夢の常温超伝導はifではなくwhenです。It’s only a matter of time.です。未来の3種の神器と言われている、常温量子コンピューター、常温核融合、常温超伝導のいわゆる常温三兄弟ですが、常温核融合だけはウルトラZ級の難度です。人間には達成不可能な域に達しているかもしれません。閑話休題、ウルトラQと言えば、ウルトラシリーズ第一作ですが、オバケのQ太郎と併せて60年代にQQタイムとして恐れられていたそうです。QQと言えば、あのベルトクイズQ&Qを思い出す人が多いのではないでしょうか。
全人類の夢の室温超伝導
Room-temp superconductors could be possible
Superconductors are the holy grail of energy efficiency. These mind-boggling materials allow electric current to flow freely without resistance. But that generally only happens at temperatures within a few degrees of absolute zero (minus 459 degrees Fahrenheit), making them difficult to deploy today. However, if we’re able to harness the powers of superconductivity at room temperature, we could transform how energy is produced, stored, distributed and used around the globe.
「超電導体はエネルギー効率の聖杯です。この物凄い物質は、抵抗無しで自由に電流を流すことができます。しかし、それは通常絶対零度から数度以内(華氏-459度)の温度でしか起こらないので、現在はそれらを活用することを困難にしています。しかし、もし我々が室温で超電導の能力を利用できるようになれば、エネルギーの生産、貯蔵、運搬、消費の方法を世界規模で変えることが可能になるかもしれません。」
室温で電気抵抗ゼロ、発熱なしの超伝導実現はいつになるのか、それは神のみぞ知るとしか言えません。あるいは超天才が現れるのを待つのみです。
クプラート、カプレート
In a recent breakthrough, scientists at the Department of Energy’s Brookhaven National Laboratory got one step closer to understanding how to make that possible. The research, led by physicist Ivan Bozovic, involves a class of compounds called cuprates, which contain layers of copper and oxygen atoms.
「最近の大発見で、エネルギー省ブルックヘブン国立研究所の科学者は、それを可能にする方法の理解に一歩近付きました。物理学者Ivan Bozovicを中心とする研究は、銅と酸素原子の層を含むクプラートと呼ばれる化合物群を対象にしています。」
Under the right conditions—which, right now, include ultra-chilly temperatures—electrical current flows freely through these cuprate superconductors without encountering any “roadblocks” along the way. That means none of the electrical energy they’re carrying gets converted to heat. If you’ve ever rested your laptop on your lap, you’ve felt the heat lost by a non-superconducting material.
「現時点では極寒温度が含まれる条件さえ整えば、電流は途中で障害物に一切遭遇することなしでこのクプラート超伝導体の中を自由に流れます。それはそれらが持ち運んでんいる電気エネルギーが決して熱に変換されないことを意味しています。もしあなたが今まで膝の上にラップトップを置いた事があるなら、非超電導物質によって失われた熱を感じたことがあるのではないでしょうか。」
heat lost by ~ = ~で失われた熱、この場合、電気エネルギーが熱に変換され、エネルギーが熱として失われることを意味している。
Creating the right conditions for superconductivity in cuprates also involves adding other chemical elements such as strontium. Somehow, adding those atoms and chilling the material causes electrons—which normally repel one another—to pair up and effortlessly move together through the material. What makes cuprates so special is that they can achieve this “magical” state of matter at temperatures a hundred degrees or more above those required by standard superconductors. That makes them very promising for real-world, energy-saving applications.
「クプラートにおける超伝導のための適切な条件を作り出すことには、ストロンチウムのような他の化学元素を添加することも含んでいます。どういうわけか、それらの原子を加えてその物質を冷やすことが、普段はお互い反発し合っている電子がペアになって難なく物質中を一緒に移動します。何がクプラートをそんなに特別にしているのかというと、それらが標準の超電導によって要求される温度よりも100度かそれ以上の温度でこのマジカルな物質の状態を実現することができることなのです。そのことがそれらを現実的な省エネアプリケーションに対して前途有望にしています。」
These materials wouldn’t require any cooling, so they’d be relatively easy and inexpensive to incorporate into our everyday lives. Picture power grids that never lose energy, more affordable mag-lev train systems, cheaper medical imaging machines like MRI scanners, and smaller yet powerful supercomputers.
「これらの物質は全く冷却を必要としないので、日常生活の中へ組み入れることを比較的簡単で安価にしています。絶対にエネルギーを損失しない送電網、もっと手頃な価格のリニアモーターカー、もっと安価なMRIスキャナーのような医療画像機器、今より小さくてもパワフルなスーパーコンピュータを想像してみてください、」
超伝導スーパーコンピュータは4年以内に完成するみたいですが、通常のスパコンとそんなに性能差がないことが驚きでもあります。そもそも超伝導である必要があるのかという疑問さえ生じてきますが、冷却の必要が一切無い常温超伝導体を使ったスパコンなら、さらに性能がアップするのかもしれません。
カプレートの謎
To figure out the mystery of “high-temperature” superconductivity in the cuprates, scientists need to understand how the electrons in these materials behave. Bozovic’s team has now solved part of the mystery by determining what exactly controls the temperature at which cuprates become superconducting.
「カプレートでの高温超伝導の謎を解明するために、研究者は電子がこれらの材料の中でどのように振る舞っているのかを理解する必要があります。Bozovicのチームは現在、一体何がカプレートが超電導化する温度をコントロールしているのかを決定することによって、その謎の一部を解決しています。」
超伝導転移温度の決定要素さえ解明できれば、室温超伝導体は発見されたも同然です。何とかその謎を解明してもらいたいものです。
The standard theory of superconductivity says that this temperature is controlled by the strength of the electron-pairing interaction, but Bozovic’s team has discovered otherwise. After 10 years of preparing and analyzing more than 2,000 samples of a cuprate with varying amounts of strontium, they found that the number of electron pairs within a given area (say, per cubic centimeter), or the density of electron pairs, controls the superconducting transition temperature. In other words, it’s not the forces between objects that matter here, but the density of objects—in this case, electron pairs.
「超電導の標準理論は、この温度が電子対形成相互作用の強度によってコントロールされていると言っていますが、Bozovicのチームはそれとは違う発見をしました。10年に及ぶさまざまな量のストロンチウムを含んだ2000以上のカプレート試料を用意・分析後、彼等は特定領域(例えば、1立方センチメートル当たり)内の電子対の数、あるいは、電子対密度が超伝導転位温度をコントロールしていることを発見しました。換言すれば、ここで重要なのは物体間の力ではなく、物体の密度、この場合は電子対だということです。」
電子対の結び付きの強度ではなく、電子対の密度が超伝導に関係していたようです。関係が深い電子対が重要なのではなく、関係が浅くても、電子対の数が問題のようです。フィーリングカップルではありませんが、ペアになって流れて行きさえすればいいみたいです。
The scientists arrived at this conclusion by measuring how far a magnetic field was able to get through each sample. This distance is directly related to the density of electron pairs, and the distance differs depending on the material’s properties. In superconductors, the magnetic field is mostly expelled; in metals, the magnetic field permeates. With too much strontium, the cuprate becomes more conductive because the number of mobile electrons increases.
「研究者達は、磁場がどこまで1つ1つの試料に入り込むことができるのかを測定することでこの結論にたどり着きました。この距離は電子対密度に直接関係していて、その距離は材料の性質によって違ってきます。超伝導体では磁場は大部分が撥ね付けられますが、金属においては磁場は浸透します。ストロンチウムが多過ぎると、クプラートは、可動電子数上昇により導電性が増します。」
mobile electronで、モバイル電子、移動電子、移動性電子、可動性電子と訳せるようです。超伝導と磁場と言えば、レビテーション(Meissner effect、マイスナー効果)があまりにも有名ですが、空中浮遊(舞空術)は人類永遠の夢でもあります。
電子対は何故起きるのか
Yet the scientists found that as they added more strontium, the number of electron pairs decreased until absolutely no electrons paired up at all. At the same time, the superconducting transition temperature dropped toward zero. Bozovic and his team were quite surprised at this discovery that only a fraction of the electrons paired up, even though they all should have.
「それにもかかわらず、ストロンチウムをさらに足していくと、電子対の数は電子が完全に対にならなくなるまで減り続けることを、研究者達は発見しました。またその際、超伝導遷移温度は絶対零度へ向けて下がり続けました。Bozovicの研究チームは、全ての電子が対になるべきだったのにもかかわらず、ほんのわずかの電子だけしかペアを組まなかったこの発見に、とてつもない衝撃を受けました。」
ストロンチウムというと原発事故を思い出しますが、それは置いておくとして、ストロンチウムをやたら足せばいいという訳ではないようです。過ぎたるは猶及ばざるが如しというやつですね。入れ過ぎると電子がオコしてペアを組むのを止めてしまうようです。熱が冷めて関係がどんどん冷え切っていき、終いには、絶対零度まで冷え切ってしまうみたいです。
Think of it like this: You’re in a dance hall, and at some point, you and the other people—who normally wouldn’t be caught arm-in-arm—begin to pair up and move in unison. Some newcomers arrive, and they too pair up and join the harmonious dance. But then something strange happens. No matter how many more people make their way to the dance floor, only a fraction of them pair, even though they are all free to do so. Eventually, nobody pairs up at all.
「その事をこのように考えてみてください。あなたがダンスホールの中にいて、ある時点で、あなたと、普段は腕なんか組まない他の人達が、ペアになって一斉に動き出すのです。何人かの新参者が到着し、彼らもまたペアになってその調和したダンスに加わります。しかしその後は、何か不思議なことが起きるのです。たとえ何人の人たちがダンスホールへ来ようとも、彼らのごく一部だけしかペアにならないのです、彼等は自由にそうすることができるのにもかかわらずにです。最終的に誰一人ペアにならなくなります。」
留学中のホームカミングパーティーで、ペアを組む相手がいなくて1人寂しく佇むとか考えられません。デート相手がいないとそもそもダンスホールにはいかないだろうし、つまり、電子も最初からデートが決まっていて、そのデートとは遠距離恋愛みたいに、例え遠距離であっても、もつれあうみたいな感じなのかもしれません。所謂、量子エンタングルメントというやつです。温度が上がると電子の恋愛離れが起こるのは、地球の温暖化によって若者の恋愛離れが世界的に起こっているのと相通ずる物があるのではないでしょうか。
冗談はさておき、電子ペアとか電子カップリングとか、電子同士の恋愛関係と言うか相互作用の完全解明が、量子コンピュータや常温超電導のカギを握っているようです。
Why do the dancers, or electrons, pair up in the first place? Answering that question is the next step toward unlocking the mechanism of high-temperature superconductivity in the cuprates—a mystery that’s been puzzling physicists for more than 30 years.
「そもそも何故、ダンサー達は、あるいは、電子達は対になるんでしょうか?その質問に答えることが、カプレートにおける高温超電導のメカニズムを解き明かすための次のステップでもあります。物理学者達を30年以上困惑させ続けている謎です。」
電子は何故ペアを組むのかが分かれば、常温超電導が可能になるっぽいです。ストロンチウムのような不純物を酸化銅に添加するのは、半導体のドナー不純物を添加するドーピングみたいなもんなんだと思いますが、量が多ければいいというわけではなく、微妙な分量があるみたいです。いろんな元素を原子レベルの精度で混ぜ合わせることで、常温超電導が可能になるのではないでしょうか。どんな元素をどれくらい混合するか、気の遠くなる作業ですが、人工知能を巧みに使うことで、分子のスペースシャトルのように、効率よく作業を進めることができるような気もするし、あるいは、量子コンピュータ完成の暁には、常温超伝導体が量子コンピューターを使うことで、案外簡単に発見されてしまう可能性があるかもしれません。ド素人目から見た感想ですが、材料研究は楽しそうなので、日本の若者も人工知能を使った材料研究にもっと関心を向けるのも一つの道かもしれません。日本を良い方向に変えられるのは今の子供達だし、その子供達がもっと科学に興味を持つようになれば、あるいは、学問そのものに興味を持ってくれるようになれば、日本が技術立国として生き残れるかもしれません。