標準模型の複数コピーを使った階層性問題の新解決法

粒子物理学でうやむやにされている問題の1つが、基本的な力の一部が他の力よりはるかに強い理由に密接な関係がある階層性問題です。力の強さは、それらの対応する力を媒介している粒子(ボソン)の質量によって決まっていて、この質量は、立ち代わって、ヒッグス真空期待値によって測定されたヒッグス場によって決定されます。

ヒッグス粒子は何年か前にその存在が証明され、かなり大騒ぎになったのが懐かしく感じられますが、去年は重力波の存在が証明されお祭り騒ぎになっていました。

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ヒッグス真空期待値

Multiple copies of the Standard Model could solve the hierarchy problem

So the hierarchy problem is often stated as a problem with the Higgs field: specifically, why is the Higgs vacuum expectation value so much smaller than the largest energy scales in the universe, in particular the scale at which gravity (by far the weakest of the forces) becomes strong? Reconciling this apparent discrepancy would impact physicists’ understanding of particle physics at the most fundamental level.

「なので、階層性問題はよくヒッグス場を伴う問題として述べられています。特に、ヒッグス真空期待値が宇宙で最大のエネルギースケール、とりわけ、重力(基本的な力の中で群を抜いて圧倒的に最弱)が強くなるスケールと比較した場合、何故はるかに小さいのでしょうか?このあからさまな矛盾に折り合いを付けることが、最も基本的なレベルでの素粒子物理学に対する物理学者の理解に影響を与えてくれるはずです。」

階層性問題の謎は深い

“階層性問題は、素粒子物理学の最も奥が深い謎の1つで、ほぼ全ての既知の解法が、異なるバージョンの宇宙に対応しています。”と、プリンストン大学物理学者ラファエレ・チトー・ダニヨーロ氏はPhys.orgに話しました。”正しい答えを識別することは、概念的パズルを解くだけではなく、我々の素粒子物理学への考え方も変えるはずです。”

Physical Review Letters誌に掲載された新しい研究論文で、ダニヨーロ氏と彼の共著者達は、それぞれが異なるヒッグス真空期待値を持つ、標準模型の複数(最大1016)コピーを含む階層性問題に対する答えを提案しました。このモデルでは、宇宙は、各々がそれ自身のバージョンのStandard Model:スターンダードモデル(標準模型)とヒッグス真空期待値によって統治されている多くの領域で構成されています。

reheaton field (リヒートン場)

もし、最初期の宇宙で、全てのセクターが、似たような温度と見るからに同じ支配力を有しているとしたら、何故、最も小さな非ゼロヒッグス真空期待値を持った我々のセクターが支配的なのか?物理学者達は、それが崩壊する間に宇宙を再加熱することでこの事を説明している”reheaton field (リヒートン場)”と呼ばれる新しいメカニズムを紹介しています。当該物理学者達は、リヒートン場が選択的に最小ヒッグス真空期待値を持つセクターに崩壊して、そのエネルギーの大部分をそこに堆積し、このセクターが最終的に他を圧倒して、我々の観測可能な宇宙になる原因になった可能性がある、いくつかの道が存在する事を証明しています。

N-naturalness (Neutral naturalness)

超対称性や余次元などの、他の提案されている階層性問題の解決策と比べ、物理学者達が”N-naturalness (Neutral naturalness)”と呼んでいる新しい今回の提案は、その解決策が、新しい粒子の存在のみに依存していない点で、他とは一線を画しています。その新しい提案は、超対称性と余次元の両方といくつかの特徴を共有していますが、それの固有の特徴の1つは、新粒子であるということだけではなく、何よりも、その解決法の骨格にもなっている宇宙論的力学でもあるということです。

”N-naturalnessは、過去に提案された階層性問題への解決手法とは質的に違って、それは、その問題とは無関係と考えられている2つの自然探査である、宇宙マイクロ波背景放射実験と大規模構造サーベイの信号を予測します。”と、ダニヨーロ氏は語った。

As the physicists explain, it should be possible to detect signatures of N-naturalness by searching for signs of the existence of other sectors. For instance, future CMB experiments might detect extra radiation and changes in neutrino cosmology, since neutrinos in nearby sectors are expected to be slightly heavier and less abundant than those in our sector. This approach is interesting for another reason: the neutrinos in the other sectors are also a viable dark matter candidate, which the researchers plan to study in more detail. Future experiments might also find signatures of N-naturalness in the form of a larger-than-expected mass of axion particles, as well as supersymmetric signatures due to possible connections to supersymmetry.

「その物理学者達が説明しているように、他のセクターが存在しているサインを探索することにより、N-naturalnessのシグネチャーを検知する事は可能なはずです。例えば、将来のCMB (cosmic microwave background) 実験が、近隣セクターに存在するニュートリノは、我々のセクターに存在するニュートリノと比べ僅かに重くそれほど豊富ではないので、余剰放射とニュートリノ宇宙論における変化を検出するかもしれません。このアプローチは別の理由で興味深いです。それは、他のセクターのニュートリノが、有望なダークマター(暗黒物質)候補でもあるということで、研究者はもっと詳しく研究する予定でいます。将来の実験は、予想以上の質量のアクシオン粒子という形で、N-naturalnessのサインや、超対称性とつながりがある可能性があることから、超対称性のサインも同時に見つけるかもしれません。」

”もし、新しい相対論的種(相対論的粒子)が、次世代のCMB実験(Stage 4)で検出されない場合、私は、N-naturalnessのことを階層性問題への可能な解決策として考えることを止めるつもりでいます。”と、ダニヨーロ氏は言いました。”現在のスケジュールだと、この実験は、2020年ぐらいにデータを取得し始め、大体5年以内でそれらの物理目標に到達する予定です。”

別セクター(領域)というのが、別次元(余次元)なのか、multiverse (多元的宇宙)なのかそれとも宇宙の一区画なのかが良く分かりません。名探偵コナンの領域外の妹のことを思い浮かべます。近隣セクターと言っているので、そういった領域が今の領域外に存在しているという事なのかもしれませんが、この理論は、リヒートンという新粒子が関わっているみたいで、さらに宇宙論的動力学も絡んでいるみたいです。

しかし、別セクターに存在しているニュートリノがダークマター候補だとは全く知りませんでした。我々のセクターに存在しているニュートリノよりやや重いらしく、数もそれほど豊富ではないみたいな感じなので、観測するのが楽そうな気がしますが、なかなか発見されないのが何故なのか?と素人目には疑問に思えます。よく考えると、数が豊富でないから見つけにくいのかもしれません。今後が楽しみな研究でもあります。

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