がん転移:癌細胞が血管壁を通り抜けて転移する仕組み

血管は癌増殖と転移に決定的に重要な役割を演じています。血管の内壁上皮にある細胞(内皮細胞:endothelial cells)と癌細胞は、互いに蜜に連絡を取り合い相互に影響し合っています。アンドレアス・フィッシャー氏と彼の同僚等は、こういった相互関係を研究しています。医療研究者のフィッシャー氏は、ドイツがん研究センターヘルムホルツ大学とハイデルベルク大学マンハイム医学部のジュニアリサーチグループを指揮しています。

信号伝達分子ノッチ

Reprogrammed blood vessels promote cancer spread

Fischer and his team had found surprisingly high levels of the activated form of a signaling molecule called Notch in blood vessels of tumors. In vessel lining cells from lung, breast and bowel tumors, they found significantly higher levels of the activated receptor than they did in the healthy organs. The researchers observed that the higher the levels of Notch activation were in the tumor endothelium, the more the cancer had already spread and the poorer was the prognosis for the patients.

フィッシャー氏と彼のチームは、腫瘍の血管に、驚くほど高いレベルのノッチと呼ばれる信号伝達分子の活性型を見出しています。肺から胸や腸管に至る腫瘍の血管内皮細胞において、彼等は、健康的な臓器に比べてはるかに高いレベルの活性化受容体を発見しています。研究者たちは、腫瘍内皮におけるノッチ活性化のレベルが高いほど、癌が既にそこら中に転移しているので、患者の予後が芳しくなくなることに気付いています。

受容タンパク質ノッチ活性化

Activation of the receptor protein Notch by its binding partners is a key communication pathway for signal exchange between neighboring cells. Starting from nematodes over insects through to man, Notch regulates the development of organs during embryonic development. In adults, the signaling protein regulates, among other things, the activity of blood stem cells.

結合パートナーによる受容タンパク質ノッチの活性化は、隣接する細胞間の信号交換のための主要な通信経路になっています。線虫から昆虫を越え人に至るまで、ノッチは、胚の発生過程で、臓器の発達を管理しています。成体においては、そのシグナリングタンパク質は、数あるの中で特に、血液幹細胞の活性を制御しています。

数年前、癌研究者達は、既に、異常なノッチシグナリングが、例えば、白血球を白血病細胞へのように、細胞を癌化させることを証明できています。フィッシャー氏と同僚等は、腫瘍微環境における細胞のノッチ活性が、癌をも左右している事を、現在、初めて立証しています。

フィッシャー氏達は、腫瘍細胞自身が、内皮細胞との直接接触におけるノッチ活性化に関与していることを、ネズミを使って証明しています。腫瘍細胞は、自分自身の目的に合わせて、血管壁細胞を再プログラムし、それによって、体中に広がる道を開いているようです。腫瘍内皮に活性化したノッチが多いほど、より多くの癌細胞が血流に乗って、肺転移を形成します。

驚くべきことに、ガンを持ったネズミのノッチ活性化は、腫瘍内の血管に限定されず、肺の内皮細胞にも影響を及ぼしていました。その腫瘍は、自身の転移による入植のための土壌を準備する(転移ガンを形成するための土壌作りをする)、信号伝達物質を放出しているようです。

血管細胞接着分子-1

As a result of Notch activation, endothelial cells increase their production of a contact molecule called VCAM1. This protein acts like a snap fastener that enables the cancer cells to attach to the vessel wall and prepare the passage. In addition, activated Notch makes it easier for cancer cells to get into the bloodstream by making certain structures with sealing function between endothelial cells more permeable. Finally, activated Notch also causes the endothelial cells to produce chemical messengers that recruit tumor-promoting immune cells into the tumor.

ノッチ活性化の結果として、内皮細胞は、VCAM1(vascular cell adhesion molecule-1:血管細胞接着分子-1)と呼ばれる接着分子の生産を増やします。このタンパク質は、癌細胞が血管壁にくっついて通過準備する事を可能にする、留め金のような働きをしています。加えて、活性化ノッチは、内皮細胞間の浸透性を高めるシーリング機能を使って、ある種の構造を作り出す事で、癌細胞がより簡単に血流に入れるようにしています。また、活性化ノッチは、内皮細胞に、発癌促進性免疫細胞を腫瘍にさせる化学的メッセンジャーを作り出させてもいます。

内皮細胞の再プログラミング

”まとめると、今回の研究結果は、腫瘍細胞が、ノッチを活性化する事で、自分の都合の良いように内皮細胞を再プログラミングすることによって、いろいろなやり方で体内に広がっていることを、非常に明確な図を示しています。”とフィッシャー氏は要約しています。”こういった訳で、我々は、この破局的な機序を阻害できないかどうかを見付けたかった訳です。”

The scientists blocked Notch in mice using an antibody that is currently being tested in early preclinical trials and thus were able reduce the colonization of the lung by cancer cells. A blockade of the contact molecule VCAM1 with an antibody also resulted in less metastases in the lung and lowered the invasion of the tumor by cancer-promoting immune cells.

研究者達は、早期前臨床試験で現在テストされている抗体を使って、ネズミにおいてノッチを阻害することで、肺への癌細胞定着を減少させることに成功しています。接着分子VCAM1と抗体との接着を阻害することが、肺への転移を減らすことももたらしていて、また、発がん性免疫細胞による腫瘍の侵入を少なくしてもいます。

”ノッチは、万能信号伝達分子で、この事が、生命過程に干渉することなしに、それに治療的な作用を与えることを困難にしています。”とフィッシャー氏は言いました。”しかし、遮断抗体の限定的な短期の使用が、腫瘍の危険な転移を抑制するための前途有望なアプローチになる可能性があり、これを達成することが、我々の今後の研究の目的でもあります。”

ノッチを阻害することでガン転移を抑止できるみたいですが、これを阻害することで、多くの不都合が生じてしまうみたいです。ノッチの短期限定的な阻害が、癌細胞の転移を防ぎ、転移しないうちに、ガンを破壊することで、癌の完治が可能になるっぽいです。