2個の電子が量子ウォークしてキューディットに!

ロシア科学アカデミー物理工学研究所とモスクワ物理工科大学の研究者が、キュービット(量子ドット)より高次元量子計算機記憶素子を作る目的で、量子ドット系で、2個の電子を解き放ちました。Scientific Reportsに掲載された論文で、複数個電子の量子ウォークが量子計算を可能にする仕組みを明かしています。量子ウォークとか聞いたことがなかったので、どういうものなのか気になったのでちょっと調べてみました。

1次元フォトニック量子ウォークにおける隠れたトポロジカル相の解明

量子ウォークとは、スピンなどの内部自由度を持つ粒子に対して、内部自由度を変えるコイン演算子と内部自由度に応じて位置を変えるシフト演算子からなる時間発展演算子を、繰り返し印加することによる粒子の時間発展現象である。量子ウォークは周期的な外力を印加する系と見なすことができることから、フロッケ・トポロジカル相と関係付けることができる。

なるほど、つまり、フロッケトポロジカル相と関係があるみたいです。

量子コンピュータ

Two electrons go on a quantum walk and end up in a qudit

“By studying the system with two electrons, we solved the problems faced in the general case of two identical interacting particles. This paves the way toward compact high-level quantum structures,”

「2個の電子を使ってその系を研究することによって、2個の相互に作用し合う同一粒子の一般的なケースで直面する問題を解決しています。この事が、コンパクトな高水準の量子構造への道を切り開いてくれています。」

量子コンピュータは、ほんの数時間で、ウェブブラウザで使われている最もポピュラーな暗号システムさえも、数時間のうちに解読するだろうと言われています。もっと善良なアプリに関する限り、量子コンピューターは、関係する全粒子間の全ての相互作用を考慮に入れた分子モデリングが可能です。この事が、言い換えれば、高効率の太陽電池や新薬などの開発を可能にしてくれます。実用的なアプリを持つためには、量子計算機は、数百か数千に及ぶキュービットを組み込む必要があり、その事がそれを扱い難くしています。

キュービットと重ね合わせ

結局のところ、キュービット間の接続の不安定性が、量子計算に粒子の量子ウォークを使うことを妨げている大きな障害になっています。それらの古典的な類似物とは違って、量子構造物は、外部雑音に対して極めて敏感です。数個のキュービットから成るシステムがそれに保存されている情報を失わないようにするために、液体窒素(やヘリウム)を冷却用に使う必要があります。個々のキュービットの実験的な実現のための多くのスキームが提案されています。初期の研究で、量子トンネルで接続された量子ドットとして知られている2個の極小半導体間を量子ウォークする粒子として、キュービットを物理的に実装できることを実証しています。電子の視点から見れば、量子ドットは、ポテンシャル井戸ということになります。従って、電子の位置は、キュービットの2つの基礎状態、粒子がどっちの井戸にいるかどうかで決まる|1⟩と|0⟩をエンコードするのに利用できます。2個の井戸の1つを占有しているというよりは、電子は、2つの異なる状態の間を塗り潰している状態にあり、その座標が測定された場合のみ明確な位置を占有しています。すなわち、2つの状態のスーパーポジション(重ね合わせ状態)にあるということです。

もし、エンタングルされた状態(もつれた状態)が、数個のキュービット間に作り出された場合、それらの個々の状態は、お互いに切り離して記述されることはできなくなり、あらゆる有効な記述は、全系の状態を参照していなければなりません。この事は、キュービット3個の系が、全部で8つの基礎状態を持ち、それらの重ね合わせにいる事になります。

A|000⟩+B|001⟩+C|010⟩+D|100⟩+E|011⟩+F|101⟩+G|110⟩+H|111⟩

キューディット、キュークォート

その系に影響を及ぼす事で、1つが最終的に8つ全ての係数に影響を及ぼすのに反して、普通のビットの系に影響を及ぼしても、それらの個々の状態に影響するだけです。nビットがn個の変数を保管できる一方で、nキュービットは2n個の変数を保管できるという意味です。キューディットはさらに大きな強みがあって、n4レベルキューディット(巷ではキュークォートとも言う)は、4n、あるいは、2×2n個の変数をエンコード可能です。分かり易く言うと、10キュークォートは、10ビットの約10万倍の情報を保存可能ということになります。nの値が増えると、この数字中の0はすぐに膨れ上がります。

今回の研究の中で、研究者は、所謂、閉路グラフの周りを量子ウォークしている2個のもつれた合った電子として実装されているキュービット2個から成る系を獲得しています。1つを作り出すために、科学者は、円を形成する点を結ぶ必要がありました(今度もこれらは量子ドットで、それらは、量子トンネルと呼ばれる効果で接続されています)。2個の電子のもつれは、電荷のようなものによって受ける相互の静電反発力がもたらしています。同じ量の半導体材料中にもっと多くのキュービットの系を作り出すことが可能です。これを達成するには、曲がりくねった経路パターンで量子ドットを接続し、もっと多くの動き回っている電子が必要です。量子計算への量子ウォークアプローチは、それが自然過程に基づいているので都合が良いと言えますが、それにもかかわらず、同じ構造中の2個の同一電子の存在は、未解決のままになっていた付加的な問題を作り出していました。

粒子もつれ現象は、量子情報処理において極めて重要な役割を果たしています。しかし、同一粒子を用いた実験で、相互に作用していない電子間に生じる、所謂、偽エンタングルメント(偽もつれ)と正真正銘のもつれを区別する必要があります。これを成し遂げるために、科学者は、双方の場合のための、すなわち、エンタングルメントがある場合とエンタングルメントがない場合のための数学上の計算を実行しました。彼等は6,8,10,12ドットを持ったケース用、すなわち、それぞれ3,4,5,6レベルを持った2個キュービットシステム用の確率分布変化を観測しました。

量子計算が普通の世界

人々が、万能量子計算機(汎用量子コンピュータ)を構築しようと初めて着想してからかなりの年月が経ちますが、今までのところ、人類は、十分な数のキュービットを接続できないでいます。ロシア人研究者達の今回の研究は、量子計算が平凡なことになっている未来に、人類を一歩近付けてくれています。そして、量子コンピューターでも加速不可能なアルゴリズムが存在してはいますが、他の処理は、なお、多数のキュービット、あるいは、キューディットの潜在能力を巧く利用できるデバイスから大いに恩恵を受けることができるはずです。このことだけでも、人類が数千年をセーブするのには十分なのです。

qubits以外にも、quditsとか、four-level quditsのququartsとかあるみたいです。量子計算機の世界は奥がかなり深そうです。

qubit = キュービット、qudit = キューディット、ququart = キュークォート、もちろん、qutrits (qutrit) = キュートリットも存在します。