省エネ材料:強誘電体とフェリ磁性体の合体

米エネルギー省ローレンス・バークレー国立研究所とコーネル大学の研究者達が、強誘電体とフェリ磁性体を組み合わせて、それらの配列を室温近傍において弱い電場で制御できるようにすることに成功したそうです。超省電力なマイクロプロセッサ、記憶装置、次世代エレクトロニクスへの扉を開ける可能性があるようです。

今回の研究成果は9月22日に刊行されたNature誌に掲載されているみたいです。こういった次世代コンピュータのための基礎技術は毎日のように開発されていますが、それが実用化につながることがほとんどないのが残念です。

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酸化ルテチウム鉄

A conscious coupling of magnetic and electric materials

The researchers engineered thin, atomically precise films of hexagonal lutetium iron oxide (LuFeO3), a material known to be a robust ferroelectric, but not strongly magnetic. Lutetium iron oxide consists of alternating single monolayers of lutetium oxide and single monolayers of iron oxide, and differs from a strong ferrimagnetic oxide that consists of alternating monolayers of lutetium oxide with double monolayers of iron oxide (LuFe2O4).

「研究者は、薄い、原子精度の、強固な強誘電体なのに強い磁性は持たないことが知られている物質、六方晶酸化ルテチウム鉄の薄膜を作りました。酸化ルテチウム鉄は酸化ルテチウムの単一単分子層と酸化鉄の単一単分子層が交互に積み重なって構成されていて、酸化ルテチウムの単一分子層と酸化鉄の二重単分子層が交互に積み重なって構成されている強力なフェリ磁性酸化物のLuFe2O4とは異なります。」

They did this at temperatures ranging from 200-300 kelvins (minus 100 to 80 degrees Fahrenheit), relatively balmy compared with other such multiferroics that typically work at much lower temperatures.

「彼等はこれを、概してはるかに低い温度で機能する他のそのようなマルチフェロイック物質と比較して相対的に穏やかな、200から300ケルビン(華氏-100~80度)までの温度範囲で行いました。」摂氏-73.3℃~27℃

ドライアイスで冷却可能温度から室温までという感じです。

室温で機能する

“Developing materials that can work at room temperature makes them viable candidates for today’s electronics,”

「室温で機能する材料を開発することは、それを今日のエレクトロニクスの有望な候補にさせています。」冷却装置がいらないのは大きいです。

“The multiferroic we created takes us a major step toward that goal.”

Researchers have increasingly sought alternatives to semiconductor-based electronics over the past decade as the increases in speed and density of microprocessors come at the expense of greater demands on electricity and hotter circuits.

「我々が作ったマルチフェロイックはそのゴールへ向けて大きな一歩を踏み出させています。研究者は、マイクロプロセッサの高速化・高密度化は、電気の飽くなき要求と電気回路の高温化という代償で手に入れているので、過去10年の間、半導体ベースの電子機器の代替を、ますます求めるようになっています。」

省電力=低熱なので、回路の高速化にもつながります。

省エネとプライバシー

“If you look at this in a broad sense, about 5 percent of our total global energy consumption is spent on electronics,”

「広義でこれを見た場合、世界のエネルギー消費量の約5%は電子機器に使われています。」これが多いのか少ないのかは分かりません。

“It’s the fastest growing consumer of energy worldwide. The Internet of Things is leading to the installation of electronic devices everywhere. The world’s energy consumed by microelectronics is projected to be 40-50 percent by 2030 if we continue at the current pace and if there are no major advances in the field that lead to lower energy consumption.”

「それは世界的に最も成長著しいエネルギー消費者です。モノのインターネットは所構わず電子デバイスの導入を引き起こしています。もし我々が現在のペースを維持してこの分野で省エネをもたらす大きな技術革新が起きなければ、マイクロ電子機器による世界のエネルギー消費は2030年までに40~50%になると予測されています。」

5%が50%とかやば過ぎますが、人口も80億を超えているし、さらに電子機器を使う人口も3倍増しているかもしれないので、当然かもしれません。あらゆるものに電子機器が組み込まれてネットにつながるようになれば、完璧な監視社会が誕生します。超省電力な超微細カメラはどこにでも埋め込み可能なので、もはや個人のプライバシーは完全消滅して、個人情報は体の隅々まで世界中の人に知れ渡る、そんな時代が来るのもそう遠くはありません。とは言っても全人類のプライバシーが晒されるわけなので、プライバシーという概念自体が消滅している可能性もあります。それはそれで良い事なのかもしれません。

A major path to reducing energy consumption involves ferroic materials. Key advantages of ferroelectrics include their reversible polarization in response to low-power electric fields, and their ability to hold their polarized state without the need for continuous power. Common examples of ferroelectric materials include transit cards and, more recently, memory chips.

「省エネへの主要な進路にフェロイック物質が絡んでいます。強誘電体の重要な利点は、低電力電場に呼応したそれらの可逆的な分極と、常時電力の必要なしで分極状態を維持する能力を含みます。強誘電物質の一般的な例は、トランジットカードや、もっと最近では、メモリー素子を含みます。」パスモやスイカやMRAMですかね。

強誘電体とフェリ磁性体

Ferromagnets and ferrimagnets have similar features, responding to magnetic fields, and are used in hard drives and sensors.

Pairing ferroelectric and ferrimagnetic materials into one multiferroic film would capture the advantages of both systems, enabling a wider range of memory applications with minimal power requirements. It has been an uneasy marriage, however, because the forces needed to align one type of material fail to work for the other. Polarizing the ferroelectric material would have no effect on the ferrimagnetic one.

「強磁性体とフェリ磁性体は、磁場に反応することや、ハードドライブやセンサーに使われている、似たような特徴を持っています。強誘電体とフェリ磁性体を1つのマルチフェロイック薄膜に組み合わせることは、両方の系の利点を取り込んで、最小限の電力要求で幅広い範囲のメモリーアプリケーションを可能にします。しかしそれは、1つのタイプの物質を調整するのに必要とされる力が、他の物質には効かないせいで、難しい融合になっています。強誘電体を分極化させても、フェリ磁性体には影響しません。」

強誘電体とフェリ磁性体の分極化にはそれぞれ違う力が要求されるみたいです。かなりやっかいな問題ですが、簡単ではないから新発見なんでしょうね。

The ultra-precise technique – something Schlom likens to atomic spray painting – allowed the researchers to design and assemble the two different materials atom by atom, layer after layer. They intentionally seated a lutetium iron oxide with alternating iron oxide double layers (LuFe2O4) next to lutetium iron oxide with alternating iron oxide single layers (LuFeO3), and that positioning made all the difference in nudging the ferrimagnetic atoms to move in conjunction with the ferroelectric ones.

「Schlomが原子の吹き付け塗装に擬えているところの超高精度技術が、研究者が、個々の原子レベルで何層にも2つの異なる物質をデザインして組み立てることを可能にしています。彼等は意図的に、酸化鉄(LuFeO3)一層と交互に積み重ねた酸化ルテチウム鉄の隣に酸化鉄(LuFe2O4)二重層と交互に積み重ねた酸化ルテチウム鉄を据え付け、その位置決めがフェリ磁性原子が強誘電性原子と完璧に連動して動くようにしています。」

酸化鉄と酸化ルテチウムの絶妙な組み合わせと重ね合わせと配置が、今回の新材料を画期的なものにしているようです。原子レベルでこういう事が可能になっているので、今後もこういった画期的な新材料や新分子、新細菌が人工的に作られていくので、人類の未来は案外明るいのかもしれません。これに人工知能技術が加わり、さらに量子コンピュータまで実用化されるようになった暁には、大変な事になりそうです。

新材料の内部構造

To show that this coupling was working at the atomic level, the researchers took the multiferroic film created at Cornell to Berkeley Lab’s Advanced Light Source (ALS). There, they had the equipment and expertise to test the material and capture images of the result using photoemission electron microscopy.

「このカップリングが原子レベルで機能していることを明らかにするために、研究者はコーネル大学で作られたマルチフェロイック薄膜をバークレー研究所の改良型放射光施設へ持っていきました。そこにはその物質をテストして光電子顕微鏡を使って結果の画像をとらえるための設備と技能が揃っていました。

they used a 5-volt probe from an atomic force microscope to switch the polarization of the ferroelectric material up and down, creating a geometric pattern of concentric squares. They then showed that the ferrimagnetic regions within the layered sample displayed the same pattern, even though no magnetic field was used. The direction was controlled by the generated by the probe.

「彼等は、強誘電体の極性を反転させて同心正方形の幾何パターンを作るために、原子間力顕微鏡の5ボルト探針を使いました。それから、磁場が印加されていないにもかかわらず、重構造サンプル内部のフェリ磁性領域が同じパターンを示すことを明らかにしました。その方向は探触子によって生じた電界によって制御されました。」

“It was when our collaborators at Berkeley Lab demonstrated electrical control of magnetism in the material that we made that things got super exciting!”

「事態が超興奮状態になったのは、バークレー研究所で我々の協力者が、我々が作った物質における磁性の電気的制御を実証した時でした。」

磁性を室温で電気的にコントロール可能なことが、この新物質の肝のようです。門外漢の私にも、確かに凄いことのように見えます。

将来が楽しみ

“Room-temperature multiferroics are rare. Including our new material, a total of four are known, but only one room-temperature multiferroic was known in which magnetism could be controlled electrically. Our work shows that an entirely different mechanism is active in this new material, giving us hope for even better—higher temperature and stronger—manifestations for the future.”

「室温マルチフェロイックは稀です。我々の新材料を含め、全部で4つが知られていますが、磁性を電気的に制御できる室温マルチフェロイックは1つしか知られていません。我々の研究が、完全に異なったメカニズムが、この新しい材料に積極的に関わっていることを示唆していて、我々に、より高温でより強力なといった、未来のためのもっと素晴らしい兆候を与えてくれています。」

The researchers next plan to explore strategies for lowering the voltage threshold for influencing the direction of polarization. This includes experimenting with different substrates for building new materials.

「研究者達は次に、極性の方向に影響を与えるための電圧の閾値を低下させるための方法を探求する計画を立てています。これには新材料を構築するために違う基質を使って実験を行うことを含んでいます。」

“We want to show that this works at half a volt as well as at 5 volts,” said Ramesh. “We also want to make a working device with the multiferroic.”

「”これが5ボルト同様に、0.5ボルトでも機能することを証明したい”とRameshは言った。”マルチフェロイックを使ったちゃんと機能するデバイスを作りたい”

低電力化が可能になれば、電力消費も減るし、発熱も抑えられるので、色々な意味で有益です。消費電力(バッテリーの持ち)や発熱(火傷や発火)は今の電子機器の問題でもあるので、この新素材は確かに期待大と言えます。

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