ライデン大学の物理学者達が、凍結電子の特殊な部類の絶縁体内部で、電子が自由に動くことを可能にする、電子の溶解を、初めて視覚化することに成功したそうです。そのプロセスは絶縁体を金属に変えて、もしかするとその後、超伝導体に変えるかもしれないらしいです。常温超電導の夢が遂に!実現されるのかもしれません。
室温超電導の話は置いておくとして、今回の新発見は超伝導研究のかなり大きな前進を意味するそうなので、今後のさらなる発展が期待されます。
電子の液体
Melting of frozen electrons visualized
Some materials carry an electrical current more easily than others. Metals are, for example, world-class conductors. Inside metals, electrons form an electronic liquid that flows through the atomic lattice. In specific insulators, on the other hand, electrons are stuck to their place in the lattice; the electronic liquid is frozen. In these so-called Mott insulators, you can replace some atoms with different ones. Physicists call this ‘doping’. It is known that doping leads to a melting of the frozen electronic liquid, but nobody knows how this process works.
「一部の物質は他の物質より簡単に電流を通します。例えば、金属は第一級の伝導体です。金属内部で、電子は、原子格子を貫流する電子の液体を形成します。これに反して、特定の絶縁体においては、電子は格子中のそれらの場所で身動きが取れません。つまり、電子液体は凍結しています。これらのいわゆるモット絶縁体では、一部の原子を違う原子と置き換えることが可能です。物理学者はこれをドーピング(不純物添加)と呼んでいます。ドーピングが凍結した電子の液体の融解をもたらすことが知られていますが、どのようにしてこのプロセスが機能しているのかは誰も知りません。」
金属中では、電子は液体のように自由に流れることができますが、絶縁体では、その電子の液体が凍結してしまい動けなくなってしまうみたいです。電子液体の凍結の溶解が電気の流れを生じさせるということなんでしょう。
モット絶縁体
モット絶縁体について、wikiで調べてみました。モット絶縁体
モット絶縁体 (Mott-insulator) とは、バンド理論では金属的と予想されるにもかかわらず、電子間斥力の効果(電子相関効果)によって実現している絶縁体状態のことである。 バンド理論によれば、単位胞あたりの電子数が奇数の場合は、バンドは部分的にしか占有されないため、必ず金属的になるはずである。しかし実際には単位胞あたりの電子数が奇数となる化合物の中にも金属的な電気伝導を示さず、絶縁体となるものが存在する。これらの絶縁体の基底状態が電子相関に起因するものであることを指摘したのがモットとパイエルスである。モットが指摘したこの転移は、絶縁相に関して磁性の状態は仮定されていないが、現実の「モット絶縁体」では反強磁性を示すなど磁性状態になる。
モット転位も調べました。
モット転位
通常のバンド描像では金属のフィリングでも、電子間のクーロン相互作用によって絶縁体になることがある。このような金属-絶縁体転移はモット転移と呼ばれ、1940年代後半から長い間その性質について議論されてきた。特に、層状構造をもつ反強磁性モット絶縁体にドープすることによって銅酸化物の高温超伝導体が得られることから, 2次元系のモット転移近傍の性質に注目が集まり、モット転移に関する様々な可能性が理論的に提案されてきた。主なものとして、1次転移、フェルミ液体の有効質量の発散、反強磁性秩序をもつ金属からのバンド絶縁体型転移、スレーブ粒子描像などが挙げられる。
モット転位が高温超伝導と関連しているようです。
イリジウム酸化物
Now, Leiden physicist Milan Allan, together with lead authors Irene Battisti and Koen Bastiaans, have visualized this melting process for the first time in a family of materials called iridates. They discovered that the melting process is very inhomogeneous, with puddles forming in between frozen areas. These puddles are only a few nanometers in size.
「ライデン物理学者Milan Allanは、筆頭著者のIrene BattistiとKoen Bastiaansと共に、イリデートと呼ばれる物質の一族において、初めてこの溶解プロセスを視覚化しました。彼等はその溶解工程が、凍結エリア間に溜り形成を伴い、とても不均一であることを発見しました。これらの溜りは大きさにしてほんの数ナノメートルです。」
融解工程において、氷結した区域の間に水溜りのような物が存在しているみたいです。
Apart from getting insight into a fundamental process, the discovery also shines light on the mystery of superconductivity—a phenomenon in which electrons move without resistance. Superconductivity is important because it allows transportation of electricity with zero energy loss. “We came to believe that this kind of melting is a universal prerequisite of superconductivity,” says Allan. “If we could manage to melt the electronic liquid in all parts of the sample, it would likely become a new superconductor.”
「基本過程を理解することはさておき、その発見は、電子が抵抗なしに動く現象の超伝導の謎に光を当ててもいます。超電導は、それがエネルギーを全く失うことなしに電子の輸送を可能にするので重要です。”我々はこの種の融解が、超電導の普遍的な前提条件であると信じるに至りました。”とAllanは言っています。”もし我々が、そのサンプルの全域で電子液体を何とか融解することができれば、それは新たな超伝導体になりそうです。”」
イリジウム酸化物が銅酸化物のような高温超伝導になる可能性があるみたいです。常温超電導は無理としても、ドライアイスで冷却できるぐらいまでの高温超伝導体である可能性があるのかもしれませんし、将来有望な物質と言えます。