マイクロソフトが本気で位相量子計算機を開発中!

マイクロソフトと言えば、新技術への開発にかなり熱心な今日此の頃ですが、今回は量子コンピュータ実現に向けて相当本気モードのようです。マイクロソフトはFPGAを使った人工知能にもご執心で、もともとFPGAにはかなり早い時期から注目していたマイクロソフトにとっては当然の帰結なのかもしれません。量子コンピュータ開発はどうやらビル・ゲイツ氏が直に絡んでいるような感じです。HIVやマラリア等の病気の撲滅のためには量子コンピューターが必須とも言われているので、そのためかもしれません。

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量子コンピュータ

Inside Microsoft’s quest for a topological quantum computer

The race is on build a ‘universal’ quantum computer. Such a device could be programmed to speedily solve problems that classical computers cannot crack, potentially revolutionizing fields from pharmaceuticals to cryptography. Many of the world’s major technology firms are taking on the challenge, but Microsoft has opted for a more tortuous route than its rivals.

「万能量子計算機構築のレースが始まっています。そのようなデバイスは、古典的な計算機が解読できない問題を、スピーディーに解くためにプログラムできる可能性があり、医薬品から暗号化に至る、多岐な分野に革命をもたらす可能性を秘めています。世界の主要テック企業の多くが、その難題に取り組んでいますが、マイクロソフトは、ライバルたちよりもっと過酷な道を選んでいます。」

IBM, Google and a number of academic labs have chosen relatively mature hardware, such as loops of superconducting wire, to make quantum bits (qubits). These are the building blocks of a quantum computer: they power its speedy calculations thanks to their ability to be in a mixture (or superposition) of ‘on’ and ‘off’ states at the same time.

「IBM、グーグル、多くの大学の研究室が、量子ビット(キュービット)を作るために、超伝導線ループなどの、比較的成熟したハードを選んでいます。これらは、量子計算機の基礎的要素になっています。それらは、同時にオン・オフ状態が入り混じった(重ね合わせ)中にいられるそれらの能力のおかげで、迅速な計算力をそれに与えています。」

量子ビットは重ね合わせ状態も使えるので、その能力が量子コンピューターに高速計算能を与えています。その組み合わせはほぼ無限とも言われているだけに、通常コンピューターで数兆年かかる計算を一瞬で実行可能とさえ言われています。

非アーベルエニオン

Microsoft, however, is hoping to encode its qubits in a kind of quasiparticle: a particle-like object that emerges from the interactions inside matter. Some physicists are not even sure that the particular quasiparticles Microsoft are working with — called non-abelian anyons — actually exist. But the firm hopes to exploit their topological properties, which make quantum states extremely robust to outside interference, to build what are called topological quantum computers. Early theoretical work on topological states of matter won three physicists the Nobel Prize in Physics on 4 October.

「しかし、マイクロソフトは、物質内の相互作用から現れる粒子様の物体である、準粒子の一種にキュービットをコード化することを目指しています。一部の物理学者は、マイクロソフトが使おうとしている、非アーベルエニオンと呼ばれている特殊な準粒子が、実際に存在するのかさえ確信できていません。しかしMSは、トポロジカル量子コンピューター(位相的量子計算機)と呼ばれている物を構築するために、量子状態を外部からの干渉に対し著しく頑強にする、それらの位相的性質を巧く利用することを期待しています。物質の位相状態に関する初期の理論的研究で、10月4日、3人の物理学者がノーベル物理学賞を受賞しています。」

マイクロソフトは、非アーベル的なエニオンと呼ばれる準粒子を使って、トポロジカル量子コンピュータを作ることを目指しているようです。キュービットとしての利用が考えられているエニオンは電荷と磁束を併せ持った2次元にのみ存在している不思議な準粒子で、非アーベルの意味について分かり易く説明しているサイトがあるので、そこから引用させてもらいます。ν = 5/2 分数量子ホール効果のスピン状態を解明

自然界の基本粒子はフェルミ粒子とボーズ粒子に分類されるが、そのちがいは2つの同種粒子を入れ替えたときに波動関数の符号が変化するかどうかによる。一 方、多数の粒子が互いに相関をもって運動することであたかも一つの粒子のように振舞うことがあり、これを準粒子というが、2次元では、フェルミ粒子とも ボーズ粒子とも異なる振る舞いをする準粒子の存在が原理的に可能である。特に非アーベリアン準粒子といわれる、2つを入れ替えると元の状態と異なる縮退し た別の基底状態に変わってしまうという特異な性質を持った準粒子が理論的に予想されており、それを用いるとエラー発生率の非常に低い、まったく新しい手法 の量子計算(トポロジカル量子計算)が可能になることから、理論・実験の両面で大きな関心を集めている1

2 C. Nayak et al., Rev. Mod. Phys. 80 (2008) 1083.

2つの準粒子を入れ替えると、別の状態に変わってしまう特異な性質を持った準粒子のことを非アーベル準粒子というみたいです。

The firm has been developing topological quantum computing for more than a decade and today has researchers  writing software for future machines, and working with academic laboratories to craft devices. Alex Bocharov, a mathematician and computer scientist who is part of Microsoft Research’s Quantum Architectures and Computation group in Redmond, Washington, spoke to Nature about the company’s work.

「MSは、10年以上、トポロジカル量子コンピュータを開発中で、現在、研究者は未来の機械のためにソフトウェアを書いていて、装置を作るために大学の研究室と協働しています。数学者で計算科学者でマイクロソフト・リサーチの科学者、Alex Bocharovが、ネイチャー誌に企業の研究について話しています。」

何故エニオンなのか?

In most quantum systems, information is encoded in the properties of particles, and the slightest interaction with their surroundings will destroy their quantum state. This means they operate with a precision of maybe 99.9%, or what we call three nines. To do real problems, we need precision at the level of ten nines, so you need to create a massive array of qubits that allows you to correct for the errors. Topological quantum computing has the promise of reaching up to six or seven nines, which means we wouldn’t need to have this extensive and expensive error correction.

「ほとんどの量子系において、情報は粒子の性質にエンコードされていて、周囲とのちょっとした相互作用が、それらの量子状態を破壊します。この事は、それらが99.9%(または、我々がスリーナインズと呼んでいる物)の精度で動作していることを意味しています。現実の問題に対処するには、テンナインズレベルの精度が必要なので、エラー修正を可能にするための大規模なキュービットアレイを作る必要があります。位相量子計算は、最大でシックスナインズかセブンナインズに達する見込みがあり、この大規模で高価なエラー修正を持つ必要がないことを意味しています。」

スリーナインと言えば、銀河鉄道スリーナインが思い出されますが、スリーナインは英語的には正しくありませんが、スリーナインズよりは日本語的に語呂がいいので、スリーナインで良かったです。ダーティペアが所属していたWWWAをスリー・ダブリュー・エーと読むのが格好良くてスリーナインにしたらしいです。

位相量子計算は何故堅牢?

Noise from the environment and other parts of the computer is inevitable, and that might cause the intensity and location of the quasiparticle to fluctuate. But that’s OK, because we do not encode information into the quasiparticle itself, but in the order in which we swap positions of the anyons. We call that braiding, because if you draw out a sequence of swaps between neighbouring pairs of anyons in space and time, the lines that they trace look braided. The information is encoded in a ‘topological’ property — that is, a collective property of the system that only changes with macroscopic movements, not small fluctuations.

「環境や他のコンピュータ部品のノイズは避けられませんし、それが準粒子の強度と位置を変動させる可能性があります。しかし、我々は、準粒子に直接情報をエンコードせずに、エニオンの位置を入れ替える順序にエンコードするので問題ありません。我々はそれを組紐と呼んでいて、何故なら、もしあなたが、空間と時間において、隣接するエニオンペア間の交換配列を描き出した場合、それらがたどる描線が編んだかのように見えるからです。情報は位相的性質にエンコードされていて、つまり、小さな揺らぎではなく、巨視的な動きによってのみ変化する、系の集団的な性質です。」

in space and time = 時空(間)の中で

粒子の性質(例えば量子のスピンや光子の偏光)に量子情報をエンコードするみたいなやり方だと、重ね合わせ状態が壊れた時、情報も失われますが(エラーの原因)、位相的性質にエンコードすれば、ちょっとやそっとのノイズでは情報は失われない(エラーが起きない)ので、エラー修正に莫大なリソースを奪われる事無く、量子計算が速やかに実行可能なので、従来型の量子コンピューターよりはるかに高効率みたいです。

非アーベルエニオン対は入れ替えると全く新しい状態に変化するらしいので、交換を繰り返す度に色々な状態に変化し、その交換配列の束に情報をエンコードすることが、トポロジカルな性質にエンコードするという意味なのかどうかは分かりませんが、組み紐は簡単にはほつれないので、エラーが少ない事は確かなようです。

10年間の開発費は無駄では?

It’s a game worth playing, because the upside is enormous and there is practically no downside. Microsoft is a very affluent company; it sits on something like US$100 billion in cash. So what else one would you invest in? Bill Gates is also investing in other things — to eradicate malaria and HIV — that might require quantum computing at some point. Genomics, for example, so far has been done on classical computers and there is a possibility that some huge progress could be made with something like 100–200 qubits on a quantum computer.

「それはプレイする価値があるゲームです。何故なら、将来の利点は巨大で、事実上マイナスな面は存在しないからです。マイクロソフトはとても裕福な会社で、およそ10兆円ものキャッシュの上に座っています。そう、ほかに何か投資するものがありますか?ビル・ゲイツは、将来のある時点で量子計算を必要とするかもしれない、(マラリアとエイズを撲滅するために)他の事にも色々と投資をしています。例えば、ゲノミクスは今のところ古典的計算機上で実行されていて、いくつかの非常に大きな進歩が、量子コンピュータ上で100~200程度の量子ビットを使ってもたらされる可能性があります。」

マイクロソフトにしても他の企業にしても、有り余るキャッシュの上に胡座をかいていて、企業は人だという事を完全に忘れてしまっています。企業は人工知能で、人なんかいらないのかもしれませんが、人がお金を稼げなくなれば、人工知能やロボットが作り出した製品やサービスを買ってくれる人が存在しなくなります。ロボットに給料を払ってロボットに買わせるなら話は別ですが、そんなアホな話はないわけで、効率化を究極的に求めていけば、最終的に消費者がいなくなり、企業自体が存続できなくなります。利益の追求と消費者の確保は相反する変数ですが、巧くバランスを取れていないところに、今の世界的な経済低迷の原因があり、金融緩和や政府支出が消費を作り出すのではなく、良質な雇用が消費(者)を作り出すという原点に立ち返らないと、世界大恐慌は避けられないでしょう。

開発中のソフトは何の為?

So far, we’ve had an amazing ride in terms of creating more-efficient algorithms — reducing the number of qubit interactions, known as gates, that you need to run certain computations that are impossible on classical computers. In the early 2000s, for example, people thought it would take about 24 billion years to calculate on a quantum computer the energy levels of ferredoxin, which plants use in photosynthesis. Now, through a combination of theory, practice, engineering and simulation, the most optimistic estimates suggest that it may take around an hour. We are continuing to work on these problems, and gradually switching towards more applied work, looking towards quantum chemistry, quantum genomics and things that might be done on a small-to-medium-sized quantum computer.

「今までのところ、私達は、古典的コンピュータでは不可能な特定の計算を実行するのに必要な、ゲートとして知られているキュービット相互作用の数を減らす、もっと高効率なアルゴリズムを作り出すという点から見れば、素晴らしく順調です。2000年代初期に、例えば、人々は量子コンピュータ上で、植物が光合成に使う、フェレドキシンのエネルギー準位を計算するのに約240億年かかると考えていました。現在、理論、実践、工学、模擬実験の組み合わせを介する事で、最も楽観的な見積もりは、1時間程度で計算可能な事を示唆しています。我々はこれらの問題に取り組み続けていて、もっと応用的な研究に向け徐々に切り替え中で、量子化学、量子ゲノミクス、小規模から中規模サイズの量子計算機上で実行できる可能性があるものへ目を向けています。」

240億年から1時間はワープし過ぎだろ!って感じもしますが、それだけアルゴリズムが大事という事を言っているんだと思います。どんなハードもファームウェアがなければただの箱と言われているように、ファームのアルゴリズムが全てでもあります。炊飯器の炊き具合もファームウェアのプログラミング次第と言われています。マイクロソフトは本来はソフト屋なので、こっち方面には、本業の強みがあるかもしれません。

トポロジカル量子計算(位相的量子計算)は、今後の主流になるのかどうかは分かりませんが、非アーベルエニオンが存在している可能性が高いらしいので、実際に実現できれば、歴史的なニュースになることだけは間違いありません。

Footnotes

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