米エネルギー省SLAC国立加速器研究所の理論物理学者達は、特別な光パルスが、電気が原子並に薄い半導体の中を、抵抗無しで流れるロバストなチャネル(頑丈な通路)を創出する仕組みを証明するためにコンピューターシミュレーションを利用しました。もし、この手法が、実験によって証明されれば、この魅力的な性質を今よりも色々な物質に作り出して制御するための新しい道への扉を開いていくれる可能性があります。
今回の研究結果は、Nature Communications誌に掲載されました。
トポロジカル絶縁体
過去10年にわたり、この種の特殊な物質(その表面状態がささいなゆがみに影響されないので”位相的に保護された”として知られている)の作り方を理解する事は、材料科学のホットなリサーチトピックになっています。最も有名な例が、物質の端や表面沿いの限定された導路で抵抗無しで電気を通すが内部は通さない位相絶縁体です。
トポロジカル絶縁体が大人気ですが、去年のノーベル物理学賞の受賞でその人気にさらに拍車が掛かっているようです。室温超電導並のホットな研究課題なのは確かです。
二硫化タングステン
Previous theoretical studies had looked at how light might induce topologically protected phenomena in graphene, a sheet of pure carbon just one atom thick. Unfortunately, it would take an impractically high light energy and intensity to induce that effect in graphene. In this study, SLAC researchers focused on tungsten disulfide and related compounds, which form sheets just one molecule thick and are intrinsically semiconducting.
「過去の理論的研究は、ほんの1原子厚の炭素シートであるグラフェンで、光が位相的に保護された現象を引き起こす可能性がある仕組みを考察していました。残念ながら、グラフェンでその効果を誘導するのには、非実用的に莫大な光エネルギーと強度を必要とします。今回の研究で、SLAC研究者は、ほんの1分子厚で本質的に半導体のシートを形成する、二硫化タングステンとその同族化合物に焦点を当てました。」
二硫化タングステンの人気っぷりが半端ありません。グラフェン顔負けです。
研究者は、赤色から近赤外波長レンジの円偏光パルスを単層二硫化タングステンに照射する実験をシミュレートしました。材料が照射されている間、材料中の電子は、グラフェンとは根本的に違う形で勝手にまとまり、試料のエッジ沿いに完全に抵抗無しの新しい経路を作り出すことを、シミュレーションの結果が示しています。
発熱を極限まで抑え込む
To account for the fluctuating interactions between light waves and electrons, the researchers employed a periodically time-varying frame of reference that had roots dating back to the 1880s and French mathematician Gaston Floquet. The approach clearly showed that lower-energy light, to which the material would seem transparent, would create topologically protected, no-resistance edge paths in the tungsten disulfide monolayer.
「光波・電子間の変動相互作用を考慮に入れるために、研究者達は、1880年までさかのぼってフランス人数学者ガストン・フロケ氏にルーツを持った周期的に時間変化する基準系を用いました。そのアプローチは、材料サンプルが透明に見えるくらいのかなり低いエネルギー光が、二硫化タングステン単層に、トポロジカルに保護された、抵抗が全くないエッジパス(表面端の導路)を作り出せることを、はっきりと示しました。」
さらに、今回のシミュレーションは、無抵抗経路を乱す物質の不要な加熱が、光エネルギーを最も効果的なものよりも若干弱めることで回避できることを示しました。
”我々は、初めて、余剰材料加熱を軽減する一方で、第一原理材料モデルと光で誘発される位相的に保護された状態を結び付けました。”と、SLACで勤務するスタンフォード院生で今回の技術論文の筆頭著者マーティン・クラーセン氏が言っています。
当該研究者達は、実材料を使って彼等の理論予測をテストする実験につながる可能性がある、他のいくつかの研究グループと話し合いを持っています。
光を使って、トポロジカル絶縁体のように振る舞う物質を作り出すことが、理論的に可能であることを証明した今回の研究は、実験的に証明されれば、光電子技術に革新的な影響を与えそうです。絶縁体と超電導のハイブリッドな組み合わせを常温で実現できる可能性があり、超低電力、超高速コンピュータの開発に使える可能性があるだからです。