超伝導、アブリコソフ渦糸の光学的操作に成功!

モスクワ物理工科大学の研究者を含む、ボルドー大学のBrahim Lounis教授率いるナノフォトニクスグループが、超伝導体で個々のアブリコソフ渦糸の光学的操作に関わる独創的実験を行い、Nature Communications誌の論文で、スパコン用に量子論に基づく新論理単位設計の可能性に言及しています。超伝導現象、あるいはゼロ電気抵抗は、摂氏マイナス273度~マイナス70度の温度範囲で特定の物質に生じます。物質が超伝導状態に転移する時、磁束場はその物質内から叩き出されます。超伝導体は、全ての磁力線をその内部から駆逐するか、または、磁場の部分的な浸透を許可します。

部分的浸透現象は、アレクセイ・アブリコソフ氏によって1957年に明らかにされ、その功績により、氏は2003年にノーベル物理学賞を授与されています。

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アブリコソフ渦糸と磁束量子

完全に磁界が排除されていない物質は、第二種超伝導体と呼ばれています。アブリコソフ氏は、こういった超電導体が、一度に一磁束量子ずつ、個々の磁束ユニットによってのみ浸透され得る事も同様に証明しています。超伝導体内部の磁場が強くなっていくと、それはアブリコソフの渦糸として知られている円筒形電流ループを発生させます。

磁束量子について調べてみました。

磁束量子、磁力をもたらす磁束を糸状に1本、2本とばらしたときの最小単位。磁力線のイメージで思い描ける。超伝導状態の物質は弱い磁場の侵入を阻む(マイスナー効果)が、第2種超伝導体と呼ばれるものでは、磁場がほどほどに強いと、ばらばらの磁束を通す。これが量子化された磁束の一例だ。このとき、それぞれの周りに超伝導電流が渦のように流れる。

この渦のように流れる電流の事を、アブリコソフ渦(糸)と読んでいるみたいです。

第二種超伝導体

”第二種超伝導体は、医療からエネルギーや他の産業に至る、あらゆる場面で使われています。それらの性質は、渦糸物質によって決定されていて、その事が、渦とそれを操作する方法を探し出すための研究を、現代物理学にとって非常に重要な物にしています。”とMIPTの研究者で今回の研究論文の著者の一人が言っています。アブリコソフの渦を操作するために、科学者達はレーザー光線に焦点を当てました。この種の光学的渦操作は、当該の渦の、超伝導体(この場合は摂氏-268度に冷却されたニオブ薄膜)内の高温領域に引き付けられる性質によって可能となっています。必要な高温点は、レーザーで物質を加熱することで作り出されます。しかし、加熱し過ぎると、その物質の超伝導性が破壊されてしまうので、適切なレーザー出力に設定する事が非常に重要になってきます。

その渦が磁束量子としての機能を果たしているので、それらを、全体的な磁束プロファイルを形成するのに利用することで、物理学者が、超伝導体を使ってさまざまな実験をすることを可能にしています。三角渦格子が特定磁場で自然発生する一方で、別の種類の格子(と渦レンズのような装置)を、渦をあちこち動かすことで作り出せます。

高速単一磁束量子

The method of vortex manipulation in the study could be used in quantum computation for the development of optically controlled, rapid single flux quantum (RSFQ) logic elements. This technology is seen as promising for the design of super-fast memory for quantum computers. RSFQ-based logic elements are already used in digital-to-analog and analog-to-digital converters, high-precision magnetometers, and memory cells.

「今回の研究における渦糸操作の手法は、光学的に制御された高速単一磁束量子論理素子の開発のために、将来的に、量子計算で使用されるかもしれません。この特殊技術は、量子コンピュータで使用される、超高速メモリーの設計に向けて、かなり有望視されています。RSFQを基にした論理素子は、既に、デジタル/アナログ変換器、アナログ/デジタル変換器、高精度磁気探知機、メモリ素子などに使われています。」

A number of prototype computers based on this technology have been developed including the FLUX-1 designed by a team of U.S. engineers. However, the RSFQ logic elements in these computers are mostly controlled by electrical impulses. Optically controlled logic is an emerging trend in superconducting systems.

「この技術をベースにした多くの試作コンピュータが、アメリカのエンジニアチームによって設計されたFLUX-1を含め、開発されていますが、こういったコンピューターのRSFQ論理素子は、ほとんどが、電気インパルスによって制御されています。光学的に制御されたロジックは、超伝導系における比較的新しいトレンドでもあります。」

アブリコソフ格子

The experiments performed by the scientists could be applied in future research into Abrikosov vortices. Physicists have yet to investigate the details of how increased temperature acts to “unpin” the vortices from their sites and bring them into motion. More research into vortex dynamics in Abrikosov lattices is likely to follow. This line of research is critical for understanding the physics of superconductors, as well as assessing the prospects for fundamentally new types of microelectronics components.

「今回の研究者達によって実施された実験は、アブリコソフの渦糸に関する、将来行われるであろう研究に適用できるかもしれません。研究者達は、温度上昇が、渦のピン留めを外して、それが動けるようにするのに、どのような役割を果たしているのかの詳細について、今後研究していく必要があります。アブリコソフ格子における、渦糸動力学についての研究が。その後に続いて行われるかもしれません。この一連の研究は、超電導体の物理学を理解するために必要不可欠であるだけではなく、根本的に全く新しい種類の超小型電子機器部品に対する見込みを見極めるためにも欠かせません。」

アブリコソフ格子について調べてみました。超伝導の応用

超伝導体は磁場を廃除しようとしますので(マイスナー効果)、磁石を近づけると磁石との間に斥力が働きます。これにより、かなり重いものでも浮かせることができます。 磁気浮上に使われるのは、第二種超伝導体とよばれているもので、磁場は完全に廃除されるのではなく、糸状の磁場が超伝導体の中に入り込むことができます。これを、渦糸といいます。 渦糸は超伝導体のエネルギーが最小になるような配置をとり、普通は三角形の格子を組みます。 これを、アブリコソフ格子といいます。超伝導体の中を磁束が何本も突き通っているようなイメージです。 超伝導体をちょっとずらしますと磁束のエネルギーが変化し、超伝導体のエネルギーが上がりますので、超伝導体はもとの位置に戻ろうとします。 そのため、磁石の上に浮いた超伝導体は安定に同じ位置に浮いたままとなります。(これを、磁束のピン止めと言うことがあります。)

磁束の固定化の事をピン留めと呼んでいるみたいです。unpinは、そのピン留めを外すこと(ピンを抜く行為)を意味しています。温度上昇がピン留めを外しているみたいです。

アブリコソフの渦(糸)に関する研究は、今後は、この渦のピン留め現象の解明に移っていくみたいですが、これが、第二種超伝導体の転移温度を上昇させるのにつながっていくのかどうかは全く分かりません。ただ、何だか面白そうな研究ではあります。

参照サイトPhysicists manipulate Abrikosov vortices

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