マンチェスター大学とブリストル大学の研究者が、鎮痛に関わる信号を認識可能にする、人工細胞情報伝達システムの開発に成功しました。マンチェスター大学の研究チームを率いたシモン・ウェブ博士は、今回の成功が、通常の情報通信経路を迂回できる可能性がある事から、細胞の痛みや他の感覚に対する応答法を変更するための、重要な鍵を握っている可能性があると言っています。彼等の研究は、高名な専門誌Nature Chemistry誌に掲載されています。
受容体分子
Pain relief molecule featuring first artificial cellular communications receptor
“Cells in living organisms need to communicate with the world around them – and one of the most common ways they do this is by using receptor molecules that span their outer membranes,” said Dr Webb from Manchester’s School of Chemistry.
”生物を構成している細胞は、それらを取り巻く周囲環境と情報伝達し合う必要性があり、そのことを達成するための最も一般的な方法の一つが、細胞の外膜にわたって存在する受容体分子を使うことです。”と、マンチェスター大学化学部のウェブ博士は言いました。
”重要な受容体の種類の一つは、ホルモン等の外部化学信号に対して、形状を変えた後で、細胞内部にメッセージを伝えることによって応答しています。”
Dr Webb’s Manchester group, in collaboration with Professor Jonathan Clayden’s group at the University of Bristol, have now designed and synthesized the first artificial mimic of one of these molecular receptors.
ウェブ博士のマンチェスターグループは、ブリストル大学のジョナサン・クレイデン教授のグループと連携して、現在、世界初のこういった分子受容体の一つの人工模倣体の設計・開発に成功しています。彼等の人工レセプターは、小胞として知られる単純な細胞様構造体の膜の中に埋め込まれ、それの自然相当物のように、化学信号に反応して形を変えられます。
ロイシンエンケファリン
The researchers were able to get the synthetic receptor to respond to the natural hormone Leu-Enkephalin, which in humans is involved in pain relief as an ‘agonist’ (ie an agent that causes action).
研究者達は、人において、作用薬(作用を引き起こす薬剤)として、痛み緩和に関係している天然ホルモン、ロイシンエンケファリンに反応する合成受容体の獲得に成功しました。
Boc-L-プロリン
They then succeeded in using another chemical messenger Boc-L-Proline (ie an ‘antagonist’, an agent that blocks the action of the agonist) to switch this response off again.
彼等は、その後、この反応を再びオフにするために、別の化学メッセンジャー、Boc-L-プロリン(作用薬の働きを抑制する薬剤である阻害剤)を使うことに成功しています。
“The discovery that artificial molecules can respond to chemical signals in this way raises the possibility that the natural communication pathways used by cells could be added to or bypassed,” added Dr Simon Webb.
”人工分子がこういったやり方で化学信号に応答できるという今回の発見は、細胞によって使われている自然の情報伝達経路が、付け加えられたり、迂回されたりすることができるかもしれないという可能性を提議しています。”と、シモン・ウェブ博士は付け加えました。
人工受容体を使った新しい鎮痛法が開発される可能性があるとしたら、痛みに弱い人類にとっては、非常に大きなニュースかもしれませんが、それが可能なのかは分かりません。