電子キュービット間で光が情報のメッセンジャー!

シリコンベース量子コンピューター実現に近づくステップで、プリンストン大学の研究者は、単一電子が光の粒子に量子情報を渡せる装置を構築しました。光の粒子、光子は、その後別の電子にその情報を運ぶメッセンジャーの役目を果たし、量子コンピューターの回路を形成する接続を作り出します。サイエンス誌に掲載されプリンストンとカリフォルニア州マリブにあるHRL研究所で行われた今回の研究は、光子が電子と会話する頑強な機能を構築するための5年以上の取り組みを表しています。

電子と光子の間の会話

Electron-photon small-talk could have big impact on quantum computing

人間の交流と同じように、良好なやり取りをするためには、多くの努力が必要で、例えば同じ言葉を話すなどを促進させます。電子状態のエネルギーを、両者が会話できるように光粒子と共鳴させることが今回可能になったようです。今回の発見は、研究者が、光を量子コンピュータでビットやデータの最小単位の機能をする個々の電子と紐付けするのに使う手助けをします。量子計算機は、実現すれば、日常世界の物理法則ではなく量子法則に従う電子などの微小粒子を使って高度な計算を実行できるようになる先進デバイスです。

普通のコンピューターで各々のビットは、0か1を持てます。キュービットとして知られている量子ビットは、0や1の他に0と1の両方の状態に同時に存在できます。この重ね合わせが、周知の通り、量子コンピュータが今のコンピュータが解けない複雑な問題に対応できるようにしています。単純な量子計算機は既にトラップイオンや超電導体を使って作られていますが、いくつかの技術的な課題が、シリコンベースの量子デバイスの開発の足を引っ張ってしまっています。シリコンは、低コストで、既に現在のスマホやコンピューター等で広く使われているので、かなり魅力的な材料です。

メッセンジャーとしての光子

研究者は、デバイスの中に電子と光子の両方を閉じ込めた後、量子情報が光子に伝達できるような形に電子のエネルギーを調整しました。このカップリングが、光子が、その情報を1個のキュービットから、最大1cm離れた別のに運ぶのを可能にしています。

量子情報は非常に脆く、環境からの些細な撹乱で完全に失われる可能性があります。光子は混乱に対してずっと頑強で、量子計算機回路の中でキュービットからキュービットに情報を運べるだけでなく、ケーブル経由で量子チップ間でも伝達できます。

これら2つの全く異なるタイプの粒子が会話するために、しかし、研究者は、適切な環境を提供するデバイスを構築する必要がありました。最初に、研究者は、シリコンとシリコンゲルマニウムのレイヤーから半導体チップを加工しました。この構造が、そのチップの表面化に電子の単一層をトラップしました。次に、プリンストンの研究者は、それぞれが人毛の幅よりはるかに微細なワイヤーを、デバイスの上部にわたって敷きました。このナノメーターサイズのワイヤーが、研究者が、単一電子を捕捉し、二重量子ドットと呼ばれているシリコンの領域にそれを閉じ込める能力があるエネルギーランドスケープを作り出している電圧を送ることを可能にしています。研究者は、その同じワイヤーを、捕捉された電子のエネルギー準位と、シリコンウエハー上部に作られた超電導キャビティ中に捕捉されている光子のそれがマッチするよう調整するのに使いました。

double quantum dot = 二重量子ドット

キュービットとしての電子

この発見以前は、半導体キュービットは、隣り合ったキュービットとしか結合できませんでした。キュービットを結合するのに光を使うことで、情報をチップの両端のキュービットの間で受け渡すことを可能にしてくれるかもしれません。

電子の量子情報を構成しているのは、二重量子ドット中の2つのエネルギーポケットの1つの中に存在する電子の位置に過ぎません。電子は、1つか他のポケット、もしくは、同時に両方を専有できます。デバイスに印加される電圧を制御することで、研究者は、どのポケットに電子が占有するかをコントロールすることが可能です。

研究者は、現在、量子状態を、キャビティ内に閉じ込められた光子に、実際に伝送する能力を持っています。この事は、半導体においては、量子状態が、情報を転送する前に失われてしまうために、過去に達成されたことがありません。

今回のデバイスの成功は、ワイヤーをキュービットにずっと近付け、電磁波放射の他のソースからの干渉を低減させている新しい回路設計のおかげです。このノイズを減らすために、研究者達は、デバイスに通じるワイヤーからの余計な信号を除去するフィルターを取り付けています。金属線はキュービットを保護してもいます。結果、そのキュービットは、過去の実験で使われたものよりも、100倍~1000倍ノイズが少なくなっています。

スピンキュービットの夢

最終的に、研究者は、今回のデバイスが、スピンとして知られている電子の固有特性を使って動作するように、機能拡張をする計画をしています。長い目で見れば、研究者は、電気的に制御可能なスピンキュービットを作るために、スピンと電荷が互いに結合しているシステムを目指しています。電子と光をコヒーレントに結合できることは既に証明していて、その事は同時に、スピンと光を結合する重要な一歩になってもいます。

単一電子キュービット用の強いカップリングコンディションを達成する条件の正確な組み合わせを見つけるまでは長い戦いでした。母数空間の領域が、システムが初めて強いカップリング領域に到達できる場所で発見されたのを見ることは非常に喜ばしいことです。

parameter space = パラメータースペース(母数空間)

身内以外とはコミュ障だった電子キュービットを、光子と会話できるようにする事で、電子同士が直接やりとりするのではなく、間に光子をメッセンジャーとして介在させることによって、外部ノイズから量子状態を保護し、量子状態が破壊されて情報が失われることを防いでいるようです。今度は、電子のスピンと光の間での会話を目指し、最終目標として、スピンキュービット間を光子がとりなす格好のシステムを目指しているようです。