新種の材料が量子計算を実現するかも!?

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とパウル・シェラー研究所(PSI)の科学者が、スピントロニクスへの実装に理想的である事が立証可能な新しいクラスの材料を発見したという事です。スピントロニクスは電子のスピンを利用していて、電子スピンとは一般的に、自身の軸の周りの電子の回転運動(歳差運動)を指します。

材料中で、電子は原子核の周りも軌道を描いて回っています。これら2つの電子運動、スピンと軌道が相互に作用する時、それらは局所的に非常に強力な磁場を生み出します。このため、スピンは、MRI(磁気共鳴映像法)、NMR(核磁気共鳴)分光法、ハードディスク・ドライブに使われています。科学技術の新興分野であるスピントロニクスは、次世代の省電力電子機器と大容量メモリセルを開発するためにスピン軌道相互作用を探求しています。

シュレーディンガーの猫

A new class of materials could realize quantum computers

In a classical picture spin exists in either of two directions: “up” or “down”, which can be described respectively as the clockwise or counter-clockwise rotation of the electron around its axis. However, the full picture is even more fascinating; the spin is a quantum property of the electron and can thus be in a superposition of up and down. Similar to the picture of Schrödingers cat being alive and dead at the same time. This makes a controllable spin state also a promising aspect for quantum computers.

「古典的描像において、スピンは、自軸周りの電子の時計回りか反時計回りの回転として個々に表現され得る、上向きか下向きのどちらか一方向にのみ存在します。しかし、全体像はさらにもっと興味深く、スピンは電子の量子性質なので、アップとダウンの重ね合わせで存在可能です。シュレディンガーの猫が同時に二つの状態にいるイメージに似ています。この事が、制御可能なスピン状態を量子計算機の前途有望な特徴にしています。」

シュレディンガーの猫はあまりにも有名です。

マルチフェロイクス材料

Hugo Dil at EPFL together with Juraj Krempasky and Vladimir Strocov at the Paul Scherrer Institute led a study on the electronic and spin structure of a material made of Germanium and Tellurium (GeTe) and doped with Manganese (Mn). It belongs to the small class of multiferroic materials where (ferro)magnetic and (ferro)electric properties are directly coupled. In this material the combination of spin-orbit interaction and magnetism produces some exotic properties which were sought for by researchers world wide, but no for the first time are experimentally identified.

「EPFLとPSIの研究者が、ゲルマニウムとテルル(ゲルマニウム・テルル)にマンガンをドープして作られた材料の電子構造とスピン構造に関する研究を主導しました。それは、強磁性と強誘電性が直に結合されているマルチフェロイック材料の小さなクラスに属しています。この材料において、スピン軌道相互作用とスピン軌道磁性の組み合わせが、世界中の科学者が探し求めるも、未だ実験的に確認されていない、いくつかのエキゾチックな特性を作り出します。」

multiferroic material = マルチフェロイクス物質

強誘電性と強磁性を併せ持った材料の研究は今熱いみたいです。

For their study, the researchers used thin films of the GeTe material, each about 200 nm thick. The researchers used a technique called photoemission, which uses the photoelectric effect predicted by Einstein and with which Dil’s lab has longstanding expertise.

「彼等の研究に、研究者は、厚さがそれぞれ約200ナノメートルのゲルマニウム・テルル材料の薄膜を使い、アインシュタインによって予見されていた光電効果を用いた、Dilのラボが積年の専門知識を有している、光電子放出と呼ばれる技術を使いました。」

光電効果は、アインシュタイン博士が若干26歳の1905年に解明され、その功績により、博士は1921年にノーベル物理学賞を受賞しています。1905年はアインシュタイン博士の奇跡の年と言われている、光量子仮説、特殊相対性理論、ブラウン運動に関する論文を立て続けに提出した年でもあります。まさに人類史上最高クラスの天才です。

ラシュバ半導体

The study revealed the intertwined nature of the electric and magnetic properties of the new class of materials, which are termed “multiferroic Rashba semiconductors” (Rashba refers to the type of spin separation). “In multiferroic materials the electric and magnetic properties are directly linked,” explains Hugo Dil. “So when we switch one the other is affected too, which paves the way to future spintronic devices, since we can switch the magnetic orientation using just a small electrical field.”

「研究は、マルチフィロイックラシュバ半導体(ラシュバはスピン分離の一種を指してます)と名付けらた、新しい種類の材料の電気的特性と磁気特性の相互に密接に絡み合った性質を明らかにしました。”強誘電性と強磁性を併せ持った材料では、電気物性と磁性は直接結び付いています。”とHugo Dilは説明する。”なので、我々が1つを切り替えると、他も影響を受け、我々がほんの小さな電場を使って磁気方向を切り替えることができるので、それが将来のスピントロニクスデバイスへの道を開いてくれます。”」

ラシュバ半導体とは、半導体表面上で電子のコマ回し

表面での「空間反転対称性の破れ」と「表面電場の効果」により、電子スピンについて面白いことが起こる。この効果は、ラシュバ効果と呼ばれている。表面の面内方向(表面に並行な方向)については、電子の軌道状態を波数ベクトルにて区別することができる。波数ベクトルは、1つの電子の運動量を表しており、電子の速度のようなものと思ってもらってもよい。ラシュバ効果とは、電子のスピン軸が波数ベクトルの方向に垂直でしかも表面に平行に向いており、同じ波数ベクトルをもつ電子を比較すると、スピンが向く方向によりその電子のエネルギーが異なっているのである。

ラシュバ効果を有する半導体がラシュバ半導体のことらしく、代表的な物にBiTeI(ビスマス・テルル・ヨウ素)があるようです。

マヨラナ粒子

On a more fundamental level, the GeTe compound used in this study shows that the electric and magnetic polarization are exactly antiparallel, unlike the few other known multiferroic materials. Furthermore, the properties extend throughout the whole of the material and are not confined to a small region. This has far-reaching implications for the way its electronic states are structured. As Hugo Dil explains: “In this case the electronic structure is similar to that of topological insulators, but then in 3D. Exactly this property forms the basis for the formation of Majorana particles to be used in quantum computers.”

「もっと基本的なレベルで、この研究で使われたゲルマニウム・テルル化合物は、電気分極と磁気分極が、他の少数のマルチフェロイック物質とは違い、きっちりした反平行を見せています。さらに、その特性は、材料全体にわたって広がっていて、小さな領域に限定されていません。この事が、その材料の電子状態が構造化される状況に広範囲にわたって影響を与えています。Dilが説明しているように”このケースでは、電子構造は、位相絶縁体のそれに似ているのですが、3次元での話です。まさに、この特性が、量子コンピュータに利用するためのマヨラナ粒子生成のための基礎を形作っています。”」

マヨラーなら聞いたことがあるのですが、マヨラナ粒子は初めて耳にする言葉なので、何なのか調べてみました。マヨラナ粒子とは

通常、物質を構成するフェルミ粒子には反粒子が存在し、ディラック粒子と呼ばれています。特に電荷を持った粒子には反対の電荷を持つ反粒子が必ず存在します。電荷を持たない粒子には、粒子と反粒子との区別が付かないもの(マヨラナ粒子と呼ばれる)も存在出来ることが指摘されており、フェルミ粒子の中では、電荷をもたないニュートリノだけがマヨラナ粒子である可能性があります。ニュートリノがマヨラナ粒子なのか、ディラック粒子なのかは現在も大きな謎として残されています。シーソー機構という理論は、ニュートリノが他の基本粒子に比べて極端に軽い理由を自然に説明できますが、そこではニュートリノがマヨラナ粒子であることが前提となっています。

どうやら、マヨラナ粒子は、ニュートリノのことを指しているようです。ニュートリノを量子コンピューターに利用するみたいです。

今回の研究は、マンガンでドープしたゲルマニウム・テルルという新しいクラスの強磁性と強誘電性を兼ね備えた材料が有する、ラシュバ効果によるマヨラナ粒子生成により、次世代量子コンピュータ実現の可能性を導き出した研究のようです。