アメリカ大統領選挙:トランプvsクリントン勝敗の行方

トランプ氏とマダム・セクレタリー・クリントン(クリントン元国務長官)の熾烈な争いが繰り広げられていますが、勝敗の行方は全く分かりません。クリントン女史優勢の声が多いような気もしますが、全く当てになりません。今回の選挙は事前調査も参考にならないと言われているので、勝負は蓋を開けるまで誰にも分かりません。

クリントン元ニューヨーク上院議員に対するメガトン級のOctober surprise(オクトーバーサプライズ)がWikiLeaksから流されるみたいな噂もある一方で、トランプ氏に対する強烈なオクトーバーサプライズ も控えていると言われているので、全く予断を許さない状況になってきています。最後まで目が離せません。

ビル・クリントン元大統領のまさかのオバマケア批判や、燻り続けるヒラリー女史のEメール問題、トランプ氏の人格問題等で、選挙戦は混沌としてきていますが、セキュリティー、エコノミー、パーソナリティーが選挙民にとっては重要な要素なので、トランプ氏、クリントン女史のどちらが最後に笑うのかは、今から選挙日までの経済状況、大規模テロの有無、サプライズの有無、この3点に注目しておきましょう。

ミレニアルズ

今やアメリカ最大の有権者ブロックであるMillennials(新世紀世代)が今回の選挙の帰趨を決すると言われています。ミレニアルズの定義は色々有りますが、基本的に1976年~1998年の間に生まれた、2016年現在18歳~40歳前後となります。この世代の白人票がアメリカ大統領を決します。どっちが45th President of the United States(第45代アメリカ合衆国大統領)になるかは白人票次第です。

よくマイノリティがアメリカ人大統領を決めると言われていますが、アン・コールター女史曰く、それはリベラルの喧伝だそうで、今回のように白人票70~75%、マイノリティ20~25%と言われている投票割合を鑑みれば、白人票が大統領を決めるのは自明の理らしいのですが、ただ、接戦になった場合、例えば2000年にゴア副大統領(当時)がフロリダで破れたのは、ユダヤ系高齢有権者がゴア元副大統領ではなく、間違ってReform Party(改革党)のパット・ブキャナン氏に投票してしまったせいだと指摘されているように、今回もフロリダ州のマイノリティ票が大統領を決める可能性もあるので、ただの喧伝ではないとも言えます。

民主党予備選では、バーニー・サンダース翁がミレニアルズから圧倒的支持を受けましたが、クリントン女史は南部黒人票に救われ、何とか民主党大統領候補になることができました。2008年の予備選では、生命線だった黒人票をオバマ氏と分け合う形になった事で、涙を飲んだ格好です。予備選でミレニアルズの支持を全く受けられなかった事実から、今回の大統領選挙では相当苦しい戦いを強いられることが予想されています。

今回の大統領選はミレニアルズの投票率次第と言われているだけに、ヒラリー氏はこの有権者層を鼓舞する必要があります。逆にトランプ氏は新世紀世代票をヒラリー氏から奪い取るか、緑の党のジル・スタイン博士やリバタリアン党のゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事へ票を向ける必要があります。

オバマ連合票の行方

クリントン氏が勝つには、Obama coalition(オバマ連合)と言われるマイノリティ連合の圧倒的な支持を得る必要があるとも指摘されています。2012年にオバマ氏を大統領に再選させたのがこのオバマ同盟でした。オバマ連合は強力で、危ういと見られていた2012年の再選挙においても、共和党候補ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事に対し、electoral college(選挙人団)的にlandslide victory(圧勝)を収めています。オバマ大統領再選は、バージニア(13)、オハイオ(18)、フロリダ(29)、アイオワ(6)のいわゆるswing states(どっち付かずの州)における66の選挙人団数獲得によるものでした。

このどっち付かず州のマイノリティ票がオバマ氏を大統領に再選させたのは確かです。特に、フロリダ、コロラド、ネバダは、マイノリティ票が無いと勝てないとも言われています。ロムニー氏が6割の白人票を得たのにもかかわらず敗れたことが、マイノリティ票がいかに大切であるかを如実に物語っていると、ブッシュキャンペーンの頭脳と言われたカール・ローブ氏は強調しています。

オバマ連合を連合させない事がトランプ氏の唯一の勝機とも言えますが、ミレニアルズマイノリティ(特に反ウォールストリート集団)は今はヒラリー氏に対し、非常に強い不信感を抱いているだけにチャンスが残っています。ペンシルバニア州をトランプ氏が取れれば、オハイオ州とバージニア州も取れるので、トランプ氏勝利は揺るぎませんが、この3州をトランプ氏が取れるかは、bluecollar worker(肉体労働者)にかかっていると目されています。

Trump coalitionは肉体労働者と福音主義者と言われているので、ここを大動員出来れば、トランプ氏の勝利は確実です。逆にヒラリー氏がオバマ同盟を維持できれば、ヒラリー氏が勝ちます。結局はミレニアルズ次第だと言う事です。

スイング・ステート

今年のスイング・ステートは、この4州に加えて、ニューハンプシャー(4)、ネバダ(6)、コロラド(9)、メイン(4)、ペンシルベニア(20)、ノースカロライナ(15)、ミネソタ(10)、ミズーリー(10)で、ジョージア、アリゾナは共和党で決まりなので、toss up(五分五分)ではありません。ジョージア州でトランプ氏が万が一にも破れるようなことがあれば、ヒラリー氏の獲得選挙人数は軽く400を超えるはずです。

ロムニー氏が取った州を全部取る事が最低条件で、それに+フロリダ、オハイオ、アイオワ、メイン、ネバダを取り、さらにニューハンプシャーかコロラドのどちらかを取らないと、トランプ氏の勝利はありません。なので相当きついことは確かで、ヒラリー氏が優位であることは間違いありません。ペンシルバニア州を取れれば、トランプ氏が圧勝するでしょうが、逆にもしクリントン女史がノースカロライナ州を取れば、民主党圧勝となります。今回の大統領選挙は、メイン州、ニューハンプシャー州、バージニア州、ペンシルバニア州、ノースカロライナ州、フロリダ州で大勢が決します。メイン州とニューハンプシャー州でトランプ氏が勝てば、市の勝利は確定したも同然と言えますし、フロリダをクリントン氏が取れば、氏の勝利が確定します。ある意味分かりやすい選挙でもあります。

女性票

特に、シングルマザー票が大勢を決したとも言われています。女性票は非常に重要で、2000年の選挙で、ジョージ・W・ブッシュ元大統領を当選させたのが、soccer mom(サッカーマム)で、2004年にブッシュ大統領(当時)を再選させたのが、security mom (セキュリティー・マム)と言われたほどです。

2008年選挙においても、熱狂的なヒラリー・クリントン支持者だったPUMA(People United Means Action)の女性票を獲得するために、共和党大統領候補だったジョン・マケイン現アリゾナ州上院議員は、サラ・ペイリン元アラスカ州知事を副大統領候補に選んだと言われています。それほど女性票が重要で、トランプ氏がどれくらい女性票を獲得できるかが、大統領になれるかなれないかの分岐点になるとも指摘されています。

今回の選挙はシングルマザーとブルーカラーワーカーが非常に重要なカギを握っています。焦点はやはりペンシルバニア州にあると言えるのかもしれません。上院・下院の選挙も含め、投票率がどこまで伸びるのか、あるいは、第三の党がどこまで得票率を伸ばせるのか、勝敗の行方は、白人票とマイノリティ票、高齢者票と若者票、男性票と女性票、カソリック票とプロテスタント票、合法票と違法票、その全ての微妙なバランスによって決定されます。何れにしてもどっちが勝っても全くおかしくはありません。

アメリカ建国史上初の女性大統領が誕生するのか、あるいは政治経験の全くない、リアリティ番組スターで不動産王のKardashian candidate(カーダシアン候補)勝利という人類史上未曾有の事態が勃発するのか、後1ヶ月足らずで分かります。