1型糖尿病を治癒可能な治療法がサンアントニオで開発間近で、その画期的な手法は、2型糖尿病患者がインスリン注射を止めることも、同時に可能にしてくれそうです。テキサス大学健康科学センターヒューストン校(現テキサス大学ヘルスサンアントニオ校)でなされた発見は、インスリンを分泌する膵臓細胞の種類を増やすことを可能にしています。
3年以内に臨床試験
UT Health San Antonio team cures diabetes in mice without side effects
UT Health San Antonio researchers have a goal to reach human clinical trials in three years, but to do so they must first test the strategy in large-animal studies, which will cost an estimated $5 million.
テキサス大学ヘルスサンアントニオ校の研究者達は、3年以内に人間を使った臨床試験に漕ぎ着けるという目標を持っていますが、そうするためには、彼らは、推計500万ドルの費用がかかるとされている大型動物研究における戦略を、最初にテストしなければなりません。
その種の研究は、FDA(食品医薬品局)への新薬研究(IND)認可のための申請が先行しますと、共同発明者のブルーノ・ドイロン博士は言いました。
ネズミ実験で実証
科学者達は、米国特許を1月に取得し、UTヘルスサンアントニオ校は、商用化を始めるための会社をスピンアウトする予定です。彼らの方策は、ネズミの糖尿病を治癒しています。”それは完璧でした。”と、UTヘルス内科学助教授ドイロン博士は言いました。”我々は、何の副作用もなしに、1年でネズミを治癒しました。そういった事は今までは不可能でしたが、あくまでもマウスモデルでの話なので、そこのところには注意が必要です。我々は、この事を、内分泌系の生理学がもっと人間に近い、大型動物を使って行いたいと考えています。”
UTヘルス内科学教授で糖尿病科部長ラルフ・デフロンゾ博士は、本特許の共同発明者です。
”膵臓は、β細胞以外に多くの他の細胞型を有していて、我々のアプローチは、それらが、インスリンを、ただしグルコース(糖質)だけに反応して分泌し始めるように、こういった細胞を改質することです。”と、博士は言いました。”これは基本的にβ細胞と言えます。”
Insulin, which lowers blood sugar, is only made by beta cells. In Type 1 diabetes, beta cells are destroyed by the immune system and the person has no insulin. In Type 2 diabetes, beta cells fail and insulin decreases. At the same time in Type 2, the body doesn’t use insulin efficiently.
血糖値を下げるインスリンは、β細胞によってのみ作られています。Ⅰ型糖尿病では、ベータ細胞は、免疫系によって破壊され、人はインスリンを持っていません。Ⅱ型糖尿病では、ベータ細胞が機能不全に陥り、インスリンが減少してしまいます。そのことに加えて、2型糖尿病においては、人の体は、インスリンを効果的に使えなくなってしまいます。
遺伝子を膵臓に組み込む
The therapy is accomplished by a technique called gene transfer. A virus is used as a vector, or carrier, to introduce selected genes into the pancreas. These genes become incorporated and cause digestive enzymes and other cell types to make insulin.
治療は、遺伝子導入と呼ばれるテクニックによって達成されています。ウイルスが、選ばれた遺伝子を膵臓に導入する媒体(キャリア)として使われています。この種の遺伝子は、消化酵素や他の細胞種に組み込まれて、インスリンを生産するようにします。
Gene transfer using a viral vector has been approved nearly 50 times by the U.S. Food & Drug Administration to treat various diseases, Dr. DeFronzo said. It is proven in treating rare childhood diseases, and Good Manufacturing Processes ensure safety.
ウイルスベクターを使う遺伝子導入は、さまざまな病気を治療する目的で、FDAによって50回近く承認されています、とデフロンゾ博士は言いました。それは、レアな小児疾患を治療できることが証明され、適正製造工程が安全性を保証しています。
Ⅰ型糖尿病において拒絶反応を起こすβ細胞とは違って、膵臓の他の細胞群は、ヒトの体の免疫防御と共存することが可能です。”もし、1型糖尿病患者が、こういった細胞達と30、40、50年間共存して、それらからインスリン分泌だけを享受できれば、我々は、不都合な免疫反応が存在しないことを期待できます。”と、デフロンゾ博士は言いました。
秒毎の糖質コントロール
その療法は、ネズミにおいて、正確に血糖値を調節しています。この事は、もし、厳重に監視されていないと、血糖値を下げ過ぎてしまう従来型のインスリン療法やいくつかの糖尿病治療薬を越える、大きな進歩になる可能性があります。
“A major problem we have in the field of Type 1 diabetes is hypoglycemia (low blood sugar),” Dr. Doiron said. “The gene transfer we propose is remarkable because the altered cells match the characteristics of beta cells. Insulin is only released in response to glucose.”
”Ⅰ型糖尿病の分野で我々が抱える大きな問題が、低血糖症(低血糖)です。”と、ドイロン博士は言いました。”我々が提唱している遺伝子導入は、改変細胞が、β細胞の特性にマッチしていることから、注目に値します。インスリンは、ブドウ糖に応答してのみ放出されます。”
人は、少なくとも80%のβ細胞を失うまでは、糖尿病の症状が出ません。”私達は、β細胞の全てのインスリン生産機能を複製する必要はありません。たった20%のこの能力の復元が、Ⅰ型糖尿病の治癒には十分だからです。”と、ドイロン博士は言いました。
3年以内に臨床試験が開始される予定で、試験に成功して認可されれば、糖尿病を完治に近い形で治療可能な、全く新しい糖尿病療法が可能になるみたいです。副作用が全くないので、子供にも安全で、まさに、夢のような新治療法です。気になるのは、そのお値段で、こういった画期的な夢の療法は、恐らく、メチャクチャ高額だと思われ、保険適用外の場合、一部の富裕層だけが恩恵を享受できるという事になりかねません。保険適用内だと、医療保険制度自体の破綻につながりかねないし、願わくは、安価で誰でも利用可能になってもらいたいものです。