モスクワ物理工科大学の2次元材料と光電子のラボ、通信電子工学研究所、東北大学の研究者達が、未来の光回路用の基礎構成要素であるコヒーレントプラズモン小型発生源の創出可能性を理論的に立証しました。その仮説装置は、グラフェンと関連積層材料複合体のファンデルワールスヘテロ構造の特質に基づいています。
今回の研究の詳細が記述してある論文が、Physical Review Bとかいう雑誌に掲載されているようです。Physical Review Bというジャーナルは初めて耳にしますが、実は権威がある物理専門誌のようです。無知は本当に怖いですね。というか、アホなおっさんがそんな事を知っているわけがないと言った方が正しいと言えます。
プラズモン光デバイス
Plasmons are quasi-particles that are “mixtures” of oscillating electrons and the electromagnetic field coupled with them. Plasmons can be used to generate, transmit and receive signals in integrated circuits. They can act as mediators between electrons and light waves in highly efficient photodetectors and sources, particularly in the actively explored terahertz range. It is interesting to note that plasmon energy can be stored at a length scale much less than the wavelength of light. This means that plasmonic devices can be far more compact than their photonic counterparts. The most “compressed” plasmons are those that are bound to the conducting planes, and these plasmons can be used to make the most compact optoelectronic devices.
「プラズモンは、振動電子とそれらと結合した電磁場の混合物である疑似粒子です。プラズモンは、集積回路で信号を発生、伝播、受信するために利用できます。それらは、特に積極的に探求されているテラヘルツ領域で、高性能な光探知機と光源において、電子と光波相互間で仲介者の機能を果たすことが可能です。プラズモンエネルギーは、光の波長よりもはるかに短い長さスケールで保存できます。この事は、プラズモンデバイスが、それらの光子の同等物よりもはるかに小型になり得ることを意味しています。最も圧縮されたプラズモンは、導電面に拘束されているもので、それらのプラズモンは、最もコンパクトな光デバイスを作るのに利用できます。」
(表面)プラズモンは、電子密度の疎密波、電子の波、電子の集団的な波、電子の集団振動、電子の集団的な振動、電子の疎密波(縦波)、電子の集団振動の量子らしいです。堀江氏がホリエモンになったように、プラズマがプラズモンになったような感じかもしれません。ドラえもんみたいで愛着がある名前です。
ヘテロ構造
But where can one find a conducting plane that supports ultra-confined plasmons? For more than 40 years, such objects have been created by sequential growth on nanometre-thin semiconductors with affine crystal structures. In this process, certain layers are enriched with electrons and obtain good electrical conductivity. These “layer-cakes” are called heterostructures—Russian physicist Zhores Alferov was awarded the 2000 Nobel Prize in Physics for their development.
「しかしながら、超拘束プラズモンをサポートしている導電面をどこで見つけることができるんでしょうか?40年以上の間、そのような物体は、アフィン結晶構造を持つナノメートル薄の半導体上での連続成長によって作られてきました。この工程において、特定の層は電子で満たされ高い導電率を獲得しています。このレイヤーケーキはヘテロ構造と呼ばれています。ロシア人物理学者ジョレス・アルフョーロフは、ヘテロ構造開発に対し、2000年にノーベル物理学賞を授与されました」
レイヤーケーキはミルクレープみたいなもんで、非常に美味しいケーキです。天才的なケーキだとも言えます。材料をそのケーキに見立てて層状に構築して積層構造を作り出したのは、目の付けどころが良いとしか言えません。
グラフェン
However, growing nanoscale layers is not the only way of obtaining flat semiconductors. During the last decade, researcher has been focused on a different, intrinsically two-dimensional material—graphene. Graphene is a one-atom-thick layer of carbon, and it can be obtained by simply slicing graphite crystal. The study of the unique electronic properties of graphene (which are radically different from those of classical heterostructures) was marked by another Nobel prize awarded to the MIPT alumni Andre Geim and Konstantin Novoselov (2010).
「しかし、ナノスケール層を成長させることだけが、平型半導体を得るための唯一の方法ではありません。過去10年間、研究者は、別の本質的に2次元材料であるグラフェンに焦点を当ててきました。グラフェンは炭素の1原子厚層で、黒鉛結晶を薄く切るだけで簡単に得ることができます。グラフェンの独特な電子物性の研究は(古典的ヘテロ構造のものとは根本的に違う)別のノーベル賞が2010年にMIPT卒業生のアンドレ・ガイムとコンスタンチン・ノボセロフに授与されたことによって特徴付けられました。」
グラフェンがノーベル賞級の発見なのはド素人にも分かります。
A great number of graphene-based devices have been created already, including transistors receiving high-frequency signals, ultrafast photodetectors and even the first prototypes of lasers. The properties of graphene can be further enhanced by placing it on another material with a similar crystal structure. Materials similar to graphene can essentially be used to create the “layer-cake” heterostructures mentioned above. In this case, however, the building blocks of the structures are joined by van der Waals forces, which is why they are called van der Waals heterostructures.
「高周波信号受信用トランジスタ、超高速光検知器、レーザーの最初の試作品さえ含む、物凄い数のグラフェンベースのデバイスが既に作られています。グラフェンの性質は、似たような結晶構造を持った別の材料の上にそれを重ねることでさらに強化可能です。グラフェンに似た材料は、基本的に、上述のレイヤーケーキヘテロ構造を作るために利用可能です。しかしこの場合、その構造物の基礎的要素は、ファンデルワールス力によって結合されていて、そのことが、それらがファンデルワールスヘテロ構造と呼ばれている理由になっています。」
In their work, the researchers show that a heterostructure comprising two graphene layers separated by a thin layer of tungsten disulphide not only supports the compact two-dimensional plasmons, but can also generate them upon the application of interlayer voltage.
「彼らの研究で、研究者達は、二硫化タングステンの薄層によって分離されている2枚のグラフェン層から成るヘテロ構造が、小型2次元プラズモンをサポートするだけではなく、層間電圧の印加時にそれらを発生することを見つけ出しました。」
“The structure we are modeling is essentially the gain medium for plasmons,”
「我々がモデルにしているその構造は基本的にプラズモンの利得媒質です」
“More common examples of gain media are the neon-helium mixture in a gas laser, or a semiconductor diode in a laser pointer. When passing through such a medium, the light is amplified, and if the medium is placed between two mirrors, the medium will generate the light by itself. The combination ‘gain medium plus mirrors’ is at the heart of any laser, while the gain medium for plasmons is a necessary element of a plasmonic laser, or spaser.
「利得媒質のもっと一般的な例は、ガスレーザーにおけるネオンーヘリウム混合体かレーザーポインターにおける半導体ダイオードです。そのような媒質を通過する時、光は増幅され、もしその媒質が2枚の鏡の間に置かれた場合、その媒質はそれ自体で光を発します。利得媒質+鏡の組み合わせは、全てのレーザーの心臓部ですが、プラズモン用利得媒体は、プラズモンレーザー、またはスペーザーの必須要素です。」
spaser=Surface Plasmon Amplification by Stimulated Emission of Radiation
If the gain medium is switched on and off, the plasmonic pulses can be obtained on demand, which could be used for signal transmission in integrated circuits. The plasmons generated in the gain medium can also be uncoupled from the graphene layers and propagate as photons in free space. This allows one to create tunable sources of terahertz and far infrared radiation.”
「もし利得媒質がオンオフできれば、プラズモンパルスは必要に応じて得られ、集積回路で信号伝播として利用できるかもしれません。利得媒質で生じたプラズモンは、グラフェン層から分離可能で、自由空間で光子として伝播もできます。このことがテラヘルツと遠赤外線用の波長可変光源を作り出すことを可能にしています。」
レーザーの仕組み
Apparently, the gain medium is not a perpetuum mobile, and the particles created by it—either photons or plasmons—must get their energy from a certain source. In neon-helium lasers, this energy is taken from an electron thrown onto a high atomic orbital by the electric discharge. In semiconductor lasers, the photon takes its energy from collapsing positive and negative charge carriers—electrons and holes, which are supplied by the current source.
「明らかに、利得媒質は永久運動ではありませんし、それによって作り出された粒子(光子とプラズモンのどちらも)は、ある種のソースからエネルギーを得る必要があります。ネオンーヘリウムレーザーにおいては、このエネルギーは、放電によってエネルギー準位の高い原子軌道上に放り出された電子から得られます。半導体レーザーでは、光子は、電流源によって供給されている正電荷・負電荷担体(電子とホールの)の崩壊からエネルギーを得ています。」
電子は負電荷、ホール(正孔)は正電荷を持ちます。電子がホールに落ち込む(再結合)現象によって、正電荷を持つホールは事実上消滅するみたいな感じです。ヘリウムネオンレーザーは電子を励起させて、往って来いで生じるエネルギーを利用しています。
参考サイト「光の道」を通る光 〜半導体レーザーの仕組み〜参考サイトレーザーはどうやって出しているのですか?
電子ホッピング
In the proposed double graphene layer structure, the plasmon takes its energy from an electron hopping from a layer with high potential energy to a layer with low potential energy, as shown in the figure. The creation of a plasmon as a result of this jump is similar to the way in which waves form as a diver enters the water.
「二重グラフェン層構造案では、プラズモンは、高ポテンシャルエネルギー層から低ポテンシャルエネルギー層への電子ホッピングからエネルギーを得ています。このジャンプの結果としてのプラズモンの発生は、ダイバーが水中へ飛び込む時に波が発生するのに似ています。」
double graphene layer structure = 二層グラフェン構造、グラフェン二重層構造、グラフェン二層構造、グラフェン2層構造、2層グラフェン構造など結構色々な訳が存在しています。個人的には二重グラフェン層構造が直訳でいいんじゃないかと思いますが、ググっても出てきません。なので、グラフェン二重層構造を推します。
電子ホッピングは、電子のバンド幅、電子が飛び移る伝導機構、イオンの周りを回っている電子が隣のイオンの方に飛び移ることのようです。
To be more precise, the electron transition from one layer to another is more like soaking through the barrier rather than jumping over it. This phenomenon is called tunneling, and typically the probability of tunneling is very low for already nanometre-thin barriers. One exception is the case of resonant tunneling, when each electron from one layer has a “well-prepared” place in the opposite layer.
「具体的には、1つの層から別の層への電子遷移は、それを飛び越えるというよりはむしろ障害に染み込んでいくことに近いです。この現象は、トンネル現象と呼ばれていて、一般的にトンネリングの確率は、既にナノメートルの薄さのバリアに対しては非常に低いです。1つの例外は、1つの層のめいめいの電子が、トンネルする層に用意周到に準備された場所を持っている場合の共鳴トンネル現象の例です。」
量子カスケードレーザー
“The principle of plasmon generation studied by our group is similar to the principle of the quantum cascade laser proposed by the Russian scientists Kazarinov and Suris and realized in the U.S. (Faist and Capasso) more than 20 years afterwards. In this laser, the photons take energy from electrons tunneling between gallium arsenide layers through the AlGaAs barriers. Our calculations show that in this principal scheme, one can profitably replace gallium arsenide with graphene, while tungsten disulphide can act as a barrier material.
「我々のグループによって研究されたプラズモン発生の原理は、ロシア人科学者Kazarinovと Surisによって提唱され、その20年以上後でアメリカで実現された量子カスケードレーザーの原理に似ています。このレーザーでは、光子は、電子がヒ化ガリウム層間のヒ化アルミニウムガリウム障壁層を通り抜けるトンネリングからエネルギーを得ています。我々の計算が、この原理体系では、有利にヒ化ガリウムをグラフェンと置き換えることが可能で、さらに二硫化タングステンがバリアの役割を果たすことができます。」
量子カスケードレーザーを調べてみました。量子カスケードレーザー
従来の半導体レーザーにおける光遷移は,伝導帯準位と価電子帯準位間の遷移であり,電子と正孔は再結合して光を放射する.もし,量子井戸構造で離散化された伝導帯内の準位間で光学的遷移が起きた場合には,電子は正孔は再結合せず伝導帯にとどまる.そこで,多重量子井戸を作成し,光を放出した電子をトンネル効果で隣り合う量子井戸に導き,そこで再び伝導帯内での遷移を行わせ,ちょうど多段の滝のように1つの電子が多数の遷移を次々と行っていくような構造が実現されている.これを,量子カスケードレーザーとよぶ.
プラズモン発生構造
This structure is able to generate not only photons, but also their compressed counterparts—plasmons. The generation and amplification of plasmons was previously thought to be a very challenging problem, but the structure we have proposed brings us one step closer to the solution,”
「この構造は、光子を発生できるだけでなく、それらの圧縮バージョンであるプラズモンを発生させることもできます。プラズモン発生と増幅は以前はとても挑戦的な問題だと考えられていましたが、我々が提案している構造によって解決に一歩近付いています。」
理論的なプラズモン発生構造から実際のプラズモン発生装置が作り出せるかどうかは今後の研究課題なんでしょうが、実現できれば、超小型高速光コンピュータが誕生するみたいなので、かなり期待が持てる研究課題でもあります。