PTSDや他の不安神経症に関する新しい発症機序が発見される!

アラバマ大学バーミンガム校の神経生物学者Lynn Dobrunz博士は、心的外傷後ストレス(PTSD)を発症させることができる経験の形態である、ストレス誘導不安が、忌まわしい記憶が形成される脳の領域の海馬における回路機能に影響を与える仕組みを発見しています。博士と同僚等による研究は、分子回路と神経ペプチドYと呼ばれている脳内信号伝達分子の行動的影響の間の知識の大きなギャップを埋めてくれています。Journal of Neuroscience誌に掲載された彼等の研究結果は、不安障害を持つ患者達に対し、適切な脳経路における神経ペプチドY放出を増加させるための、新しい治療標的のための道を開いてくれる可能性を持っています。

神経ペプチドY

Researchers detail novel underlying mechanism involved in PTSD and other anxiety disorders

神経ペプチドY濃度を増す事が、不安緩和効果を産み出すのは良く知られています。対照的に、PTSDや他の不安神経症を患う人達は、この神経ペプチドY濃度が減少しています。現在まで、神経ペプチドY濃度変化が、不安挙動を増減させている回路機能をどのように変えているかのメカニズムは知られてはいませんでした。そのメカニズムを説明することに加えて、UAB研究者達は、ネズミを捕食者の匂い (狐の糞に含まれる化合物) にさらす事のストレスが、神経ペプチドY放出を妨げ、その事が不安を大きくしている可能性があることも同時に発見しています。

海馬のCA1領域

彼等の研究で、博士と同僚等は、海馬のCA1領域に焦点を当てました。CA1は、学習と記憶に携わり、神経ペプチドY放出能を持つ独特な神経細胞群を有しています。

Two neural pathways activate CA1 — the Schaffer collateral, or SC, pathway and the temporoammonic, or TA, pathway. While both pathways are involved in fear learning, the TA pathway has been shown to be particularly sensitive to stress. Using a novel, physiologically based assay, the researchers were able to send a train of electrical pulses through these pathways to stimulate the release of endogenous neuropeptide Y from three subtypes of neurons in CA1.

「シャファー側枝(SC)経路とアンモン角(TA)経路の二つの経路がCA1を活性化させています。両経路が恐怖学習に関わっている一方で、TA経路は、ストレス特に敏感であることを示しています。今までにない生理学に基づいた分析を使う事で、研究者達は、CA1 の3種のニューロン亜型からの内在性神経ペプチドY放出を刺激するために、これらの経路を経由する一連の電気パルスを送信することができました。」

シャファー側枝経路とアンモン角経路

この放出は、CA1の興奮性神経細胞にくっついたTAシナプスの可塑性(特に短期促進の抑圧)に変化を引き起こしました。endogenous release (内因性放出)は、SCシナプスの可塑性も同時に変えましたが、これには、SCとTAの両経路の活性化が必要でした。重要なのは、研究者が、捕食者臭でストレスを与えたネズミ(PTSDのマウスモデル)が、TA経路での内因性神経ペプチドYの放出を減少させ、TAシナプスの機能を変えてしまうことで、ストレスに応答する海馬のCA1領域の回路機能障害に寄与していることを発見したということです、とDobrunz博士等は言っています。

From this study and what others know about the hippocampus, the UAB results suggest the following train of events: 1) The stress of smelling a predator scent impairs neuropeptide Y release. 2) This reduction in neuropeptide Y release enhances short-term plasticity of TA synapses. 3) The enhanced plasticity, in turn, boosts the strength of that pathway to drive more spiking of CA1 nerve cells. 4) Increased spiking alters the hippocampal output, a changed output that may increase the consolidation of fear learning.

「この研究と海馬についての他の知識から、UABの研究結果は、以下の一連のイベントを示唆しています。1) 天敵の匂いを嗅ぐことによるストレスが、神経ペプチドY放出を減少させる。2)神経ペプチドY放出におけるこの減少が、TAシナプスの短期可塑性を高める。3)可塑性強化が、続いて、CA1神経細胞のより多くの発火をもたらすためにその経路の強度を高める。4)発火増加が、海馬の生産活動を変えてしまう(恐怖学習の強化を深刻化させる可能性がある出力変更)。」

ストレスが脳に与える影響の仕組みの一部が、ネズミを使った実験で解明されたようですが、人によってストレスへの応答が違うのも、結局はこの神経ペプチドYとやらの放出量が関わっているみたいで、さらに、将来的に、今回の研究で使われた画期的な分析手法を利用した、この神経ペプチドYが、てんかん、うつ病、統合失調症に与える影響の研究も行われる可能性があるようです。