メリーランド大学医学部による研究が、kynurenic acid(キヌレン酸)と呼ばれる化合物のレベルを調節する事で、統合失調症様行動に著しい効果をもたらす事を見出しました。今回の研究は、Biological Psychiatry誌最新号に掲載されています。
ここ数年、科学者達は、統合失調症において中心的存在の可能性がある物として、キヌレン酸を特定しています。統合失調症を患う人々は、脳内のキヌレン酸濃度が正常値より高くなっています。KYNAは、知られているように、グルタミン酸を減らすアミノ酸tryptophan(トリプトファン)の代謝産物で、研究者達は、この疾患を持つ人々が、この病気を持たない人達と比べた場合、glutamate signaling(グルタミン酸シグナリング)がより少ない傾向にあることを明らかにしています。科学者達は、このグルタミン酸活性における減少、ひいては、統合失調症患者達に見られる、より高いKYNA濃度が、一連の統合失調症に見られる症状、特に、認知的問題と関連がある可能性があることを理論付けしています。
国際コラボ研究
Researchers find chemical switch that may decrease symptoms of schizophrenia
For several years, Robert Schwarcz, PhD, a Professor in the Department of Psychiatry at the University of Maryland School of Medicine (UM SOM), who in 1988 was the first to identify the presence of KYNA in the brain, has studied the role of KYNA in schizophrenia and other neuropsychiatric diseases.
For the new study, Dr. Schwarcz and his team collaborated closely with scientists at the Karolinska Institute in Stockholm, Sweden, the University of Leicester in the United Kingdom, and KynuRex, a biotech company in San Francisco.
‘1988年に、脳内の KYNA の存在を初めて同定した、メリーランド大学医学部精神科教授のロバート・シュワルツ博士は、統合失調症と他の神経精神病における、KYNAの役割を研究し続けています。新しい研究のために、シュワルツ博士と彼のチームは、スウェーデンのカロリンスカ研究所、英国のレスター大学、サンフランシスコのバイオテック企業KynuRexの研究者等と密接に協力しています。’
キヌレニン3-モノオキシゲナーゼ
”今回の研究は、私達の長年の仮説に対する重要な新しいサポートを提供しています。”と博士は語った。”それは、KYNA系が、統合失調症で機能不全に陥る仕組みを説明しています。”
Dr. Schwarcz and his colleagues studied mice which were deficient in kynurenine 3-monooxygenase, or KMO, an enzyme that is crucial for determining the levels of KYNA in the brain. Specifically, lower KMO results in higher levels of KYNA.
‘シュワルツ博士と彼の同僚等は、脳内のKYNA濃度を決定するのに欠かせない酵素である、キヌレニン3-モノオキシゲナーゼ、あるいはKMOが欠乏したネズミを研究しました。特に、より高濃度のKYNAが、より低濃度のKMOをもたらす結果になり、興味深いのは、統合失調症患者達が、低濃度グルタミン酸塩と多分関連がある、正常な脳KMO濃度より低かった事です。’
KMO欠乏が統合失調症の原因
The mice with lower levels of KMO showed impairments in contextual memory and spent less time than did a control group interacting with an unfamiliar mouse in a social setting. The low-KMO mice also showed increased anxiety-like behavior when put into a maze and other challenging settings. Since these behaviors are similar to behavioral traits in humans with schizophrenia, this suggests that KMO and KYNA may play a key role in the disease.
‘低濃度KMOを持つネズミは、文脈記憶に障害を示し、社会的な設定における見慣れないネズミとの交流で、統制群が消費した時間よりもより少ない時間を費やしています。低濃度KMOネズミは、迷路や他の困難な設定に置かれると、不安様行動も同時に増しています。こういった行動は、統合失調症を患う人間の行動特性に似ていて、この事が、KMOとKYNAが、統合失調症に重要な役割を果たしている可能性があります。’
control group = 対照群、制御群、対照集団、制御集団等、色々な訳がされていますが、最も無難な訳は、コントロールグループでしょう。対照群が一般的ではあるみたいな感じです。
KYNAを減らす物質の開発が急務
今回の発見は、臨床上の意義も持っています。そのままで、大規模にグルタミン酸塩をブーストすることは、発作と神経細胞破壊を含む、重大な副作用をもたらします。シュワルツ博士と彼の同僚等は、KYNAを修正することが、グルタメートをより正確に調整する可能性があることを提唱しています。近年になって、彼と彼の同僚等は、KYNAの減少が、統合失調症に似た認知障害を持つ動物の認知力を向上させることを、実際に証明しています。このメカニズムが間接的なので、直接グルタミン酸をブーストするよりも、副作用が少ないように見えます。彼のメリーランド大チームは、現在、人間においても、ネズミと同じ効果をもたらしてくれる可能性がある化合物を詳しく調査しています。
ネズミを使った実験では、KYNAを減らして、間接的にグルタメートを増やす事で、ネズミの統合失調症様行動を減らすことができたみたいなので、人間で、KYNAを減らせる物質を作り出せれば、統合失調症の治療に革命をもたらしてくれる可能性があるみたいです。