格差社会は、日本だけの問題ではなく全世界的な問題です。お金がないという事が、個人の健康に重大な悪影響を与えることを、数々の科学的な研究が示唆しています。四六時中お金に不自由を強いられることが、個人の精神を蝕んで健康を害するだけではなく、精神までも破壊してしまう可能性があります。貧困地区に犯罪が多いのがそのことを如実に物語っています。
金欠が個人の自由を奪う
“In the good society all of its citizens must have personal liberty, basic well-being, racial and ethnic equality, the opportunity for a rewarding life. Nothing, it must be recognized, so comprehensively denies the liberties of the individual as a total absence of money. Or so impairs it as too little.”
John Kenneth Galbraith ‘The Good Society: The Human Agenda’
良い社会では、全ての国民が、個人の自由、基本的福祉、人種的・民族的平等、実りある生活を送る機会を与えられなければなりません。認識されなければならないことは、無一文であることほど、個人の自由を全面的に否定するものはないということです。または、お金が不足することほど、その自由を損なうものはないということです。
Nothing is so A as B = BほどAなものはない、Nothing is so difficult as ~なら、〜ほど難しいものはないという意味のイディオムの変形型です。
A = comprehensively denies the liberties of the individual 個の自由を完全否定する
B = a total absence of money 金の完全欠損、金欠であること
Or so impairs it as too little = Or (nothing) so impairs it as too little (money).
it = the liberty (of the individual)
これは、ジョン・ケネス・ガルブレイス氏の名言ですが、確かに、お金に苦労することほど個人の自由が剥奪されることはありません。金不足から金策に追われれば、お金を得る以外には何もできなくなるし、最悪の場合、金欲しさの犯罪に走って刑務所行きです。金のためならなんでもするという人間のせいで、個人の自由までをも剥奪されかねません。
お金を愛することは諸悪の根源
貧困が個人の自由を奪う一方で、貧困を作り出している格差社会について考えた場合、例えば、聖書の一節にある、The love of money is the root of all evil. 金銭を愛することは諸悪の根元とは本当に良く言ったものだと思います。格差社会の根元は、お金を愛するのか人を愛するのかという選択肢において、富裕層や為政者達が常に金銭を愛する(私腹を肥やす)方を選択し続けることにあるからです。シンドラーのリストで、お金か人の命かの選択をオスカー・シンドラー氏が迫られた時に、もし、氏が、お金の方を選んでいたとしたら、今現在、彼の名前を知る人間はほとんど存在しなかったはずです。シンドラー氏が、最後に嗚咽しながら言った、”This pin. Two people. This is gold. Two more people. He would have given me two for it, at least one. One more person. A person, Stern. For this. I could have gotten one more person… and I didn’t! And I… I didn’t!”という言葉は非常に重いと思います。