線形磁気抵抗の起源は新奇?古典?

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Nijmegen High Field Magnet Laboratory(ナイメーヘン高界磁石研究室)とスイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究者が、単純な物理模型が、linear magnetoresistance(線形磁気抵抗)を説明するのに十分であることを立証したとの事です。彼等の研究結果は今週、Physical Review Letters誌のEditor’s Suggestionの記事中に掲載されました。

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線形磁気抵抗

The origin of linear magnetoresistance—exotic or classical?

磁場(磁気抵抗)内で物質の電気抵抗を測定することは、多くの場合、新しい電子物性発見への第一歩です。2005年のグラフェンの出現以来、トポロジカル絶縁体(位相絶縁体)やワイル半金属・ディラック半金属を含む、特殊な性質を持った多くの新しい物質が発見されてきています。こういった物質は、固体中の電子が、無質量粒子(光子と言われている光の粒子に似た)のように振る舞う、いわゆる分散関係と呼ばれている、運動量と自身のエネルギーが、リニアスケーリング(線形スケーリング)を示しています。この種の今までにない電子物性は、情報技術や光電子技術における応用できる可能性があるので、多くの興味を引いています。こういった物質の多くでは、抵抗は、磁場と直線的に増加することが分かっており、我々が、線形磁気抵抗(LMR)と呼んでいる現象です。

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質量ゼロのディラック電子

通常の電子は、運動量pはディラック定数ħと波長kの積、p=ħkで求められ、電子のエネルギーEは、E=ħ2k2/(2m*)、m*は電子の有効質量、Eとkは放物線的な関係を持ちますが、質量がゼロのディラック電子においては、質量mがゼロのディラック方程式で表されるので、結果として、E=±v|p|、vは電子の速度、の線形関係を持つみたいです。

ディラック電子について調べました。せめぎ合うゼロ質量電子

ディラック電子は、グラファイトを単層剥離し作製するグラフェン中で10年ほど前に初めて確認され、その後、表面のみ金属的な伝導特性を示す特殊な絶縁体やその類縁物質、さらには分子性結晶中などでも見つかり、「ディラック物質」の科学として、近年、新たな広がりを見せています。 中でも、ディラック電子間の電気・磁気的な相互作用は、通常の金属や半導体中の有限質量をもった電子間のそれとは著しく異なる特質をもつことが予想され、 そのため、普通の物質とは全く異なる電子の集団的挙動(社会性)が期待されます。実際、たとえばグラフェンにおいては、相互作用の帰結として物質内を動き回る電子の速度が(通常とは逆に)異常に増大する現象が確認されています。しかし、グラフェンでは本質的に電子間の電気・磁気的な相互作用自体が弱く、このため、ディラック物質における電子社会の多様性については、実験的にまだ十分に理解が進んでいないのが現状です。

どうやら、ディラック電子についてはまだまだ謎の部分が多いみたいです。

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線形磁気抵抗の簡単な説明

ラドバウド大学と FOM財団の間で結ばれたパートナーシップのナイメーヘン高界磁石研究室と、チューリッヒ工科大学の研究者達は、現在、まだそういった線形エネルギー関係を持っていない、超クリーンな GaAs(ガリウムヒ素)量子井戸の抵抗を測定しています。彼等は、上記でハイライトされた物質、トポロジカル絶縁体(位相絶縁体)や、ワイル半金属・ディラック半金属によく似た、強力な LMRを発見しています。この場合の LMRの起源は、従来の物質成長法では避けられない、固体中に存在する小さな密度差と関係しているように思われます。この事が、測定された磁気抵抗の自由電子が受ける、磁界中のローレンツ力によって起こる、線形ホール抵抗に寄与しています。今回の発見が、目を見張る壮大な現象に対するエキゾチックな解釈が、必ずしも答えであるとは限らないという、非常に重要な教訓を我々に教えてくれています。

ホール抵抗について調べてみました。量子ホール効果

半導体界面に形成される2次元電子層に低温で強い磁場を加えると、電流方向の抵抗がゼロになり、ホール抵抗が量子化する現象。ここで、ホール抵抗とは、磁場によるローレンツ力の影響で生じる、電流に対して垂直方向の抵抗のこと。

エキゾチックなマテリアルと良く似た珍しい現象を起こすからと言って、それが必ずしも同じ理由で起こっているわけではなく、今回のケースは、製造工程における欠陥に起因しているという古典的な理由で、結局は新奇な起源ではなかったようです。個人的にはこう解釈しましたが、あくまで門外漢なので、はっきり言って確信は持てません。

ディラック半金属やワイル半金属は、トポロジカル絶縁体に匹敵する、今現在かなりホットな物質なようで、グラフェンやボロフェン、二硫化モリブデン等の2次元材料と並んで将来の超高速エレクトロニクス用の新材料になることが期待されています。

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