レーザー駆動でディラック・ワイルフェルミオン変換を可能に!

凝縮物質系における基本粒子の特性研究は、場の量子論に対するかなり有望なアプローチです。準粒子は、素粒子では実現されない粒子の性質を観測するための機会を与えてくれます。今回の研究の中で、ハンブルグにある自由電子レーザー科学センターのマックスプランク物質構造・ダイナミクス研究所とドノスティア=サン・セバスティアンにあるバスク大学のアンヘル・ルビオ氏率いる国際研究チームは、レーザー光線が、3次元ディラック物質中にワイルフェルミ粒子状態を作り出して、ワイル半金属、ディラック半金属、位相絶縁体状態間を超高速タイムスケールで切り替える仕組みを予測しています。基礎量子物理学との関連性に加えて、今回の結果は、物質特性の超高速切替における応用につながる可能性があります。当該研究成果は、Nature Communications誌でオンライン掲載されています。

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ワイルフェルミ粒子の実現

Laser-driving of semimetals allows creating novel quasiparticle states

素粒子物理学の標準モデルにおいては、我々の周囲にある全ての物質を構成している基本粒子、電子とクォークは、有名なイタリア人物理学者エンリコ・フェルミ氏の名をとって命名された、所謂フェルミ粒子です。量子論は、基本フェルミオンが、ポール・ディラック氏、ヘルマン・ワイル氏、エットーレ・マヨラナ氏にちなんで名付けられた、ディラックフェルミオン、ワイルフェルミオン、マヨラナフェルミオンの3つの異なる種類として存在できることを予測しています。しかし、ほぼ100年前に予測されているにもかかわらず、この3種の粒子のうち、これまでのところ、ディラックフェルミ粒子だけが現実に基本粒子として観測されています。しかし、2004年のグラフェンの発見によって、相対論的自由粒子の挙動は、、物質の電子物性で観測可能なことが明確にされました。この事が、こういった基本粒子が観測可能な物質の探索の火付け役になり、去年になってようやく最初のワイルフェルミ粒子をホストする物質が発見されています。全ての既知の物質が、平衡状態ではたった1つの種類しかこういったフェルミ粒子をホストしない一方で、今回の研究では、個々のフェルミ粒子に合わせて作られた光パルスを使うことによって、特定の物質内のフェルミ粒子性を変換できる仕組みを明らかにしています。

グラフェンのディラックフェルミ粒子の初観測

グラフェン特性におけるディラックフェルミオンの観測は、その物質を構成している多数の電子とイオンの複雑な相互作用から始まっています。各電子は、周りのイオンや電子と静電気力を介して相互に作用していますが、グラフェンのハニカム層構造中の炭素イオンの特定パターンが、電子が質量ゼロの自由フェルミ粒子である、ディラックフェルミオンのように集団的に振る舞うことを引き起しています。異なる特性を持つ新しい粒子を協力して形勢するこういった粒子は、準粒子と呼ばれています。基本粒子のように振る舞う準粒子をホストしている可能性がある他の物質の飽くなき探究は、こういったことから、今ままでのところは、物質の結晶構造に集中しています

レーザー駆動位相状態創出

しかし、レーザーを使って物質を照射することで、準粒子を、根本的にさらに違う振る舞いが可能な新しい準粒子を形成するために、レーザー場の光子と一体化させることが可能であることも現在までに分かっています。特に、光子との結合は、準粒子のトポロジーに影響を与えることができます。トポロジーとは、例えば、位相絶縁体のエッジに沿って、衝突の起こらない一方通行の量子ハイウェイを形成する、金属カイラルエッジ状態などの、固有の性質をもたらす粒子の性質のことです。このカイラリティ(キラリティ)または掌性は、右巻きカイラリティと左巻きカイラリティが、互いに連続的に変形し合えない不連続状態という意味ではトポロジカルです。2016年のノーベル物理学賞が、ちょうどそういった物質のトポロジカル相の発見の功績に対し、マイケル・コステリッツ氏、ダンカン・ホールデン氏、デビッド・サウレス氏に授与されたばかりです。

Dirac and Weyl fermions differ by their chirality. Just like our left and right hands, Weyl fermions occur in pairs, where one particle is a mirrored version of the other. The two partners are almost identical, yet they cannot be superimposed. Dirac fermions, by contrast, do not have this property.

「ディラックフェルミオンとワイルフェルミオンは、それらのキラリティによって異なっています。ちょうど私達の左手と右手のように、ワイルフェルミオンは、1つの粒子が他の粒子の鏡写しバージョンである対になって生じます。その二つのパートナーは、ほぼ同一ですが、それらは互いに重ね合わせられません。ディラックフェルミオンは、それとは対照的に、この性質を有していません。」

物質にキラリティを作る1つの手法が、レーザービームを使ってそれを駆動する事です。所謂フロケ理論(時間と共に周期的に振動するレーザー駆動系のための理論)が、それらのトポロジーを変える事ができる物質のパラメーターと対称性の操作を我々に可能にしてくれている事は、約10年前に理解されました。新しい準粒子を形成するために、レーザー光線の光子を使って、そういったフェルミ粒子と結合させることで、ディラックフェルミオンにキラリティを誘発することが、そういったわけで、それを、ワイルフェルミオン物質に変換させることを可能にしています。

現在の研究の中で、アンヘル・ルビオ氏のチームは、ディラックフェルミ粒子からワイルフェルミ粒子への、この光学的な変換が、実材料であるNa3Biにおいて実現可能な仕組みを明らかにするために、物質特性のためハイレベル計算シミュレーションを使いました。この材料は、所謂3次元ディラック半金属です。それは、グラフェンの3次元同等物を形成するようにアレンジされている、ナトリウム原子とビスマス原子のレイヤーで構成されています。この3次元性が、ディラックフェルミ粒子のワイルフェルミ粒子への変換が起こるために必要とされています。それは、2次元グラフェンシートでは起きません。

この研究の決定的なチャレンジが、フロケ理論と概念レベルのモデル系から無数の実材料に至るトポロジーのアイデアを利用することと、そういった非平衡性トポロジカル相転移が、材料科学文脈において実現可能なことを証明する事だったと、研究者達は言った。

位相安定性から超高速電子機器

具体的に言うと、著者達は、ワイルフェルミオン掌性のトポロジカル保護が起こる仕組みと、どうすればレーザー場の強度に比例して強固にする事が可能なのかを明らかにする事ができました。彼等は、レーザー場の強度を増すと、二つの異なる右巻きワイルフェルミオンと左巻きワイルフェルミオンが、準粒子が存在する所謂運動量空間で、互いにどんどん離れて移動することを、彼等のシミュレーションで明確にしました。右巻き・左巻き粒子が互いに反粒子なので、それらは、対消滅するために衝突する必要があります。従ってその距離間隔は、破壊からそれらを保護していて、そのことが、研究者達が、こういった準粒子のトポロジカルな安定性を達成していることを意味しています。

今回の理論成果が、実験者が、ディラックフェルミ粒子とワイルフェルミ粒子間の変換を超高速レーザー実験で、測定可能であるはずなことを示唆しています。これを行うための1つの方法が、ポンププローブ光電子分光法と呼ばれる技術で、電子をレーザー駆動物質から押し出すために光電効果を利用することです。

MPSD理論学部長アンヘル・ルビオ氏は、”今回の研究は、基本的な光と物質の相互作用を使って、物質と分子の性質を操作するためのエキサイティングな新しい道を開いています。それは、最終的に、それらの振る舞いをナノスケールで、超高速スイッチングサイクルを使ってコントロールするための道を開くはずです。”と付け加えています。科学者達は、その光誘発状態を、テラヘルツさらにもっと高速な周波数でそれらを切り替える能力を保持したままで、もっと長い時間安定化させるための方法が存在することを期待してさえいます。この事が、将来的に、超高速コンピュータ用の新しい超高速エレクトロニクスを可能にしてくれるかもしれません。

同一物質内で、ディラックフェルミオンーワイルフェルミオンートポロジカル絶縁体状態に、レーザーで誘導することができるみたいです。素人目にも物凄い発見だということは分かります。ただ、勉強不足のために、論文を読んでいて頭が痛くなってしまい、論文をよみつつ詳しく勉強してみようと思いましたが、あっけなく挫折してしまいました。

実際の論文を見ていると、TDDFT (time-dependent density functional theory:時間依存密度汎関数理論)、time-resolved photoemission spectroscopy (時間分解光電子分光法)、Floquet–Weyl point (フロケ・ワイル・ポイント)、Floquet band structure (フロケバンド構造)、Floquet–Weyl fermions (フロケ・ワイル・フェルミオン)、Floquet–Chern insulating state (フロケ・チャーン絶縁状態)、Peierls substitution (パイエルスの置き換え)、Floquet–Bloch state (フロケ・ブロッホ状態)、chiral Adler–Bell–Jackiw anomaly、non-trivial Floquet phases等のキーとなる用語が抜けていて、実際に論文を読んでみると、かなり端折っていることが分かりますが、門外漢の理解の域を超越しているので、完読しても何を言っているのかは、はっきり言ってイミフです。

Creating stable Floquet–Weyl semimetals by laser-driving of 3D Dirac materials

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