ビスマスを使った新素材がスピントロニクスを可能にする

室温で、端は導電性、内部は絶縁体という性質を持つ、将来有望な新しい極薄物質を、ヴュルツブルク大学の物理学者達が、開発に成功しています。位相絶縁体(トポロジカル絶縁体)区分のその物質は、現在、国際的な固体研究の注目の的になっています。この種の物質は、電子が原子との強い結合を維持し続けているので、内部が電気的に絶縁しています。しかし、その表面では、量子効果によって電気を伝導できます。

スピントロニクスの夢を実現

Breakthrough in spintronics

Additionally, the electron’s spin orientation is capable of transmitting information very efficiently. It is protected against scattering when moving through these surface channels. With these properties, topological insulators could make an old dream come true—direct spin-based data processing, or so-called spintronics.

加えて、電子のスピン配向は、非常に効率的に情報を伝達できます。電子は、この表面チャネルを進む時、散乱から保護されます。こういった特性により、位相絶縁体は、ダイレクトスピンデータ処理(所謂スピントロニクス)という、積年の夢を実現させる可能性を秘めています。

Until now, however, there has been one major obstacle to using such surface channels for technical applications: “As the temperature of a topological insulator increases, all quantum effects are washed out and with them, the special properties of the electrically conducting edges,” Dr Jörg Schäfer explains; he is a private lecturer at the Chair of Experimental Physics 4 of the University of Würzburg.

しかし、現在まで、その種の表面チャネルを技術的応用に用いることに、1つの大きな障害が存在していました。”トポロジカル絶縁体の温度が上昇すると、全ての量子効果が、導電性エッジの特性と共に消失します。”と、Jörg Schäfer博士は説明します。

この理由から、全ての既知の位相絶縁体は、エッジチャネルの量子的性質を研究できるようにするのに、通常、摂氏マイナス270度の極低温に冷却する必要があります。”もちろん、そういう条件は、超高速エレクトロニクスや量子コンピュータなどの潜在用途には、あまり実用的ではありません。”と、物理学者(シェーファー博士)は言います。

ヴュルツブルク大学チームは、現在、この問題を、エレガントに迂回するための、全く新しいコンセプトを提起し、彼等の研究成果を、サイエンス誌の最新号に掲載しています。

単層ビスマス原子

The Würzburg breakthrough is based on a special combination of materials: an ultra-thin film consisting of a single layer of bismuth atoms deposited on a silicon carbide substrate.

今回の画期的な発見は、炭化ケイ素基板に被着した、ビスマス原子の単層から成る極薄フィルムという、物質の特殊な組み合わせが肝になっています。

What makes this combination so special? “The crystalline structure of the silicon carbide substrate causes the bismuth atoms to arrange in a honeycomb geometry when depositing the bismuth film—very similar to the structure of the ‘miracle material’ graphene, which is made up of carbon atoms”, Professor Ralph Claessen explains. Because of this analogy, the waver-thin film is called “bismuthene”.

何がこの組み合わせをそんなに特殊にしているか?”炭化ケイ素基板の結晶構造が、ビスマス薄膜を被着すると、炭素原子から作られる、ミラクルマテリアルのグラフェン構造に非常に良く似たハニカム構造に、ビスマス原子を配列します。”と、ラルフ・クラッセン教授は説明しています。このアナロジーにより、波状薄膜は、ビスマセンと呼ばれています。

ビスマセンとグラフェンの違い

しかし、グラフェンと比べると、1つの決定的な違いがあって、”ビスマセンは、基板に化学結合を形成します。”と、Ronny Thomale教授は言います。それは、必要な電子物性を持った物質を提供するための、新しいコンセプトの中心的な役割を果たします。この事は、コンピュータベースのモデリングによって明らかにされています。”普通のビスマスが、導電金属である一方で、ハニカム単層は、室温やそれ以上においても、明確な絶縁体のままです。”と、教授は付言しています。人工的に必要な初期条件を作り出すために、重いビスマス原子は、同様に絶縁性を持つ炭化ケイ素基板と、巧みに結合されています。