例えば最低時間給が800円から一気に1600円に倍増した場合、何が起きるかと言えば、企業の収益性維持のためには、10人でやっていた仕事を5人でやらざるを得なくなるみたいです。
あるいは、1時間でやっていた仕事を30分で終わらせなくてはならなくなるみたいです。
つまり、1人で2人分の仕事ができる有能な人材以外は仕事にあぶれてしまう可能性が出て来てしまうという事のようです。仕事ができる人にとっては、8時間労働が4時間労働になるので朗報でしょうが(ワークシェアリング)、最低賃金のような低スキル労働しかできない人にとっては、非常に厳しい問題になってしまいます。
低時給低スキルなのは当然で、時給が安い分仕事ができなくても通用していたのが(低生産性が許容されていた)、時給が一気に急上昇した事で、低スキル労働者(仕事が遅い従業員)が解雇されてしまうという弊害が生じてしまうからです。
これが公務員や正社員だと、年功序列で給与が上昇していくので、仕事量に反比例して給与だけ上がっていきます。40代以上の公務員と正社員の常軌を逸した非生産性が、日本経済を行き詰まらせてしまっている元凶だとも言われています。それが40歳定年制度が一部で声高に叫ばれ続けている理由でもあります(40歳定年制の賛否両論)。
40過ぎたら全員が非正規労働者になれば、日本は持続可能な社会を構築できるらしいのです。竹中氏のように正社員自体必要ないという人もいるように、全ての給与所得者が使い捨て非正規労働者になる事が、日本がこの先生きのこるための唯一の道なのかもしれません。
20世紀なら40代以上でも通用したのでしょうが、今のような技術の進歩が著しく、高度にデジタル化されてしまった社会においては、新しい技術や知識を習得し易い若年世代を中心に経済は回っていくべきという考えは正論なのではないでしょうか。
最低賃金上昇の弊害
Something “Unexpected” Happened After Starbucks Raised Minimum Wages
after all, it would merely have to reduce work hours, to keep profitability humming.
「結局、健全な収益性維持のためには、労働時間を減らしさえすればいいのです。」
最低時給を大幅に上げた場合、企業が株価と利益を守るためにする事は従業員一人当たりの労働時間を減らすことだけです。
その結果として当然、従業員一人一人の労働負担は増しますし、時給が上がった分仕事量が増えるのは当然なのですが、結局労働時間も減らされてしまうので、仕事がきつくなっただけで、何一ついいことがないみたいな感じになってしまうようです。
とは言っても、労働時間が減る分自分の時間は増えるので、仕事が大変になった分だけ体を休めるための時間も増えます。仕事ができる従業員はいいかもしれませんが、真っ先に解雇されるのは仕事の遅い従業員なので、そこだけが如何ともし難い問題になってしまいます。
非正規労働者だけがこのような不条理を課せられる事に対し、納得いかない人達も多く、結局は使い捨て労働者という概念を法的に修正しない限り、非正規労働者の社会的地位は低くなる一方のような気がします。
ワークシェアリング
40代定年制や正社員はいらない議論が正論なのは、生産性に見合わない賃金を不当に得ている人間があまりにも多過ぎるからです。
日本経済を根底から支えている低賃金労働者が不当に扱われている現状はガン無視で、日本経済の足を引っ張っりまくっている人間達を厚遇し過ぎている事が、日本経済が異常な金融緩和なしにはやっていけない、危機的状況に陥ってしまった原因でもあります。
正社員さえいなくなればワークシェアリングによって、大部分の給与所得者の所得が均一化されることで、不公正/不公平感が是正されるだけではなく、雇用の流動性も生まれるので、解雇されても再就職がしやすくなります。
能力のある人間は起業したり、あるいは企業が本当に必要な人間は優遇されるでしょうし、それによって経済は活性化していきます。能力がある人間が伸し上がっていける環境を作り出す事で、無能な社員が有能な社員の足を引っ張ることがなくなります。
20世紀末に流行った優勝劣敗と規制撤廃という考え方が今の日本には求められています。当時はワークシェアリングが日本を救うと言われていたのですが、ピンチをチャンスに変えられなかった事が、日本をここまで追い込んでしまったとも言えます。日本は限りなく終わっていますが、そう見えないのは、異常な金融緩和と1000兆円を超える借金のお陰です。
痛み止めが国を麻痺させている
結局1000兆円の借金と異常な金融緩和という痛み止めが、国全体を麻痺させてしまっている事に尽きるんだと思います。完全雇用を達成していて、24年来の売り手市場という割には、何ともお粗末な状況が続いています(完全雇用は本当か)。数字だけよく見せても実体が伴わなければ無意味だという事です。笛吹けど踊らずというやつで、8割の庶民にとっては、景気のいいような話は絵空事でしかありません。8割の庶民を切り捨てる事によって、2割の日本国民だけを豊かにしているだけなので、庶民がバブル並みの好景気を実感できないのも当然なのです。バブル当時は1億総中流社会と言われていたのが、今は1億総貧困社会へ向けて驀進中なので、2500万人の日本人だけが豊かさを享受できる時代がやがて到来します。しかし、痛み止めが効かなくなれば、痛みを感じるのは8割の庶民だけで済むはずもなく、ほとんどの日本人が激しい痛みの中で、新しい社会の誕生を経験することになるのではないでしょうか。