石であるのと、日本が世界一の債権国という事情が関わっていますが、日本債権が安全資産であるとはとても言い難いので、日本円が本当に安全通貨であるかは議論が別れるところです。日銀が実効支配している日本の国債市場と株式市場は異常だし、異常な事が異常でなくなった時が、この国が本当にやばい状態だとも言えます。

未来を見据えた取引

A core building block of any method to determine currency value is purchasing power parity (PPP) and the related concept of real exchange rates (RER) embed expectations about future macro fundamentals and currency risk premiums, rendering them useful gauges of future currency excess returns. However, the way in which currency valuation measures relate to future currency movements is far from being well understood.

「通貨価値を決定するためのあらゆる手法の根幹は、購買力平価と実質実効レートの関連概念が、それらを将来の通貨超過収益の有益な尺度にしている、将来のマクロファンダメンタルズと通貨リスクプレミアムに関する予想を織り込んでいることです。しかし、通貨評価基準が将来の通貨動向にどう関係しているのかは決して良くは理解されていません。」

the way in whichはthe way howと同じです。rendering themのthemは、future macro fundamentals and currency risk premiumsのことです。株もFXも将来の経済指標やリスクを考慮して売買するわけで、例えば、A社の将来の業績や決算リスクなどを織り込まないで取引してしまうと、痛い目に遭う可能性があります。デイトレや短期売買なら問題はないのですが、長期的な投資を考えた場合は将来予測は非常に重要になってきます。

将来性を考えれば、日本に未来があるとは到底思えないので、未来を見据えた取引をする場合は、日本円、日本国債、日本株への投資が現実的とは思えません。そういった意味でも、日本の株式市場が短期筋の玩具にされるのも当然だと言えます。日銀と年金資金のPKO(買い支え)が無ければ、日本の株式市場は完全に外資のやりたい放題になっていたし、日本国債の空売りが、widow-makerとして短期筋から恐れられているように、日本株を空売りすることが日本国債の空売り並みにリスキーになる日が来るかもしれません。

通貨評価手法

The researchers employed a panel of exchange rates and macro fundamentals (such as GDP, inflation, interest rates and net foreign assets) from 1970 Q1 to 2014 Q1, assessing at the quarterly frequency. The sample covered 23 advanced economies and emerging markets, using data from the Global Financial Database (GFD) and a measure of export quality from the International Monetary Fund (IMF).

「研究者は、四半期周期で評価している、1970年Q1から2014年Q1までの為替レートとマクロファンダメンタルズ(GDP、インフレーション、金利、対外純資産など)の一団を採用しました。そのサンプルは、GFDのデータとIMFの輸出品質の尺度を用いて、23の先進諸国と新興国を調査対象にしました。」

かなり綿密な調査記録を基にした通貨評価をしているように思えます。

Conceptually, the RER is driven by three components:

1.Expected excess returns ( risk premia);
2.The expected real interest rate differential; and
3.If long-run PPP fails to hold, the long-run expected RER.

Adjusting the RER for macroeconomic fundamentals related to the latter two expectations should result in a cleaner measure of risk premia.

「概念的に、PERは3要素によって決定されています。1. 期待超過収益(通貨リスク・プレミアム)、2. 期待実質金利差、3. 長期的にPPPが維持できない場合、長期的な期待PER、後者2期待値に関連するマクロ経済ファンダメンタルズのPERを調整することはリスクプレミアムのより純粋な尺度に帰着するはずです。」

The researchers focused on the following fundamentals to adjust real exchange rates:

(i) Harrod-Balassa-Samuelson (HBS) effects (measured as real GDP per capita),
(ii) the quality of a country’s exports,
(iii) net foreign assets (a measure of net foreign wealth of a country), and
(iv) output gaps.

「研究者は、実効為替レートを調整するために、以下のファンダメンタルズに焦点を当てました。1. バラッサ・サミュエルソン効果(一人当たりの実質GDPとして評価された)、2. 国の輸出品の品質、3. 対外純資産(国の純対外資産の尺度)、4. GDPギャップ」

バラッサ・サミュエルソン効果は初耳なので調べてみました。

バラッサ=サミュエルソン効果( Ballasa-Samuelson Effect)とは

本理論は、(発展途上国のように)経済成長率が高い経済では実質為替レートが急激に切り上がる傾向にあり、実質所得水準が上昇するほど相対的に物価水準が高くなる傾向にあるという経験的な現象を理論的に説明するものである。
まず、モデルの前提としては、(1)貿易財に関してのみ「一物一価の法則」が成立、(2)貿易財部門の生産性の上昇率は非貿易財部門の生産性上昇率よりも相対的に高い、(3)財・生産要素市場では完全競争が成立(小国の仮定、世界金利は所与)している、 (4)国際間における資本移動は完全である、(5)労働の総供給量は一定で、かつ国際間の移動はなく、各々の国において単一の労働市場が存在する、 (6)ワルラスの法則が成立している等がある。なお、いずれの仮定についても、厳密には中国において成立していないことは留意されるべきである。
その上でバラッサ=サミュエルソン効果の概略を述べると、一物一価が成立している資本集約的な貿易財部門(製造業)と成立していない労働集約的な非貿易財部門(サービス業)との間において生産性上昇率格差が生じるものの、賃金はそれぞれの国における単一の労働市場での裁定を通じ等しくなっているため、生産性上昇率格差が大きいほど、非貿易財価格が相対的に高く評価されることとなる。

ワルラスの法則で心が折れました。ワケワカメ状態です。

“Each of these variables bears a clear link to long-run expectations of the RER and/or expected real interest rate differentials. We found that all four fundamentals have predictive power for real differentials, making them useful devices to purge the effect of fundamentals from the RER. In turn, this helps to obtain a cleaner risk premium measure for investment decisions, allowing a better understanding of the information contained in the RER.”

「これらの変数の各々が、PERの長期的な期待値と/または期待実質金利差に明確な関連を持っています。我々は、4つのファンダメンタルズの全てが、実質金利差に対する予測力を持ち、それらをPERが提供しているファンダメンタルズの影響を取り除くための有益なデバイスにしています。言い換えると、この事は、投資決定のための純粋なリスクプレミアム指標を得るのに役立ち、PERに含まれる情報のさらなる理解を可能にします。」

cleanerは掃除機やクリーナーという意味ではなく、cleanの比較級なのでより綺麗といった意味になります。ここでは純粋としておきました。

日銀が20・21日に開かれる金融政策決定会合で追加緩和を発表するのかどうかあれこれ言われていますが、追加緩和はないです。FRBも20・21日がFOMCなので、FOMC前に日銀が先走ることは有り得ないだろうと言うのが大方の見方だからです。アメリカも利上げはないので、アメリカ市場は大幅に上昇するでしょうが、日本の場合、日銀追加緩和なし、FRB利上げなしのダブルパンチで、円が90円台に突入すると思われるので、円高・株安の展開が濃厚です。とは言っても、サプライズの可能性も無くはないので、まぁ、その可能性はほとんど無きに等しいのですが、それでも0.1%ぐらいは存在します。黒田日銀総裁とイエレンFRB議長の胸先三寸なので、リーマン・ショックのような事が起こるような事はしないだろうとも言えます。現時点での利上げは危険過ぎるという声もあるので、去年の12月の利上げでどうなったかを考えた場合、利上げなど出来るはずもありません。

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