天然黒リンのとってもエキゾチックな特性

黒燐の特性は以前から注目されていましたが、その特性が自然の黒リンにも存在することが今回確認されたそうです。黒燐はリンの同素体の一種で、リンには他にも赤リン、白鱗、紫リンなどの同素体が存在します。白鱗は白燐弾、赤燐はマッチで有名です。猫いらずで有名な黄燐は同素体ではなく、白鱗に不純物が含まれたものらしいです。

phosphorescence(燐光)と言われる現象がありますが、これは物質が光を発するルミネセンスの一種のようです。燐光と蛍光の違いを調べてみました。

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ひとつのエネルギー・レベルの軌道には電子はふたつしか入れません。これを「パウリの禁制」といいます。一方、電子はスピン(自転)をしています。ふたつの電子は、それぞれ逆向きにスピンしている「一重項状態」、同じ向きにスピンしている「三重項状態」にわけられます。一般には前者のかたちをとっています。さて、蛍光は、励起したふたつの電子が一重項状態、燐光では、励起した電子が三重項状態になっています。燐光では、もとの一重項の基底状態に落ちるのに時間がかかるため、長く光を出すのです。

両者の違いは、励起した電子のスピンの向きの違いのようです。

オーセチック挙動(膨張挙動)

Exotic property confirmed in natural material could lead to fundamental studies

Researchers have confirmed the existence of a naturally occurring exotic property in which a material becomes thicker when stretched – the opposite of most materials – a discovery that could lead to new studies into the fundamental science of nano-materials behavior.

「研究者は、ナノ材料挙動の基礎科学に対する新しい研究をもたらす可能性のある発見である、材料が引っ張られると厚くなるという、ほとんどの材料の逆である変わった特性が天然材料にも存在することを確認しました。」

The counterintuitive phenomenon, called auxetic behavior, has been extensively studied in engineered structures that have potential applications in medicine, tissue engineering, body armor and “fortified armor enhancement.”

「膨張挙動と呼ばれる不可思議な現象は、医学、再生医療、防弾チョッキ、要塞化装甲強化の分野で潜在用途がある人工構造において広く研究されています。」

fortified armor enhancementは、World of Warcraft(ワールド オブ ウォークラフト)というゲームに出て来るアイテムのようです。auxetic behavior(オーセチック挙動)は、縦に引っ張ると横に膨らむ挙動の事のようです。

However, until now the behavior has not been confirmed in natural materials, said Peide Ye, Purdue University’s Richard J. and Mary Jo Schwartz Professor of Electrical and Computer Engineering.

The auxetic behavior was discovered in a material called black phosphorous.

「しかし今までその挙動は天然素材では確認されていないとパデュー大学電気情報工学科のYe教授は言った。その膨張挙動が黒燐と呼ばれる物質において発見されました。」

The phenomenon is governed by a fundamental mechanical property of materials called the Poisson’s ratio, which characterizes how a material behaves when stretched. Most materials when stretched become thinner and when compressed become thicker, and they are said to have a positive Poisson’s ratio.

「その現象は、物質が引き伸ばされた時どう振る舞うのかを表すポアソン比と呼ばれる物質の基本的な力学的性質に従います。ほとんどの物質は引き伸ばされると薄くなり圧縮されると分厚くなるので、正のポアソン比を持つと言われています。」

ポアソン比は、弾性材料を縦方向に引き伸ばした時に生じる縦の歪みと、その時に同時に生じる横の歪みの間の比の絶対値らしいです。

負のポアソン比

“A negative Poisson’s ratio is theoretically possible but until now has not, with few exceptions of man-made structures, been experimentally observed in any natural materials,” Ye said. “Here, we show that the negative Poisson’s ratio exists in the natural material black phosphorus.”

「”負のポアソン比は理論的に可能ですが、人工構造物の稀な例外を除けば、今までどのような天然材料においても実験的に観測されていません。”とYeは語った。”ここに我々は、負のポアソン比が天然素材の黒燐に存在する事を証明しています。”」

Findings are detailed in a research paper that appeared on Sept. 23 in the journal Nano Letters.

“Until now, there has been a lack of experimental evidence since the measurement of internal deformation in auxetic materials, in particular at the atomic level, is extremely difficult,”

「発見は9月23日にNano Letters誌にて掲載された研究論文で詳述されています。”現在に至るまで、オーセチック材料における内部変形の測定は、特に原子レベルでは、非常に困難であったために、実験的証拠に欠けていました。”」

Researchers used a technique called Raman spectroscopy to document the negative Poisson’s ratio in extremely thin, individual layers of black phosphorous called phosphorene. The research was based at the Birck Nanotechnology Center in Purdue’s Discovery Park.

「研究者は、ホスフォレンと呼ばれている黒リンの極薄な個々の層における負のポアソン比を実証するためにラマン分光法と呼ばれる技術を使いました。その研究はパデュー大学ディスカバリーパークにあるバーク・ナノテクノロジー・センターに本拠を置いています。」

ホスフォレンでもフォスフォレンでも無問題です。最近はrheo-Raman spectroscopy(レオラマン分光法)なるものも出てきているようです。

The researchers focused on the material’s uniquely puckered crystal structure in which atoms are arranged in a wavy pattern. Like silicon, the material possesses a bandgap, a trait essential for a semiconductor’s ability to switch on and off in electronic circuits. The material also has a relatively high “carrier mobility,” meaning it is very conductive and could be useful for technological applications.

「研究者は、その材料の他に類を見ない、原子が波形パターンに並んでいる黒燐結晶構造に注目しました。シリコンのように、その材料は、電子回路のスイッチをオン・オフする半導体の能力には欠かせない特徴であるバンドギャップ(禁制帯)を有しています。その材料はまた、非常に伝導力があって工学的応用に役立つ可能性があることを意味する、比較的高いキャリア移動度を持ってもいます。」

puckered crystal structureは、黒リン結晶構造か、あるいはそのまま、パッカード結晶構造と訳し、puckered layer structureならパッカード積層構造(黒リン層状構造)と訳すのがいい感じです。黒燐固有のこの構造は、角度を変えて見ると、結晶構造において皺が寄っているように見えるからそう名付けられているみたいです。pucker = しわ、縮、ひだ、しわになる、縮む、すぼまる、しわを寄せる、ひだを取る、puckered = 襞(皺)のある、くぼんだ、(梅干しを食べた時の唇などの)すぼんだ、という意味があるので、皺状結晶構造や襞状積層構造(しわ状結晶構造)、(ひだ状積層構造)と訳せないかと考えるところですが、ググってもこの訳は見当たりらないので、やはりパッカードか黒鱗で訳すのが無難みたいです。

Future research will include work to investigate whether the negative Poisson’s ratio exists in other so-called “two-dimensional” materials, including extremely thin layers of graphite called graphene.

「将来の研究には、負のポアソン比が、グラフェンと呼ばれているグラファイト(黒鉛)の極薄層を含む、他の、世間で言うところの2次元材料にも存在するのかどうかの調査に取り組むことも含んでいます。」

2次元材料にはボロフェンや遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)、二硫化ハフニウム、二硫化モリブデン等も含むみたいです。1次元物質はカーボンナノチューブが有名ですが、こういった新素材(そんなに新しくない材料もありますが)が、パソコンの性能を1日も早く安価に飛躍的に向上させてくれることを願わずにはいられません。

クロリンと聞くとクリリンを思い出してしまうのですが、実はコクリンと読むことを知って、コックリさんとか、ジブリアニメのコクリコ坂を思い浮かべてしまいました。ジブリアニメと言えばレッドタートルが大コケしたみたいですが、あれは興行収入度外視で、芸術性を極めた作品なので、ジブリ的には無問題です。