珍しい量子液体が未来の電子技術を変える!

プリンストン大学とテキサス大学オースティン校による共同研究で、珍しい電子の集団的挙動を明かし、荷電粒子を操作する新しい方法を示唆している、強磁場における電子軌道を直接画像化する実験に成功した事が、10月21日にScience誌に掲載されました。

今回の研究は、量子力学的な振る舞いが出現する、非常に低い温度に引き留めておくと、電子が自発的に、ビスマスの結晶表面上を同一の楕円軌道を描いて回り、量子流体状態を形成する事を実証しました。この振る舞いは、プリンストンと他の大学の研究者により、過去20年間、理論的に予測されていました。

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量子流体

Unusual quantum liquid on crystal surface could inspire future electronics

“This is the first visualization of a quantum fluid of electrons in which interactions between the electrons make them collectively choose orbits with these unusual shapes,” said Ali Yazdani, the Class of 1909 Professor of Physics at Princeton, who led the research.

「”これが、電子間の相互作用が、これらの非常に珍しい形状を持つ軌道を、集団的に選ばせている、電子の量子流体の初視覚化です。”と研究を主導している、プリンストン大学物理学部のAli Yazdani教授は述べました。」

class of 1909は、1909年卒業生という意味ですが、それだと余裕で100歳を超えている事になるので、さすがにそれはないだろうと。

“The other big finding is that this is the first time the orbits of electrons moving in a magnetic field have been directly visualized,” Yazdani said. “In fact, it is our ability to image these orbits that allowed us to detect the formation of this strange quantum liquid.”

「”他の大きな発見は、これが磁場中を移動する電子の軌跡が直接視覚化された初めての機会でした。”と教授は言った。”ちなみに、この珍しい量子流体の形成を発見できたのは、これらの軌道を撮像する我々の能力です。”」

Fundamental explorations of materials may provide the basis for faster and more efficient electronic technologies. Today’s electronic devices, from computers to cellphones, use processors made from silicon. With silicon reaching its maximum capacity for information processing, researchers are looking to other materials and mechanisms.

「材料の基本的な探求は、より高速でより高効率なエレクトロニクス技術の基礎を提供できるかもしれません。今日の電子デバイス(コンピュータから携帯電話に至る)は、シリコン製プロセッサを使っています。シリコンが情報処理のための能力の限界に達しつつあるので、研究者は、他の材料と機構に目を向けています。」

バレートロニクス

One area of progress has been in two-dimensional materials, which allow control of electron motion by breaking the particles away from the constraints of the underlying crystal lattice. This involves moving electrons among “pockets” or “valleys” of possible states created by the crystal. Some researchers are working on ways to apply this process in an emerging field of research known as “valleytronics.”

「発展分野の1つが、粒子をその基礎にある結晶格子の束縛から解放することで、電子運動の制御を可能にしている、2次元材料です。これには、結晶によって作られ得る状態のポケットかバレーの間を電子が移動することも含んでいます。一部の研究者は、バレートロニクスとして知られる新興研究分野でこのプロセスを応用するための方法を検討中です。」

In the current work, the strange elliptical orbits correspond to the electrons being in different “valleys” of states. This experiment demonstrates one of the rare situations where electrons spontaneously occupy one valley or another, the researchers said.

「最近の研究において、その奇妙な楕円軌道は、異なるバレー状態にある電子に対応しています。この実験が、電子が自発的にどっかのバレーを専有する、非常に稀な状況の1つを実証しています。と研究者は言った。」

ビスマス結晶

The team at Princeton used a scanning tunneling microscope to visualize electrons on the surface of a bismuth crystal at extremely low temperatures where quantum behaviors can be observed. Because electrons are too small to be seen, the scanning tunneling microscope has a miniscule electrically charged needle that detects electrons as it scans the crystal surface.

「プリンストンのチームは、量子的振る舞いを観察可能な極低温で、ビスマス結晶表面上の電子を視覚化するために走査型トンネル顕微鏡を使いました。電子はあまりにも小さ過ぎて見ることができないので、走査トンネル顕微鏡は、結晶表面をスキャンしている最中に電子を検出する、非常に小さい帯電した針を持っています。」

Bismuth has relatively few electrons, which makes it ideal for watching what happens to a flow of electrons subjected to a high magnetic field. Despite its purity, the crystal Ji and Cava grew contained some defects. Roughly one atom was slightly out of place for every tens of thousands of atoms.

「ビスマスは比較的少数の電子を有していて、それが、強磁場にさらされている電子の流れに何が起こっているのかを観察するのに理想的にしています。純度にかかわらず、JiとCavaが成長させた結晶は、いくつかの欠陥を含んでいました。大雑把に、数万個の原子につき1個の原子が僅かに場違いでした。」

電子のスープ

Normally, in the absence of the magnetic field, electrons in a crystal will flit from atom to atom. Applying a strong magnetic field perpendicular to the flow of electrons forces the electrons’ paths to curve into orbit around a nearby defect in the crystal, like planets going around the sun. The researchers found that they could measure the properties, or wave functions, of these orbits, giving them an important tool for studying the two-dimensional soup of electrons on the surface of the crystal.

「通常、磁場が無い場合、結晶中の電子は、原子から原子へせわしなく動き回ります。電子の流れと垂直に強力な磁場を印加することで、惑星が太陽の周りを回るように、電子の軌道を結晶中の近隣の欠陥の周りを回る軌道へ強制的に曲げます。研究者は、これらの軌道の性質、波動関数が測定可能で、結晶表面の2次元の電子のスープを研究するための重要なツールを与えてくれる事を発見しました。」

電子のスープが美味いのかどうか知りませんが、結晶表面のくぼみに電子が溜ってスープみたく見えるのかもしれません。

ネマチック秩序

Due to the crystal’s lattice structure, the researchers expected to see three differently shaped elliptical orbits. Instead the researchers found that all the electron orbits spontaneously lined up in the same direction, or “nematic” order. The researchers determined that this behavior occurred because the strong magnetic field caused electrons to interact with each other in ways that disrupted the symmetry of the underlying lattice.

「結晶の格子構造の理由から、研究者は、3つの形の異なる楕円軌道を目撃することを予測していましたが、代わりに、全ての電子軌道が自然発生的に同じ方向に、または、ネマチック秩序に並んでいるのを発見しました。彼等は、この挙動が、強磁場が基底格子の対称性を破壊するように電子を相互作用させて起こると判断しました。」

“It is as if spontaneously the electrons decided, ‘It would lower our energy if we all picked one particular direction in the crystal and deformed our motion in that direction,'” Yazdani said.

「それは、あたかも電子が自発的に、’もし我々全員が、結晶中である特定の方向を選んで、その方向に我々の動きを変形させれば、我々のエネルギーを減少させるはずです。’と決定しているようなものです。と教授は言った。」

集団で行動すれば、エネルギーを節約できるみたいな感じで、集団的に動く方向を選んで、同じ方向へ動いているとか、面白い例えです。

“What was anticipated but never demonstrated is that we can turn the electron fluid into this nematic fluid, with a preferred orientation, by changing the interaction between electrons,” he said. “By adjusting the strength of the magnetic field, you can force the electrons to interact strongly and actually see them break the symmetry of the surface of the crystal by choosing a particular orientation collectively.”

「”予想されていたのに実証できなかったのは、我々が、電子間相互作用を変化させて、選択方位(優先方位)で、電子流体をネマチック流体に変えられるという事です。”と彼は言った。”磁場の強度を調整することで、電子を強く相互作用させて、実際にそれらが特定の方位を集団的に選択する事で、結晶表面の対称性を破るのを目撃できます。”」

ネマチック流体とか、ネチネチしていそうな流体です。ネマチックは、液晶の状態の一種で、分子の配列が一定方向に配向しているのに、隣同士の配列は不規則である状態。のことのようですが、よく分かりません。

自発的対称性の破れ

Spontaneous broken symmetries are an active area of study thought to underlie physical properties such as high-temperature superconductivity, which enables electrons to flow without resistance.

Prior to directly imaging the behavior of these electrons in magnetic fields, researchers had hints of this behavior, which they call a nematic quantum Hall liquid, from other types of experiments, but the study is the first direct measurement.

「自発的対称性の破れ(対称性の自発的破れ)は、電子が抵抗なしで流れることを可能にする高温超伝導などの物理的特性の根底にあると考えられている、活発な研究領域です。磁場中でこれら電子の振る舞いを直接画像化する以前、研究者は、彼等がネマチック量子ホール液体と呼んでいる、この振る舞いのヒントを、他の種類の実験から得ていましたが、今回の研究が、初の直接観測を達成しています。」

対称性の破れは以前も、時間結晶で取り上げましたが、高温超電導や常温超伝導にも関連があるらしいので、熱い研究領域のようです。ネマチック量子ホール液体とか凄い名前の液体ですが、今回初めて観測されたみたいなので、快挙でもあります。

“People have been looking at these states in a bunch of different contexts and this experiment represents a new way of observing them,”

「人々は、一連のさまざまな文脈でこれらの状態を観察していて、この実験はそれらを観察するための新しい方法を示しています。」

”When Yazdani’s group showed me what they saw, I immediately recognized that they had identified a state that we had predicted, but in a completely unexpected way. It was quite a happy surprise.”

The study gives experimental evidence for ideas predicted over the past two decades, including theoretical work by Princeton Professor of Physics Shivaji Sondhi and others.

「”Yazdaniのグループが、私に彼等が目撃したことを見せてくれた時、彼等が、私達が予測していた状態を特定したのが即座に分かりましたが、全く予期しない方法によってでした。それは本当に嬉しい驚きでした。” その研究は、プリンストン大学物理学のShivaji Sondhi教授やその他の多くの研究者達を含め、過去20年間にわたって予測されてきたアイデアに実験的証拠を与えてくれています。」

“What Yazdani’s experiments give us is a more quantitative test to explore the collective property of the electrons in this material,” said Fradkin, who was not involved in the current study. “This is something we made arguments for, and only now has it been confirmed in this particular material. For me, this is very satisfying to see.”

「”Yazdaniの実験が我々に与えてくれている事は、この材料における電子の集団的な性質を調査するための追加の定量試験です。”と最近の研究には関係していなかった、Fradkinは述べました。”これは私達が議論していたことで、今はじめて、それがこの特定の物質で確認されました。私にとって、これが見ることができて大変満足です。”」

エレクトロニクス、スピントロニクス、バレートロニクスと電子の性質を利用した電子デバイスに加え、今後は光子の性質を利用したデバイスの開発や、電子を光子の性質をキュービットにした量子コンピュータや、マヨラナ粒子やラシュバ半導体や非アーベルエニオンやら、色々研究されていますが、研究が実用化されて、パソコンが超高速化して、少しでも安く買えるようになってもらいたいものです。少なくとも今の20万円台のパソコンの10倍高速のパソコンが10万円以下の値段で買えるようにしてもらいたいです。

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