反トランプデモが全米各地で繰り広げられ、徐々に勢いが増しているように思われます。彼らの言い分は、ヒラリー・クリントン氏がドナルド・トランプ氏よりも200万~250万票も多く得票するので、トランプ氏は大統領になるべきではないし、なる資質すら持ち合わせていないということみたいです。
さらにトランプ氏の勝因が、マイノリティに対するvoter suppression(投票抑圧)によるとまで指摘されていて、クリントン氏がマイノリティの支持を得られなかったのは、クリントン氏が不人気だったのではなく、共和党によるシステミックな選挙妨害によるものだったと結論付けている識者までいるほどです。それが本当だとしたらこれは由々しき問題ですが、あくまでも一部の民主党支持者が言っていることなので、割り引く必要があります。共和党支持者はその意見に対して、sore loser(負けを素直に認めない敗者)と一蹴しています。クリントン氏が敗れたのは、エリザベス・ウォーレン氏を副大統領候補に選ばなかった事で、ミレニアル世代から完全に見放されたことが原因なので、マイノリティー有権者に対する選挙妨害云々以前の問題です。民主党は、トランプ氏という、絶対に負けるはずのない安牌に負けたことを恥ずべきで、その反省がなければまた負けます。
トランプ氏は何故嫌われるのか?
Anti-trump movement(反トランプ運動)が全米各地で起こっています。選挙前からトランプ氏は、アメリカ国民の大部分から、ゴキブリのように毛嫌いされていました。なので、クリントン氏が負けるはずがないと思われていたのですが、クリントン氏も国民の大部分から嫌われていたので、嫌われ者同士の戦いになり、最終的に、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアの白人票(white evangelicals)がトランプ氏を大統領にしました。キリスト教徒がトランプ氏に挙って投票したのは、連邦最高裁判事を絶対に保守主義判事にする必要があったからです。そういった意味で、トランプ氏を大統領にしたのは、故アントニン・スカリア判事だったとも言っても決して過言ではありません。
テッド・クルーズ氏もトランプ嫌いにもかかわらず、最高裁判事の問題があるので、仕方なくトランプ氏支持に回ったほどです。面白いのは、トランプ氏がその最高裁判事候補にクルーズ氏を選ぶのではないかと噂されていることです。クルーズ氏は2020年の大統領選を視野に入れているので、その誘いを受諾するのかどうか微妙ですが、もし、トランプ氏がクルーズ氏を最高裁判事に推した場合、クルーズ氏を圧倒的に支持したウィスコンシンのキリスト教徒は大喜びします。上院から厄介払いができると多くの共和党員も喜ぶし、トランプ氏にとっても目の上のたんこぶを取り除けるのでいいかもしれません。
トランプ氏が嫌われるのはメディアのせいとも言われていますが、それは本末転倒で、トランプ氏の人間性に問題があるから嫌われているだけです。ほとんどのアメリカ国民が、トランプ氏が人格破綻者、病的虚言者、病的自己中、自己陶酔者、切れやすい凶器である事を知っていて、それ故、8割近くのアメリカ国民がトランプ氏は大統領にふさわしくないと言っていたのですが、2割のアメリカ人がトランプ氏に投票したことにより、一般投票では200万票以上もの差をつけられながら、何故か大統領に当選してしまいました。珍現象、奇跡、神の見えざる手、世も末、終わりの始まり等、色々言われていますが、絶対起こり得ない事が起こった事への怒り(共和党の組織的な不正行為でトランプ氏が大統領になったと言っている)、トランプ氏よりも推定250万票多く得票しているクリントン氏が大統領になるべきという至極当然の思い、何をするか分からないトランプ氏が核コードを持つことへの恐怖(ロシアとの全面核戦争で人類滅亡)等、さまざまな理由から全米で大規模デモが繰り広げられています。トランプ氏の数々の問題発言が原因なので、どうしょうもありません。
トランプ氏を止められるのか?
全米でデモが激しさを増せば、オバマ大統領が動いて選挙を無効にするとか、12月19日の選挙人団の投票で、選挙人達が、トランプ氏ではなく、もっとまともな人間(ポール・ライアン氏やマイク・ペンス氏等)に投票するのではないかという、荒唐無稽な事を言い出す人達もいますが、そんな事は絶対に起こり得ません。リベラルだけではなく、保守派の人間まで、デモが激しさを増せば、オバマ大統領が戒厳令を発令し、選挙を無効化して、大統領の座に留まり続けるとか()、メチャクチャな事を言い出しているので、現実的な思考をできない人間は突拍子もない事を言い出すので困ります。
仮に現在のデモが、一部の保守派達が危惧するように、戒厳令発令を目指して、ジョージ・ソロス氏によって引き起こされているとしたら、それは大問題ですが、そんな事はさすがにないはずなので、オバマ氏もmartial lawは敷かないだろうし、トランプ氏は来月19日にすんなり大統領であることが確認されて、来年1月20日の就任式で晴れて大統領になるはずです。トランプ氏もそれまでは、借りてきた猫のように大人しく振る舞うだろうし、大統領になってからの氏の豹変ぶりが怖いのは確かですが、怒らせさえしなければ、トランプ氏は良い人らしいので、とにかく怒らせないことが重要みたいです。とは言っても、プーチン氏はトランプ氏を激怒させる可能性があるので、最悪のケースも想定しておいた方がいいのは言うまでもありませんが、さすがにそこまでホットヘッドではないでしょう。
トランプ氏を止めることは誰もできません。それは、トランプ氏が核発射命令を出した場合、誰も止める事ができず、4分後に核ミサイルが発射されるのと一緒です。来年1月20日にトランプ氏はめでたく大統領になります。アメリカ国民の大部分が大統領にふさわしくない、危険と言っている人が大統領になるわけです。
トランプ氏大化けの可能性
トランプ氏をレーガン大統領に擬える保守派が多いです。レーガン大統領も今のトランプ氏のようにリベラルメディアから激しい口撃に遭い、レーガン氏が大統領になったら米ソの間で全面核戦争になるとまで言われていました。1983年、The Day After(ザ・デイ・アフター)という有名な全面核戦争を題材にしたテレビ番組が制作されたほどです。日本でも放送され、子供達の間でもかなりの話題になりました。
なので、トランプ氏もレーガン大統領のように偉大な大統領になる可能性があると、一部の保守派達が予想しています。しかし、レーガン大統領はトランプ氏とは人間性がまるで違うと、その意見に猛烈に反発する保守派が多いので、何とも言えません。個人的にも、トランプ氏とレーガン大統領とでは人間の質が全く違うように思えます。
しかも、レーガン氏はゴルバチョフ氏という安牌を相手にできましたが、トランプ氏はプーチン大統領という、超危険と目されている人物を相手にしなければならず、危険人物同士が衝突した場合、歴史が悲劇を繰り返すのは何度も証明されています。そういう事もあって、多くのアメリカ人は最悪の事態を恐れています。
トランプ氏が確変して酷い大統領からまともな大統領になる事は、世界の人々の安全保障にも関わってくるので、何とか普通の大統領になってもらいたいものです。圧倒的過半数のアメリカ国民が、大統領にするのはあまりにも危険過ぎると思っていたトランプ氏が大統領になってしまった事は、ある意味悲劇ですが、とにかく、トランプ氏が大化けして、まともな大統領になってくれる事を祈るしかありません。