The Journal of Nuclear Medicine誌2017年6月号に掲載された論文の中で、研究者達は、画像診断放射線が、成人のがん発症リスクを高めないのは当然で、さらに、子供に対するリスクも全く高めないことも強弁しています。本研究著者達によると、画像診断法によって被曝する放射線などの、ほんの僅かの放射線被曝でさえも、ガン発症リスクを増大させるという、長年信じられてきた考えが、誤った70年前の古い仮説に基づいていて、余計な恐怖心を煽って、患者達が放射線被曝を嫌って、画像診断を忌避する事で、誤診を引き起こしているらしいです。
直線しきい値なし仮説(LNT仮説)
Diagnostic radiation exposure safe for children, experts state
The hypothesis referred to is the linear no-threshold hypothesis (LNT) promoted by Nobel Laureate Hermann Muller in 1946. Muller stated that the dose-response relationship is linear with no threshold dose, i.e., all radiation is harmful, regardless of how low the dose and dose rate.
参照されている仮説、直線無閾値仮説(LNT仮説)は、ノーベル賞受賞者ヘルマン・ミュラー氏によって、1946年に提唱されています。ミュラー氏は、線量と線量率がどんなに低くても、線量反応関係は、線形(直線)閾値なし、つまり、全ての放射線は有害であると主張しています。
ALARA原則/アララ原則
“The underlying intent of lowering future cancer risk, although desirable, goes astray, as the premise is based on the erroneous LNT and the resulting as-low-as-reasonably-achievable (ALARA) principle” asserts Jeffry A. Siegel, PhD, president and CEO of Nuclear Physics Enterprises, Marlton, New Jersey. “The assumption ignores evidence-supported adaptive responses that either repair mutations through enhanced repair enzymes or remove the unrepaired cells by apoptosis [death of cells as part of normal growth] or, most importantly, the immune system.”
”将来的ながん発症リスクを低減するという根本的な目的が、その前提が、誤りのあるLNT仮説に基づいたその結果として生じた、合理的に達成可能な限り低く(ALARA)というアララ原則なので、望ましいことではあるのですが、完全に本来の目的を踏み外しています。”と、マールトン(ニュージャージー州)にあるNuclear Physics Enterprisesの社長兼最高経営責任者のジェフリー・A・シーゲル博士は強く主張しています。”その仮説は、裏付けされている、機能強化された修復酵素を介した突然変異修復や、アポトーシス(正常増殖の一部である細胞死)による未修復細胞の除去、最も重要な免疫機構などの適応反応を完全に無視しています。”
子供は放射線被曝に脆弱
Children are generally considered to be more vulnerable and, therefore, more sensitive to the effects of radiation than adults. Siegel notes, “…much of the current thinking about the risks of ionizing radiation is based on certain interpretations of the Hiroshima/Nagasaki life-span study.”
子供達は、一般的に、大人に比べて脆弱なので、放射線に対する影響も受けやすいと思われています。シーゲル博士は、”現在の電離放射線リスクに関する考えの多くが、広島・長崎の寿命研究の特定の解釈に根差しています。”と、言及しています。
広島・長崎の被曝研究
He says the study is interpreted incorrectly and points out that Japanese children younger than six at the time of the bombings at the end of World War II and exposed to radiation up to 200 mSv showed no significant difference in adult-onset cancers when compared with a control group. Siegel adds, “Supportively, the French Academy of Sciences reported that these data provide evidence for protective adaptive responses and no valid evidence for harm below 100 mGy.”
彼は、その研究が、間違って解釈されていると言い、第2次世界大戦末期の原爆投下当時に6歳未満で、最大で200mSvの放射線を被曝した日本の子供達が、統制群と比較した場合、成人発症がんと有意差を示していないことを指摘しています。博士は、”補足的に、フランス科学アカデミーが、こういったデータが、保護的な適応反応の証拠を提供し、100mGy未満の放射線被曝の有害性に対する有効な証拠を何も提供していない事を報告しています。”
Nuclear medicine and CT radiation doses are low, and Siegel cites studies that show “initial radiation-induced damage is generally repaired or eliminated in a matter of hours by the body’s adaptive responses.” In addition, older children have a stronger immune system than adults. Siegel says, “low-dose radiation has been shown to stimulate the immune system to reduce cancer rates.”
核医学とCTの放射線量は低く、シーゲル博士は、”初期放射線誘発損傷は、人の体の順応的反応によって、数時間のうちにほとんど修復されるか除去される”ことを証明している、いくつかの研究を引用しています。加えて、年長児は成人よりも強力な免疫機構を持っています。”低線量放射線は、がん罹患率を減少させるために免疫系を活性化する事が証明されています。”
Why not err on the side of caution by continually striving to lower radiation exposure? Siegel states, “…the obsession over lowering radiation dose is a futile and laborious attempt to minimize what is, in fact, a nonexistent risk.” He emphasizes the importance of diagnostic quality and says, “Accurate information about low-dose radiation is the only way to undo fear. …Radiophobia is detrimental to patients and parents, induces stress and leads to suboptimal image quality or avoidance of imaging, thus increasing misdiagnoses and consequent harm while offering no compensating benefits.”
放射線被曝を減少させるために、絶えず尽力することによって慎重過ぎるぐらい慎重になることが何故ダメなのか?シーゲル博士曰く、”放射線量減少に対する脅迫観念は、実際には存在しないリスクを最小限にするための無益で無意味な試みです。” 博士は、診断上の質の重要性を強調していて、”低線量放射線に関する正確な情報が、放射線被曝に対する恐怖心を取り去るための唯一の方法で、放射線恐怖症は、患者と親にとって有害で、ストレスをもたらし、とても最適とは言えない画質や、撮像を忌避する原因になり、ひいては、誤診とその結果として生じる損害を増加させる一方で、補償的な利益は何も提供してくれません。”と言っています。
医療被曝によるがん発症リスクについては、科学者による見解の相違が大きく、危険と言う人もいれば、無闇にリスクを煽るべきではないという人さえ存在します。実際のところは、発症リスクは増えたとしても、1万人に数人程度で、たとえ癌を発症したとしても、全てが致命的ではないので、そう考えた場合、確かに恐れる必要は全然ないのかもしれません。事故が怖いからと言って、家に引きこもって外に出なかったり車に乗らないという人がいないように、がんが怖いからと言って、画像診断を忌避する行為は、ある意味、愚の骨頂であるともいえるのかもしれませんが、しかし、頭部CT検査による水晶体への被曝が50mGyという数字が低線量被曝なのかどうかは意見が分かれます。ここでは100mGy未満の低線量被曝が人体には与える影響に関しては何の証拠もないと言っているので、安全なのかもしれません。さらに放射線被曝による損傷は数時間以内にほとんど修復・除去されるらしいので、さらに安心感があります。
この研究によると、200mSv・100mGy未満の低線量放射線被曝は有害だということを証明する証拠がないので、子供も安心してCT検査を受けましょうということみたいです。検査で受けた細胞損傷は、人体の持つ適応反応によって、数時間以内にほぼ修復されるので、累積的な蓄積ダメージの心配もしないでいいみたいです。まぁ、あくまでも、1つの意見として聞いておけばよいのではないでしょうか。個人的にはCT検査を恐れる必要はないかと思っています。