知性が生まれ持った資質であると考える人々は、自信過剰の素養があるようです。逆なのでは?と思ったのですが、よくよく考えてみると、こういった思考が差別を生むのかな?という結論に行き着きました。例えば、スポーツ万能の生徒が、運動音痴の他の生徒を罵倒・嘲笑するのも、これと似た構図なのかもしれません。
才能は天性のものという思考が自惚れを生む
Overconfidence linked to one’s view of intelligence
やっても無駄と考える事で過信を生むということなのかもしれません。知能は発達しないと信じれば、難しい勉強をする事自体が無意味になります。難しいことに挑戦しなければ、己の能力を見誤り、それが過信へとつながるということなのでしょう。
「そのようなに人々は、難しいパートは出来得る限り時間を削り、タスクの簡単なパートに集中する事で自身の能力に対する過信を維持しています。」とWSU助教授のアーリンガーは言います。「逆に、将来有望な物の見方をしている人々は、知能は変えられる資質として捉えているという意味で、タスクにおいて、能力の試される部分により多くの時間を費やし、その結果として、彼等の自信のレベルは、より自身の能力に一致しています。」と彼女は語ります。」
難しい課題や挑戦から逃げることで、挫折さえ味合わなければ、人は自信過剰でいられるというわけです。born with a silver spoon in the mouth (恵まれた境遇にある)人達が、そのような人達なのでしょう。
自惚れも時として役立つ
“A little bit of overconfidence can be helpful,” said Ehrlinger, “but larger amounts of overconfidence can lead people to make bad decisions and to miss out on opportunities to learn.” The researchers note that overconfidence is a documented problem for drivers, motorcyclists, bungee jumpers, doctors and lawyers.
「ちょっとの自惚れは有益な場合もありますが、過度の自惚れは、人々に誤った判断をさせたり、学ぶ機会を失わせる結果につながります。」とアーリンガー氏は言います。研究者等は、自信過剰な人々は、ドライバー、バイク乗り、バンジージャンパー、医者、弁護士などに確認されている問題であると言及しています。
医者と判事には”God complex”が多いと言われています。つまり、自惚れが強い人には成功者が多いということが言えるということです。例えば、アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏は、自惚れが人一倍強いと世間で言われていますが、これほどの人生の成功者もいないので、やはり、自信過剰であることは、人生の成功に欠かせない資質の1つなのかもしれません。
成功者は時間の無駄遣いはしない
In the first of three studies for their recent paper, Ehrlinger and her colleagues found that students who hold a fixed mindset about intelligence were more overconfident about their performance on a multiple-choice test than those with a growth mindset. A second study found that students with fixed mindsets devoted less attention to difficult problems and, consequently, displayed more overconfidence than those with growth mindsets.
彼等の直近3つの研究の一つで、アーリンガー氏と同僚等は、知能が固定的な見方をしている学生達は、知能は伸びる派の学生達に比べ、複数選択式テストの成績を過信している事を発見しています。2つ目の研究は、不変的見方の学生達が、難問にあまり時間を費やさなかったので、結果として、伸びる的見解の学生達よりも過信を見せる事を見出しています。
難しい問題を簡単に解くから自信過剰になったり、逆に、難しい問題を敢えて解かないから自信過剰でいられるようです。受験においては、簡単な問題から先に解いて、難問は最後に時間をかけて解くのが鉄則で、難問にいきなり時間をかけるのは賢いやり方ではありません。
“By focusing on aspects of the task that were easy and spending as little time as possible on more difficult parts of the task,” Dr. Ehrlinger said, “fixed theorists felt as if they had performed very well relative to their peers. In contrast, growth theorists weren’t threatened by challenging parts of the task and didn’t feel the need to bask in the glow of the parts that were easy. This more balanced way of completing the task left growth theorists with a better understanding of how well they did.”
「タスクの簡単な側面に焦点を合わせ、タスクのより困難なパートには可能な限り時間を消費しない不変理論家達は、あたかも、自分達が同輩者達に比べて、とてもうまくやったかのように感じていました。対照的に、発達理論家達は、タスクの思考力を問われるパートに威圧されたり、簡単なパートに対しても満悦感に浸ることはありませんでした。タスク完了のための、このよりバランスの取れたやり方は、発達理論家達に、彼等がどれくらい上手くタスクをやり遂げたかの、より良い理解を与えています。」とアーリンガー博士は言います。
知能発達派は、困難な問題に遣り甲斐を感じるのですが、知能不変派は、困難な問題を敬遠する傾向が強いようです。困難な問題を解くことで知能を伸ばしたい派と、何をやっても知能は伸びない派の違いは、限られたリソースの振り分け方にあるようです。出来る人間は、時間という限られた資源を有効利用するために、周囲の人を上手く使います。何でも自分でやろうとするとどうしても時間との戦いになってしまうので、そういう人は成功しにくいのかもしれません。
自信過剰の人間の自信を打ち砕く
Further evidence for this conclusion came from a third study, which showed that forcing fixed theorists to really look at the difficult as well as the easy parts of an intellectual task shook their confidence, inspiring more accurate impressions of their performance.
この結果のさらなる裏付けが、知能不変派に、知能タスクの簡単パートだけではなく難解パートも解かせる事で、彼等の自信をぐらつかせ、自己の能力に対するより正確な所感をインスパイアさせていることを示す3つ目の研究からもたらされています。
難しい問題を解かせることで、己の能力の無さを実感させることは、自信過剰を諌める1つの方法ではあります。同様に、喧嘩が弱い人間とばかり喧嘩している人間は、自分が喧嘩が強いと錯覚しますが、喧嘩が強い人と強制的に喧嘩させることで、その自惚れを叩き潰すことができます。
知能は伸びるという思考が知能を伸ばす
“We know that students’ beliefs about intelligence are very consequential in the classroom and that interventions that teach students a growth mindset lead to improvements in their grades,” said Ehrlinger. “We also know that being overconfident keeps people from learning. You have to understand and acknowledge what you don’t yet know in order to truly learn. This research suggests that part of why growth mindsets improve learning might be because they lead people to better understand what they do and what they do not know.”
「私達は、知能に対する学生達の信念と知能は伸びるという考えが、成績向上させることを生徒達に悟らせる介入が、教室の中では重要である事を理解しています。」とアーリンガー氏は言っています。「私達は、同様に、過信が、人々が学ぶ妨げになる事も理解しています。人は、自分達がまだ本当に学ぶために知らない事がある事を理解して認識しなければならないのです。この研究は、知能は伸びるという思考が学習を向上させる理由の一部が、人々に彼等の知っている事と知らない事を良く分からせるためだからかもしれない事を示唆しています。」
知能は発達するという考え方は、人に難しいことに挑戦させ、その過程において、人々に、できることとできないこと、知っていることと知らないことをはっきりと認識させ、結果として、それがやれるように、もしくは、覚えるように努力することで、学習が向上するのだろうと思われます。
“Education is perhaps the best way to advance opportunity,” she said, “and emerging evidence suggests that the benefits of teaching a growth mindset for improving grades are particularly strong for students in stigmatized groups based on race or gender.”
「教育は恐らく機会を促進するための一番の方法でしょう。今回の研究から得た論拠が、成績向上のために知能は伸びる見方を教える利点が、人種や性別で低能の烙印を押されている集団に属する生徒達に対して、特に高いことを示唆しています。」と彼女は語っています。
例えば、マイノリティーや女性は、白人男性に比べて能力が低いとレッテル貼りをされていたとします。そのような場合、自分はマイノリティーだから、もしくは、女性だから能力が低くても仕方ないと諦めてしまえば、そこで終わりですが、そういった人種や性別に関係なく、やればできるという考え方を持つことで、能力は向上していくということが、今回の研究の要旨なので、知能は伸ばすことができると信じて勉強を続けることが重要なようです。逆に、知能は不変という思考は、人を楽な方に進ませ、やれることしかやらなくなることで過信を生み出してしまうようです。己を知るから難しいことに挑戦しようとしないのか、難しいことに挑戦しないから己を知らないのか、鶏が先か卵が先かのような問題になっているように思えます。