巨大断層の間隙流体排水がゆっくり地震を減少させる

日本にある南海沈み込み帯(南海トラフ)で、非火山性深部微動が、巨大断層地震発生域帯の傾斜方向(沈み込み方向)で発生していて、時間的に短期スロースリップイベント(ゆっくり地震、SSEs)と一致していることが観測されています。それらは、フィリピン海プレート沈み込みに関連した、走行に沿った長さ700kmに渡る、深さ30~35kmに限定された範囲で発生しています。低周波地震(LFEs)が、空間的に微動活動と同時発生しているので、LFEsの場所は微動活動のプロキシの役目を果たしています。紀伊ギャップと伊勢ギャップのLFE活動における、2つの目立ったギャップが存在していて、一方で、FLE活動帯の延長線上にある関東と九州の下でのLFE活動は限定的か存在していません。東京工業大学の中島淳一氏と東北大学の長谷川昭氏は、LFE発生を抑制している原因解明を試みるために、LFEsが存在・不在している区域を含む南海の地震波特性を調査しました。

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低周波地震と地震波速度

Above and beyond megathrusts: Draining pore-fluids dampens tremors

The observed P-wave (dVp) and S-wave (dVs) velocities show the presence of low-velocity anomalies in the overlying plate at Kanto, Ise Gap, Kii Gap, and Kyushu, where there is limited or no LFE activity. LFEs do not occur on the megathrust where dVp and dVs are lower than approximately -4%, suggesting a systematic change in seismic velocities in the overlying plate between areas with and without LFE activity. There is a spatial correlation between LFE locations and seismic velocity, attenuation, and anisotropy anomalies. One hypothesis that could explain the variation in seismic properties along the LFE band is along-strike variation in the degree of prograde metamorphism above the megathrust that is proportional to the rate of fluid leakage from the subducting slab into the overlying plate. Notably, large amounts of fluid are liberated from the subducting crust at depths of 30-60 km.

「今回観測されたP波(dVp)とS波(dVs)速度は、LFE活動が限定的か不在地域である、関東、伊勢ギャップ、紀伊ギャップ、九州の上部プレート内の低速度異常の存在を示しています。LFEsは、dVp とdVs が約-4%より低い巨大断層では起きておらず、LFE活動を伴う地域とない地域の間の上部プレート内の地震波速度における系統的変化を示唆しています。LFEロケーションと地震波の速度・減衰・異方性異常の間に空間相関が存在しています。LFE帯域沿いの地震波特性のばらつきを説明できるかもしれない1つの仮説が、沈み込みスラブから上のプレート(南海ならユーラシア)への流体漏出率に比例している、巨大断層上側の昇温変成作用の程度における走行方向の変化です。注目すべきは、大量の流体が、深さ30km ~ 60kmの沈み込み地殻から解放されているということです。」

断層走行方向変化

地震波特性における走行方向変化が、上部プレートが、LFE活動を伴う地域で変成が少なく、LFE活動が限定されているか存在しない地域では、著しく変成されていることを示唆しています。このLFEsと変成作用の間の反相関は、恐らく、上部プレート内の水文条件における走行方向変化に起因しています。不透過性の上部プレートは、巨大断層への流体を制限するのに対し、上部プレートが透過性の場合、流体は巨大断層から漏れます。

along-strike variation = 走行方向(の)変化、走行沿い(の)変化、走行に沿った変化、といった意味になるようです。断層走行方向ということらしいです。

フィリピン海プレートが沈み込んでいる上部プレート(ユーラシアプレートや北米プレート)が水を通すか通さないかで、低周波地震活動の有無や頻度が決定されるみたいです。

間隙流体圧(間隙水圧)

巨大断層の排水されていない状態が、間隙流体圧を静岩圧値近傍まで上昇させ、巨大断層の剪断強度を十分にLFEsを促進するまで弱め、上部プレートにおける変成作用の低い度合いをもたらしています。対照的に、LFEが限定的なエリアにおいては、流体は透過性の上部プレートへ移動してそれを変成させ、巨大断層の間隙流体圧を減少させ、その事が、LFEsを発生させるにはもはや十分な弱さではなくしています。

pore-fluid pressureなら間隙流体圧で、pore-water pressureなら間隙水圧になるみたいな感じですが、基本的に同じ意味みたいです。間隙流体や間隙水は、地殻内の岩石のpore(微細孔、孔隙)に溜まった流体(水)のことで、その圧力が間隙水圧らしいです。

間隙流体圧が上昇すると剪断強度が弱まって低周波地震が起こりやすくなり、それが減少すると、せん断強度が低周波地震を起こすほど弱くなくなるみたいです。

せん断強度と間隙流体圧

The large number of crustal earthquakes in the Kii Gap and Ise Gap suggests that LFE activity and seismicity in the overlying plate are anti-correlated, largely reflecting the magnitude of fluid flux from the megathrust. The scientists concluded that a well-drained megathrust allows fluids to migrate into the overlying plate, inhibiting LFE activity at the megathrust, but facilitating shallow seismicity due to the decreased shear strength of crustal faults.

「紀伊ギャプと伊勢ギャップにおける多数の地殻内地震が、上部プレートのLFE活動と地震活動が反相関していて、主として、巨大断層からの流体流動の規模を反映していることを示唆しています。科学者達は、水はけが良い巨大断層は、流体が上部プレートに移動することを可能にし、巨大断層でのLFE活動を抑制してはいるが、地殻断層のせん断強度を減少させているために、浅発地震活動を促進していると結論付けました。」

何か良く分かりませんが、沈み込みプレート(フィリピン海プレート)から上のプレートに流体移動しやすい環境だと、間隙流体圧が減少してせん断強度を弱めないので、低周波地震を抑制する代わりに、地殻断層のせん断強度を弱めて浅発地震の原因になっているみたいです。要は、上のプレートに移動した流体が、逆に、上部プレートの間隙流体圧を上昇させて、それがせん断強度を弱めてしまい、結果として浅層地震活動を促進させてしまう結果になっていると思われますが、ド素人なので確証は持てませんのであしからず。

何れにしても、M9クラスの超南海トラフ地震(東海、東南海、南海、日向灘、九州沖の5連動)は、数十年後~100年後には確実に発生すると、一部の間で囁かれています。それがいつ来るのかが分かれば誰も苦労しない訳ですが、東海地震が前回1854年(安政東海地震)ということを考えると、その200年後に当たる2054年が一番可能性が高いかもしれません。それより先に、茨城沖から房総沖にかけて、M8.6程度の地震が起きることが予想されているみたいなので、そっちの方が関東地方民にとってははるかに影響というか被害が大きいので注意が必要かもしれません。M7クラスの首都圏直下型も30年以内に70%の確率で起こるらしいので、こっちも気掛かりです。地震大国に住む宿命を感じます。

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