He is the rich man in whom the people are rich, and he is the poor man in whom the people are poor; and how to give access to the masterpieces of art and nature is the problem of civilisation. – Emerson
Ralph Waldo Emerson (ラルフ・ワルド・エマーソン)のこの名言は、人を豊かにする人間が、本当に豊かな人間であるということを言っています。in whom the people are rich = the people are rich in himで、人々はその人にあって豊かだ、つまり、人々を豊かにする人が豊かな人間と言っています。逆に、人々を貧しくする人間は貧しい人間だと言っています。
エマーソンの時代は、War of 1812が終わり、アメリカの成長期にあって、貧富の差、つまり、持つ者と持たざる者の差が拡大していました。持たざる者の中には奴隷が含まれる時代でもありました。エマーソン氏は、金持ちには周囲の人々を豊かにするという義務があり、富を蓄積して周りに撒かない人間は、精神的貧困者であると糾弾しています。周囲が貧困化していく過程で、1人だけが富を蓄積していけば、それは成功とは言わず、搾取と言うべきで、本来なら、そういう人間は、社会全体から徹底的に糾弾されるべきなのです。社会的成功の尺度は、個人の財ではなく、その人間を取り巻く人々の豊かさで測られるべきなのです。例えば、社長だけが非常に豊かで、社員が貧乏な会社は、社長が社員を搾取していると言え、その社長は、物質的には豊かであっても精神的には貧しい可哀想な人間だということです。
経済が悪化するのは、一部の人間達が金を溜め込みすぎるからで、それは、金という血液の循環が阻害されることにより、周囲の細胞が破壊されることに似ています。政府・中央銀行の役目は、血液の流れを阻害している血栓を取り除くことで、輸血することではありません。つまり、富の強制再配分が必要だということです。お金の生きた使い方を知らない強欲な守銭奴に代わって、政府が、生きたお金の使い方をすることが本来あるべき姿だったのですが、今は、その真逆に、貧しい人々から強制的に徴収したお金を、一部の貪欲な人間たちにばら撒くという、全くの本末転倒なことをしています。
かつての日本は、物質的には非常に貧しかったのですが、精神的には非常に豊かでした。そのことが、日本を短期間の内に世界第二位の経済大国に押し上げたのだと思っています。しかし、現在は、日本の富裕層の多くは、物質的には世界屈指の豊かさを謳歌していますが、精神的には貧困の極地にあると言えます。人類の過去において、この精神的貧困が招いた数多の悲劇を再び繰り返さないためにも、我々は決してそのことを忘れてはいけないのです。