電子・ホール結合、トリオン、ポーラロン、エキシトン

もし、人が、気象現象を理解しようとした場合、たった一滴の水滴や、たった1個の空気分子の動きを観察しても何の役にも立ちません。その代わりに、気象学者(と同様に門外漢)は、小粒子間の複雑な相互作用の産物である、雲や風や降水量の話をします。光学的性質や固体の伝導性を扱う物理学者は、ほぼ同じ手法を用います。この場合もやはり、ちっぽけな粒子、原子と電子が、数多くの現象に関わっていますが、はっきりした絵は、それらの多くが、準粒子に集団化されるまで現れません。

しかし、物質中にどんな準粒子が生じるのか、それらがどのようにして互いに影響し合っているのかを正確に解明する事は、簡単な作業ではなく、かなり骨の折れる研究を通して、少しずつピースを組み合わせていく、大きなパズルのようなものです。実験的・理論的知識を組み合わせて、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の量子エレクトロニクス研究所でイマモグル氏と彼の協力者等は、現在、過去に間違って置かれたピースを正しい場所に戻すのにも役立つ、そのパズルの新しいピースを発見しています。

エキシトンとポーラロン

Hot on the heels of quasiparticles

In solids quasiparticles can be created, for instance, when a photon is absorbed. The motional energy of electrons teeming about in a solid can only take values within well-defined ranges known as bands. A photon can promote an electron from a low-lying to a high-lying energy band, thus leaving behind a “hole” in the lower band.

「固体では、準粒子が、例えば、光子が吸収された時に生成されます。固体中を動き回るたくさんの電子の運動エネルギーは、バンドとして知られている明確な範囲内でのみ、値を取ることができます。光子は、電子を低エネルギー帯から高エネルギー帯へ昇格でき、従って、低いバンドにホールを残します。」

The excited electron and the resulting hole attract each other through the electrostatic Coulomb force, and if that attraction is strong enough, the electron-hole pair can be viewed as a quasiparticle – an “exciton” is born. Two electrons and a hole can bind together to form a trion. When excitons and a large number of free electrons are simultaneously present however, the description of the qualitatively new – or “emergent” – properties of the material requires the introduction of new type of quasiparticles called Fermi polarons.

「励起された電子とその結果として生じたホールは、静電クーロン力を介してお互いに引き合い、もしその引力が十分強ければ、電子ホール対(電子正孔対)が、準粒子として見なされる事が可能で、エキシトン(励起子)が誕生します。2個の電子とホールは、トリオンを形成するために結合可能です。励起子と多数の自由電子が同時に存在した場合、その構成要素の質的に新しい、新生の性質の説明には、フェルミポーラロンと呼ばれる新しいタイプの準粒子の披露が必要となります。」

1個の電子と1個のホールが結合してエキシトンが誕生、2個の電子と2個のホールが結合してトリオンが誕生、エキシトンと自由電子が結合してフェルミポーラロンという準粒子が誕生するみたいです。非常に興味深い現象です。

トリオンと聞くとプリオンを思い出します。

半導体中の準粒子

Imamoglu and his colleagues wanted to find out the nature of quasiparticles that appear in a certain type of semiconductors in which electrons can only move in two dimensions. To do so, they took a single layer of molybdenum diselenide that is thousand times thinner than a micrometer and sandwiched it between two disks of boron nitride. They then added a layer of graphene in order to apply an electric voltage with which the density of electrons in the material could be controlled. Finally, everything was placed between two mirrors that formed an optical cavity.

「イマモグル氏と同僚等は、ある種の半導体に現れる、電子が2次元内しか動けない準粒子の性質を調査がしたかったので、そうするために、彼等は、マイクロメーターよりも1000倍薄く(ナノメートル)、窒化ホウ素の2つのディスクの間に挟まれた、ニセレン化モリブデンの単層を選びました。彼等は、次に、その材料中の電子密度を、電圧の印加で制御できるようにグラフェンの1層を付け足しました。最後に、全てが、光キャビティ(光共振器)を形成している2つの鏡の間に配置されました。」

With this complex experimental setup the physicists in Zurich could now study in detail how strongly the material absorbs light under different conditions. They found that when the semiconductor structure is optically excited, Fermi-polarons are formed – and not, as previously thought, excitons or trions. “So far, researchers – myself included – have misinterpreted the data available at the time in that respect”, admits Imamoglu. “With our new experiments we are now able to rectify that picture.”

「この複雑な実験設定を用い、チューリッヒの物理学者等は、現在、異なる状況下で、その物質がどの程度の強度で光を吸収するのかをつぶさに研究することが可能になりました。彼等は半導体構造が、光学的に励起されると、当初考えられていたように、エキシトン、あるいは、トリオンではなく、フェルミポーラロンが生成されることを発見しました。”これまでは、研究者達は、自分も含めて、その点において、その当時利用可能だったデータを誤って解釈していました。”とイマモグル氏は非を認めました。”我々の新しい実験により、我々は、今は、その誤った理解を修正することができます。”」

チーム協力

“This was a team effort with essential contributions by Harvard professor Eugene Demler, who collaborated with us over several months when he was an ITS fellow”, says Meinrad Sidler who is a doctoral student in Imamoglus group. Since 2013 the Institute for Theoretical Studies (ITS) of the ETH has endeavoured to foster interdisciplinary research at the intersection between mathematics, theoretical physics and computer science. In particular, it wants to facilitate curiosity-driven research with the aim of finding the best ideas in unexpected places.

「”今回の研究成果は、氏がITS特別研究員だった頃、数ヶ月の間我々に協力してくれた、ハーバード大学のユージン・デムラ-教授による重要な貢献を含むチーム努力の賜物でした。”と、イマモグル氏のグループの博士課程学生メインラッド・シドラ-氏は語っています。”2013年以来、スイス連邦工科大学の理論研究所は、数学、理論物理学、コンピュータサイエンスの間の共通部分における学際的な研究を促進させる努力を続けています。特に、思いもかけないような場所で、最も優れたアイデアを見つけることを目標にしている、好奇心に駆られた研究を促進することを目指しています。”」

欧州諸国もかなり研究に金をかけている感じがします。

The study by Imamoglu and his colleagues, now published in “Nature Physics“, is a good example for how this principle can be successful. In his own research, Eugene Demler deals with ultracold atoms, studying how mixtures of bosonic and fermionic atoms behave. “His insight into polarons in atomic gases and solids have given our research important and interesting impulses, which we may not have come up with on our own”, says Imamoglu.

「現在、Nature Physics誌に掲載されているイマモグル氏等による研究は、この原則がどのようにして達成し得るのかの良い手本になっています。彼自身の研究で、ユージン・デムラ-氏は超冷原子を扱い、ボソン原子とフェルミ原子の混合体がどのように振る舞うかを研究しています。”彼の原子気体と原子固体中のポーラロンに関する識見は、我々の研究に、我々自身ではとても思い付かなかったかもしれない、重要かつ興味を起こさせる刺激を与えています。”とイマモグル氏は言っています。」

狙いは超電導

The insights they have gathered will most likely keep Imamoglu and his collaborators busy for some time to come, as the interactions between bosonic (such as excitons) and fermionic (electrons) particles are the topic of a large research project for which Imamoglu won an Advanced Grant of the European Research Council (ERC) last year, and is also supported by the National Centre of Competence in Research Quantum Science and Technology (NCCR QSIT). A better understanding of such mixtures would have important implications for basic research, but exciting applications also beckon. For instance, a key goal of the ERC project is the demonstration of control of superconductivity using lasers.

「彼等が拾い集めたその識見は、ボーズ粒子(エキシトン等)とフェルミ粒子(電子)間の相互作用が、イマモグル氏が去年欧州研究会議(ERC)の上級助成金を勝ち取り、連邦科学研究能力センター量子科学技術(NCCR QSIT)により援助もされている、大規模研究計画の主題になっているので、イマモグル氏と彼の協力者達を、恐らく当面忙しくし続けるはずです。そのような混合体のさらなる理解は、基礎研究にとって重要な意味を持っていますが、刺激的な応用が誘惑してもいます。例として、ERCプロジェクトの重要な目標は、レーザーを利用して、超伝導の制御の実演をすることです。」

やはり狙いは超伝導にあるようです。室温超電導を制した国が、今後、技術的、経済的、軍事的な主導権を握る可能性があります。室温超電導、室温量子コンピュータは、産業革命以上の社会的、経済的なインパクトを与えると言われているだけに、どこの国も我先に開発する事に躍起になっていますが、日本は国を挙げてとは言えない状況にあります。とは言っても、日本は技術的には優れているので、政府(民間セクター)の協力を仰げないとしても、一部の天才が何とかしてくれる可能性もあります。