“Coal Miner’s Daughter”(炭坑夫の娘)は世界的に有名ですが、炭坑カナリアは炭坑に住むカナリアのことかな?と誰もが思うはずです。炭鉱にカナリアがいるのかどうかは別として、coal mine canaryと言うからには、炭鉱のカナリアという意味に違いないはずですので、本当にそういった意味なのかどうかを調べてみました。
coal mine canary 炭鉱のカナリアの意味
The index is now in “contractionary” territory below 50, but this is not a coal mine canary signaling a recession. businessinsider.com
「インデックスは、今現在、50以下で収縮領域にはありますが、これは景気後退を警告する炭坑のカナリアではありません。」ISM製造業景況指数が50を割り込むと景気後退局面にあると言われています。
このニュース記事のタイトルのcoal mine canary (炭鉱のカナリア)は、何かを警告するものという意味で使われています。そもそも、”coal mine canary”は炭坑夫達に危険を知らせるためのガス探知機や酸欠警報機みたいな存在だったらしく、このカナリアが弱ると、一酸化炭素中毒や酸欠の危険性を意味し、炭坑夫達が地上へ避難する仕組みとなっていたようです。このフレーズは、金融市場でも比喩的によく使われていて、炭坑カナリア(経済指標)が弱くなると、投資家達は一斉に安全資産へ避難する仕組みになっていると言われています。炭坑カナリアが寓話なのか実話なのかはググってもいまいち分からなかったのですが(実際に一度ガス漏れ検査のために炭坑に送られたことはあるらしいです)、これが比喩的に使われるようになったのは1915年のようです。
The earliest figurative use that I have found came from the famous Chautauqua circuit of public lectures. Chautauqua lecturers went from town to town, and according to a 1915 article in the Herald and News of Newberry, S.C., one of their circulars included the canary story as a kind of parable.
“A Chautauqua is to a town what a canary is to a coal mine,” the circular read. “If the intellectual and moral atmosphere of this is such that a Chautauqua can’t live in it, then we must change the atmosphere or get out.” - http://www.wsj.com/
「私が見つける事ができた最も古い比喩的な使用は、有名な公開講義だったシャタークワ巡回に由来していた。シャタークワ講演者は町から町へと巡回し、サウスカロライナ州ニューベリーのヘラルドアンドニュース新聞の1915年に書かれた記事によると、講演者の宣伝用ちらしの一つに、カナリアの話が寓話として含まれていた。”文化講演会は町にとって炭坑のカナリアと同じです。もし、町の知性・道徳の空気が文化講演会を開催出来るような状態でないなら、我々は空気を変えなければならないし、あるいは、そんな町からは出ていかなければならない”とそのちらしに書かれていた。」”Coal mine canary”は警告、警鐘と訳される事が多いようです。
この記事では、銅価格=世界経済の健全性に対する炭鉱のカナリアと定義しています。
canary in a coal mine, canary in the coal mine
coal mine canaryは、canary in a coal mine、もしくは、canary in the coal mineとも言います。このニュース記事”Rosenberg: Corporate credit will trigger another financial crisis within four years“から用例を1つ示しておきます。
“Look at the spread between CCC-rated credit and BBs: the spread has widened out dramatically and it looks a lot like the mortgage spreads in [2007],” he said. “When you think about ‘what should I have been looking at, what was the canary in the coal mine in 06-07,’ it was the junkiest parts of the mortgage market. Those spreads widened out before the stock market peaked.
「CCC・BB格債間のスプレッドに注目してみれば、このスプレッドは劇的に拡大しており、2007年のモーゲージスプレッドによく似ています。」と彼は語った。 「2006年〜2007年に自分は何を見るべきだったのか、何が炭鉱のカナリアだったのかを考える場合、」、それは住宅ローン市場で最も信用格付けの低い部分でした。 これらのスプレッドは、株式市場がピークに達する以前に拡大していました。
モーゲージスプレッドは住宅ローンスプレッドのことです。この場合の炭鉱のカナリアは、リーマンショックのような大イベントを知らせる前兆という意味で使われています。その前兆が、ジャンクMBS (mortgage backed securities:不動産担保債)、もしくは、サブプライム住宅ローン債券のスプレッド拡大だったということです。いわゆる、サブプライム問題というやつです。リーマンブラザーズの破綻(リーマンショック)が世界の金融市場を震撼させたわけですが、サブプライム住宅ローン危機→世界金融危機→世界同時大不況の流れは重要なので押さえておくといいかもしれません。ローゼンバーグ氏は、ジャンク債スプレッドの拡大が将来来たるべき経済危機を知らせる炭鉱のカナリア(経済危機の前兆)であると言っています。