フォノン(phonon, 音量子)とマグノン(magnon)がカップルだったことが正式に証明されたみたいです。フォノンについては度々目にしますが、マグノンは、あまりお目にかけることはない単語です。一見ウルトラ怪獣大百科に載っていそうな名前ですが載っていません。
「韓国基礎科学研究院のPark教授と同僚達が、酸化マンガンとイットリウムとルテチウムと呼ばれる希土類元素から成るミネラル、反強磁性体亜マンガン酸塩(Y,Lu)MnO3の結晶において、フォノンとマグノンとして知られている、2種の集団原子励起のカップリングの新しい理論モデルを観測、定量化、構築しました。」
ややこしい名前のミネラルの結晶格子の振動モデルを構築したことで、フォノンとマグノンが正式に付き合っていることを突き止めたみたいです。
100年の謎
It’s official: Phonon and magnon are a couple
This study could provide an important breakthrough for solving a 100 year old physical problem, and deepen our knowledge of an interesting class of materials called multiferroics. The complete theoretical model and experimental observations can be read on Nature Communications.
「この研究は、100年に及ぶ物理的問題を解くための重要な突破口を提供し、マルチフェロイクスと呼ばれる興味深い種類の材料に対する我々の理解を深める可能性があります。完全な理論モデルと実験観測は、Nature Communications誌上で読めます。」
100年の謎を解くための道を切り開いたっぽいです。これが韓国初のノーベル賞につながる可能性があるかどうかは不明ですが、マグノンとフォノンのカップリングの謎の解明に貢献ということで数十年以内に受賞の可能性もあるような気もします。
While we generally think of solids as static objects, their molecules are actually in a constant state of vibration. These small vibrations are partly due to phonons and magnons, which are collective excitations and disturbances inside a crystal. Collective means that they are not limited to a single atom, but influence a group of neighbouring atoms. Phonons are uniform oscillations at a single frequency.
「固体を静的物体と一般的に思っていますが、それらの分子は実際絶え間なく振動状態にあります。これらの小さな振動の一部は、集団励起で結晶中の乱れである、フォノンとマグノンによるものです。集団は、それらが単原子に限定されているのではなく、隣接する原子の集団に影響を与えていることを言っています。フォノンは、単調で均一な振動です。」
For example, short-wavelength phonons play a role in thermic conduction, while long-wavelength phonons give rise to sound, which is the origin of the word (“phonos” means voice in Greek). Magnons are collective perturbations of the electrons’ spins, the compasses of the atoms. They influence the magnetic characteristics of the materials. This report shows, for the first time, that the two couple and as a consequence their vibratory behavior is not constant over time.
「例えば、短波長フォノンは、熱伝導の役割を担い、一方、長波長フォノンは、その言葉の起源(フォノンはギリシャ語で音声の意味)が音を生じさせます。マグノンは、原子のコンパスの電子スピンの集団摂動です。それらは、物質の磁気特性に影響を与えています。このレポートは、初めて、2つがカップルになって、結果として、それらの振動挙動が、長期間不変ではないことを明らかにしています。」
thermic conduction = thermal conduction (熱伝導)、origin of the wordは語源、マグノンは電子スピンの集団振動、集団運動、あるいは、電子の集団的スピン揺らぎ等、色々な説明があります。two coupleのcoupleは動詞。
IBS scientists measured the atomic and molecular motion of (Y,Lu)MnO3 crystals by inelastic neutron scattering experiments and also derived a new theoretical model to explain what they observed experimentally. Interestingly, they had to go beyond the standard linear theory, which is normally used to interpret the measurements. The standard linear spin wave theory presumes that the vibration of magnons and phonons is harmonic and stable over time, like the oscillation of a spring without friction.
「IBSの研究員は、非弾性中性子散乱によって、イットリウム・ルテチウム・酸化マンガン結晶の原子と分子運動を測定し、彼等が実験的に観測した事を説明するために新しい理論モデルも導き出しました。興味深いことに、彼等は、通常は測定結果を読み取るのに使われる、標準的な線形理論の範囲を越える必要がありました。その標準的な線形スピン波理論は、マグノンとフォノンの振動が、摩擦のないバネの振幅のように、長期に渡り、調和的かつ安定的だと仮定しています。」
線形スピン波理論
“Initially we used the simplest model, which is the linear spin wave theory without a coupling, but we realised that it was like the classic case of putting the elephant in the fridge: You can somehow do it, but the numbers become unrealistic and there is something wrong with it,” explains professor Park Je-Geun. “Then we did the calculations again, this time including the coupling, and we discovered that we could explain the data and, most importantly, the final analysis gave us the numbers that make sense.”
「”初めに我々は、カップリングなしの線形スピン波理論である、最も単純なモデルを使いましたが、それは冷蔵庫に象を入れる典型例のような物でした。それはできないことはではありませんが、数字が非現実的になり、それはどこかおかしいんです。”と教授は説明しています。”それから我々は再び計算を実行し、今回はカップリングを含めて、データを説明することができることが分かり、最も重要なのは、その最終分析が我々につじつまが合っている数字を与えていることを発見しました。”」
象を冷蔵庫に入れるには象が入る大きさの冷蔵庫に象を入れればいいだけですが、実際には実現は難しいと言われています。冷蔵倉庫を冷蔵庫とすれば簡単ですが、そういう問題ではないらしいです。there is something wrong with ~ = ~はどこか変、~は何かが間違っているみたいな感じで使われています。
While the standard linear spin wave theory says that magnons and phonons vibrate forever and do not influence each other, a coupling would make phonons and magnons unstable, and allow an otherwise forbidden decay. For example, when a phonon becomes unstable as a consequence of the coupling to a magnon, it reduces its oscillations, decays and converts it into a magnon.
「標準の線形スピン波理論は、マグノンとフォノンが永久に振動して、お互いに影響し合わない事を示していますが、カップリングがフォノンとマグノンを不安定にし、そうでなければ禁じられている減衰を可能にします。例えば、マグノンとのカップリングで、フォノンが不安定になった場合、振動を減少させて減衰し、自身をマグノンへと変化させます。」
フォノンがマグノンに取り込まれるみたいな感じなんですかね。
マグノンーフォノン結合
“The idea of a magnon-phonon coupling has already been around as a possible explanation for the uniquely low coefficient of thermal expansion of the invar materials. These industrially important materials have a range of uses from Swiss watches to high-speed trains, but why these materials exhibit such a counter intuitive behavior has been a puzzle for many decades,”
「マグノンーフォノンカップリングのアイデアは、アンバー材の独特に低い熱膨張率の考えられる解釈として既に存在していました。これらの工業的に重要な材料は、スイス時計から高速列車まで幅広い利用がありますが、これらの材料が何故そのような反直感的な振る舞いを見せるのかは、何十年もの間、謎でした。」
magnon-phonon coupling = マグノン・フォノン結合、フォノンーマグノン結合でも良いと思いますが、順序も守った方がいいかもしれません。
While the coupling was rarely observed before, this is the first time that it has been quantified in manganite crystal: “It is a weak coupling and present only in some materials, because it needs a particular triangular atomic architecture. It also conflicts with the mainstream belief that magnons and phonons are stable over time. This could explain why the coupling has never been carefully analyzed before, and why most scientists have ignored it,” comments the professor.
「カップリングは、過去にもまれに観測されてはいましたが、今回マンガナイト結晶で初めて定量化されました。”それは弱い結合であり、特殊な三角形原子構造が必要なので、一部の物質にしか存在しません。また、それは、マグノンとフォノンが長期に渡って安定的という主流の意見と相反してもいます。この事が、カップリングが過去に十分に分析されてこなかった理由と、ほとんどの科学者がそのことを無視してきた理由を説明してくれています。と教授はコメントしています。”」
マグノンーフォノン結合については過去にも観測はされてきているようですが、その現象について深く調べる研究者はあまりいなかったみたいです。この研究成果が、マルチフェロイクスの分野においてかなり貢献できるようなので、モノポールやスキルミオンの研究にも応用できるのかもしれません。
In the future, the team would like to study this coupling in other materials and ideally demonstrate that one can artificially convert phonons into magnons and vice versa.
「将来的に、チームは他の材料でこのカップリングを研究し、人工的にフォノンをマグノンへ、マグノンをフォノンへの変換の実証を夢見ています。」
would like to idealy = 理想的に~したい(夢想する)
人工的にこの現象を起こせれば、この人工フォノン・マグノン結合を、新しい磁気メモリなんかに利用できるようになるかもしれません。