アルカディア:ジャムとライスプディングのエントロピーな関係

Have you ever tried turning the spoon back after stirring jam into a rice pudding? It never brings the jam back into the spoon.

この英文の意味が全く分からなかったんですが・・・。rice pudding(ライスプディング)はミルク粥のことで、この場合のjamは、jam into = 押し込む、詰め込む、という意味で使われているのではなく、stir ~ into ・・・ = ・・・を~に入れて掻き混ぜるの意味で、この部分だけを訳すと、「ジャムをミルク粥に入れてかき混ぜた後スプーンで逆方向に掻き混ぜる」みたいな訳になるんだろうと思うんですが、その後の英文、「ジャムをスプーンに戻せない」というのがイミフとしか言えません。この文を訳すと、「あなたは、ミルク粥にジャムを入れてかき混ぜた後で、スプーンを逆方向にかき混ぜた事はありませんか?その行為は、ジャムを決してスプーンに戻すことはありません。」全く意味が分かりません。

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ジャムとライスプディング

よくよく考えると、前記の英文の言いたいことは、ビデオの逆再生みたいに、逆のことをやれば元に戻せるはずだけど、実際には元には戻せないと言うことをいいたいんだという結論にたどり着きました。ミルク粥にジャムを入れて掻き混ぜるシーンをビデオで撮って、それを逆再生すれば、確かにジャムはスプーンに戻ります。しかし、実際には、手動で逆再生みたいなことをしても、ジャムは絶対にスプーンには戻りません。それどころか、逆方向にかき混ぜるという行為が、余計にジャムをライスプディングに溶け込ませていきます。

この文の後の、This ever-increasing disorder is linked to a notion called entropy.という英文が大いにヒントになります。「この増え続ける無秩序は、エントロピーと呼ばれる概念と関係しています。」つまり、ジャムとミルク粥が混ざる前の状態がordered state(秩序状態)だとすれば、かき混ぜた後は、disordered state(無秩序状態)で、かき混ぜれば混ぜるほど、どんどん無秩序化していく、みたいな感じだと思われます。

参照サイトHow small does your rice pudding need to get when stirring jam into it?

Arcadia (play)

ググってみると、このジャムとライスプディングの例え話は、アルカディアという芝居に出てくる話のようです。アルカディアは、イギリス人劇作家トム・ストッパード氏によって1993年に書かれた芝居で、19世紀(過去)と20世紀(初演時の現在)で、物語が同時進行的に進んでいく科学をモチーフにした芝居のようです。このトム・ストッパード氏は、舞台「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」、「コースト・オブ・ユートピア」、「恋に落ちたシェイクスピア」などの脚本で、日本でもかなり人気がある脚本家のようです。このアルカディアという芝居は、去年日本でも初上演されたということが、このサイトに載っていました。

ストッパード作品の中でも、最も美しく繊細な劇構造をもつと言われている本作の舞台は、英国の豪壮なカントリーハウス。この屋敷の居間で、19世紀の世界と、約200年後の現代が、時には交互に、時には複雑に交錯し合いながら、物語が進行していきます。同じ舞台上に存在しながら、実際には時空を隔てた二つの世界…。その中で、「ある謎の追究」をめぐり、決して交わることのない「二つの時代の人物たち」が、スリリングに相互に作用し合いながら、絶妙な美しいハーモニーを奏でるのです。

かなり面白そうな芝居です。Shakespeare in love(恋に落ちたシェイクスピア)は、映画セブンで名を挙げたグウィネス・パルトローが、アカデミー主演女優賞を獲得した作品で、かなり印象に残っているのですが、ストッパード氏が脚本家だったのは知りませんでした。

匙を逆回転しても元に戻らない

Arcadia (play)

Thomasina starts asking why jam mixed in rice pudding can never be unstirred, which leads her on to the topic of determinism and to a beginning theory about chaotic shapes in nature.

トマシナは、ライスプディングの中に混ぜられたジャムは、何で、混ぜた方向と逆方向にかき混ぜても元のジャムに戻らないのかと質問し始め、そしてそのことが、彼女に、決定論に関するテーマや、自然界の無秩序な形に関する初歩理論に目を向けさせます。

a beginning theory about chaotic shapes in natureは、カオス理論(chaotic theory)のさわりみたいに訳してもいいと思います。

これは、13歳の天才少女トマシナと、彼女の家庭教師のセプティマスの会話の一部で、混合されたジャムとミルク粥についての話です。このサイトに詳しい説明が載っています。

When you stir your rice pudding, Septimus, the spoonful of jam spreads itself round making red trails like the picture of a meteor in my astronomical atlas. But if you stir backwards, the jam will not come together again. Indeed, the pudding does not notice and continues to turn pink just as before. Do you think this is odd?

セプティマス、ライスプディングを掻き混ぜると、スプーン1杯のジャムは、私の天体図にある流星の絵のように、赤い尾を引きながら円を描いて広がっていく。でも、スプーンで逆方向にかき混ぜても、再びスプーン1杯のジャムには戻らない。実際には、ミルク粥は、全くお構いなしに以前と同じように、ただピンク色に変わっていくだけ。不思議だと思わない?

この話を知っていれば、ワケワカメの英文でも何でもなかったわけで、結局は自分が無知・無教養だっただけでした。熱いコーヒーを放置すると冷めますが、冷めたコーヒーを放置しても再び元の温度には戻りません。同様に、スプーンで混ぜたジャムは、混ぜる方向を逆にしても元のジャムには戻りません。このことが、戯曲の中で、エントロピーの説明、あるいは、熱力学第二法則(second law of thermodynamics)の説明をしているそうです。

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