次世代超高速マイクロプロセッサのチップ内通信速度の究極限界

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モスクワ物理工科大学の研究者達が、ナノスケール光電子回路内のphotonic signal (光信号)とplasmonic signal (プラズモン信号) の増幅が原因で起こるノイズのレベルを正確に予測するための方法を提案しています。Physical Review Applied誌に掲載された彼等の研究論文で、その科学者達は、新興光電子マイクロプロセッサの最大限度のデータ転送速度を見極めるのと、ナノフォトニックインターフェースの帯域幅の本質的限界を見い出すために利用することができる手法について説明しています。

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表面プラズモンポラリトン

The speed limit for intra-chip communications in microprocessors of the future

Surface plasmon polaritons (表面プラズモンポラリトン) は、電磁場と結合した金属表面上のcollective electron oscillations (集団的電子振動)です。表面プラズモンは、compressed quantum of light (圧縮した光子)と見なされることができ、その事が、何故プラズモンデバイスが、多用途向けに有望視されているのかを説明してくれています。それらは、ナノエレクトロニクスコンポーネントとほぼ同じくらいコンパクトですが、同時に電線と比べ、最大 four orders of magnitude (4桁違い=1万倍) 高速なデータ転送速度を可能にします。チップ上の電気相互接続の一部をプラズモニック(ナノフォトニック)コンポーネントに置き替えることでさえも、マイクロプロセッサの性能に対して、喉から手が出るほど欲しいブーストを与えるはずです。

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プラズモニクス

プラズモニクスが現在直面している主な障害は、シグナル減衰です。高損失のおかげで、表面プラズモンは、active plasmonic waveguides(アクティブプラズモニック導波路)中だけでしか長い距離を伝播できません。そういった導波路は、送信機から受信機へプラズモニック信号をガイドするだけではなく、デバイス中を流れる電流のエネルギーを使って信号を増幅します。この付加されたエネルギーが、信号損失を補い、表面プラズモンが、ちょうど、電池による電力供給が水晶時計を作動し続けるように、導波路に沿って自由に伝播することを可能にしています。

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信号対雑音比:SN比

しかし、信号増幅と損失補填に付随した根本的な問題が存在しています。全ての増幅器は、入力の増幅を強めているだけではなく、望まないランダムな信号も多少加えています。物理学者達は、こういった信号をノイズ呼ばわりしています。熱力学の法則に従えば、システムから全てのノイズを除去することは不可能です。原信号のひずみは、大部分はノイズによって決定され、その事が、根本的にデータ転送速度を制限していて、もし情報がより高速度で転送された場合、受信ビットにおけるエラーの原因になってしまいます。データ転送速度を高めるために、signal-to-noise ratio (信号対雑音比:SN比)を向上させる必要があります。この比率の重要性は、雑踏で誰かと話したり、ラジオ放送局のチューニングをした経験を持つ人なら誰でも分かります。

”ノイズは、携帯電話とテレビセットから、高速インターネットのバックボーンである光ファイバーチャネルに至る、一般家庭にある全てのデバイスのほぼ半分で重要な役割を果たしています。信号増幅は、必然的にSN比を減少させます。実際、増幅器がより多くの利得を供給すればするほど、あるいは、我々のケースでは、増幅器が補う必要がある信号損失が大きければ大きいほど、それが産み出すノイズの度合いも高くなっていきます。この問題は、特に、利得を持ったプラズモン導波路において顕著です。”と、ドミトリー・フェディアニン氏が言っています。

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光子ノイズ

Physical Review Applied誌に掲載された最新の研究が、プラズモン信号が半導体デバイスで増幅されると発生する、photonic noise(光子ノイズ)という、特殊なノイズを扱っています。それの主な原因は、所謂自然放出です。光信号が増幅されると、光波の出力は、2エネルギー状態間の差異が光子として放出される、高エネルギー準位から低エネルギー準位への電子の遷移によって増加します。この放出は、誘導されたり自然発生したり、どちらの可能性も有り得ます。

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広域スペクトルノイズ

誘導放出が信号を増幅するのに対し、自然放出はさまざまなエネルギーのランダム量子を産み出します。つまり、広域スペクトルを持ったノイズです。ノイズは、信号の周波数要素と自然放出(この現象はビートとして知られています)の干渉に起因する信号電力におけるランダムなゆらぎとして観測することができます。増幅器によって与えられる利得のどのような増加も、ノイズレベルを高め、誘導放出と自然放出双方のスペクトルを広げてしまいます。光と個々の原子の相互作用を説明することが意図されている、量子光学の定評のあるアプローチの適用性は、研究対象システムにおけるスペクトルが広範囲になるにつれ減少します。ナノスケールの高利得増幅のケースに取り組むために、研究者達は、基本的にゼロから研究を始める必要がありました。

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利得スペクトル

”我々は、互いにめったに交わらない、物理学の3分野(量子光学、半導体物理学、光電子工学) 間の溝を埋めなければなりませんでした。我々は、広い利得スペクトルを持つ活性媒体が組み込まれている構造体において、光子雑音を説明することが可能な理論的枠組みを開発しています。この技法は、当初、利得付きプラズモン導波路のために考え出されたのですが、変更無しで、全ての光増幅器と類似システムに適用することが可能です。”と、フェディアニン氏が言っています。

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エラー訂正

雑音は、送信中にエラーを引き起こし、エラーコレクションアルゴリズム(誤り訂正演算手順)を実装する必要があるせいで、データ転送速度を著しく低下させてしまいます。ハードウェアに関する限り、エラーコントロールには、エラー訂正を認識する追加のオンチップコンポーネントも必要になり、新しいデバイスをデザインして製造することをはるかに難しいものにしてしまっています。

”もし、スペクトラル特性はもちろん、nanophotonic communication channel (ナノ光通信チャネル)におけるnoise power (ノイズ電力)を我々が知っていれば、その通信チャネル間のデータ転送の最大速度を見積もることが可能です。さらに、私たちは、デバイス操作の特定動態を選んで、光フィルタリング技術と電気フィルタリング技術を使うことで、ノイズ量を減らす方法を見出すことができます。”

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シグナル減衰/信号損失

今回提案された理論は、同一チップ上でエレクトロニクスとフォトニクスの利点を組み合わせた新しいクラスのデバイスを提案しています。その種のチップでは、プラズモンコンポーネントは、プロセッサコアとレジスタ間の超高速通信用に利用されます。signal attenuation (シグナル減衰)は、以前は、チップの主要障害候補と見られてきましたが、ロシア人研究者達による最近の研究が、信号損失が補償されるのと同時に、ノイズ問題に対処するための技術が必要なことを示しています。そうでなければ、その信号は、自然放出によって、簡単にかき消されてしまう可能性があり、そのチップを事実上、全く使い物にならなくしてしまいます。

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アクティブプラズモニック導波路

研究者達によって実行された計算が、断面がたった200×200ナノメートルしかないアクティブプラズモニック導波路が、5ミリメートルの距離にわたる信号を伝送するのに使用できることを実証しています。日常生活から見た距離感覚から言えば、この距離は大したことがないように見えるかもしれませんが、この数値は、実際には、今日のマイクロプロセッサにとってはかなり一般的です。データ転送レートがどうかというと、それらは、スペクトラルチャネル、換言すれば、光の特定波長用データ通信チャンネル毎に10 Gbit/sを超えています。もし、広帯域インターネットを含む全ての光通信ラインの標準になっている、wavelength-division multiplexing (波長分割多重方式、WDM)技術が使われれば、単一ナノ規模導波路が、数十のこういったスペクトルチャネルによって使われることができることは言うまでもありません。分かりやすく言えば、似たような寸法の電気相互配線(銅伝導体)を介したデータ転送の最大速度は、たったの20 Mbit/sに過ぎず、少なくとも500倍遅いです!

最初はアルミだったのが今は銅が使われ、金・銀は高価過ぎて使えないので、将来的に、このアクティブプラズモニック導波路を、チップ内電気相互接続に使うことができるようになれば、単純計算で、今より500倍の速度向上が望めることになります。

科学者達は、ノイズ電力とノイズ特性が、利得付きプラズモン導波路のパラメーターによって決まる仕組みを明らかにし、ノイズレベルが、ナノ光インターフェースの最大帯域幅を確保するために減少できることを示しています。彼等は、単一デバイスに高データ転送速度と比較的高めのエネルギー効率と共に、微小サイズと低エラー件数を組み合わせる事が可能な事を証明し、次の10年間で起こる可能性がある、マイクロエレクトロニクスにおける、plasmonic breakthrough (プラズモニックブレークスルー)を予兆しています。

利得付きプラズモニック導波路、あるいは、アクティブプラズモニック導波路は理論的には現在の銅配線に比べ、1万倍のデータ転送速度を可能にし、CPUコアとレジスタ間のデータのやり取りを超高速化して、マシン性能を飛躍的に向上させることができるみたいです。今回の研究では銅線の500倍のデーター転送速度を実証しているので、今後研究が進めばさらに高速化される可能性がありそうです。次世代の超高速CPUの理論的なチップ内の究極限界データ転送速度は、現在の銅配線の1万倍ということでいいのかもしれませんが、それがそのままCPU性能の向上につながるわけではなく、他のトランジスタやメモリ等の部品の性能にも依存するので、こっちの方の性能が向上すれば、相対的なマシン性能は、現在の比ではないことだけは確かです。

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