光合成藻類は、数百万年の間、受光技術(集光能力)を洗練しています。結果として、こういった藻類は、科学者達が、再生可能エネルギーに応用するために理解して真似ることを長い間熱望している、強力な集光システム(エネルギーに変えるために光を吸収するたんぱく質)を持つに至っています。現在、プリンストン大学の研究者たちが、Chroomonas mesostigmaticaというクリプト藻類の集光率を高めるメカニズムを明かしています。
12月8日号のChem誌に掲載されたこの研究結果が、分子センサーや太陽エネルギー収集器(太陽光集熱器)等の、人工集光システム設計用の貴重な見識を提供しています。
クリプト藻類
Ultrafast lasers reveal light-harvesting secrets of photosynthetic algae
クリプト藻類は、太陽光線の大部分を吸収する生物の下に住んでいます。これに対処するために、その藻達は、上の隣人達に吸収されない、主に黄緑色の波長を使ってうまく成長できるように進化してきました。藻達は、この黄緑色の太陽光を、分子のネットワークを介して、クロロフィル分子が光合成を行うのに必要な赤色光に変換しています。
そのシステムを介したエネルギー変換速度は、非常に感心させられるのと同時に当惑もさせられます。そのエネルギーが、たんぱく質を移動するタイムスケールが、何故そんなに速いのかが、研究者達には全く理解不能だったからです。
量子コヒーレンス
In 2010, Scholes’ team found evidence that the culprit behind these fast rates was a strange phenomenon called quantum coherence, in which molecules could share electronic excitation and transfer energy according to quantum mechanical probability laws instead of classical physics. But the research team couldn’t explain exactly how coherence worked to speed up the rates until now.
「2010年、スコールズのチームは、この高速度の原因が、分子が、古典物理学の代わりに、量子力学的な確率法則に従う、電子励起と移動エネルギーを共有可能な量子コヒーレンスと呼ばれている不可思議な現象にある事を発見しました。しかし、その研究チームは、量子コヒーレンスがどのようにして、変換速度をスピードアップさせているのか、現在に至るまで、正確に説明することができずにいました。」
今回の研究で、研究者達は、超高速レーザー技術を使い、さらに、試料のたんぱく質を低温に冷却することで、当該システムにおける、分子の光吸収と、エネルギーの流れを、実質的に追跡できました。研究者たちは、エネルギーが分子から分子へ、高エネルギーの緑色光から低エネルギーの赤色光に変換される過程で、余分なエネルギーが振動エネルギーとして失われているのを観測しています。
振動共鳴・振動調和
These experiments revealed a particular spectral pattern that was a ‘smoking gun’ for vibrational resonance, or vibrational matching, between the donor and acceptor molecules,
「これらの実験が、ドナー・アクセプター分子間の振動共鳴、もしくは、振動の調和に対する動かぬ証拠である、特有のスペクトルパターンを明らかにしています。」
この振動調和が、さもなければ、分子間励起の分配によって転用されるよりもはるかに高速に、エネルギー移送を可能にしてくれています。この作用が、前回報告された、量子コヒーレンスを説明するためのメカニズムを提供してくれました。このエネルギー再分配を考慮に入れ、研究者は、彼等の予測を再計算し、約3倍高速の速度に落ち着いています。
“Finally the prediction is in the right ballpark,” Scholes said. “Turns out that it required this quite different, surprising mechanism.”
「”ようやく予測が正しい場所に落ち着いています。”とスコールズは言った。”この全く異なった、予期しないメカニズムが要求されることが判明しました”」
スコールズの研究室は、このメカニズムが、他の光合成生命体でも働いているのかどうかを調査するために、同類のたんぱく質を研究する予定です。最終的に、科学者達は、こういった、細かに調整され、かつ、頑強な集光性たんぱく質から、ヒントと設計方針を得ることで、完璧なエネルギー移送を持った集光システムを作り出すことを願っています。
“This mechanism is one more powerful statement of the optimality of these proteins,”
「このメカニズムは、この種のたんぱく質が有する最適性に関しての、もう1つの強力なステートメントになっています。」
光合成藻類の、吸収太陽光における、黄緑色光から赤色光の高速エネルギー変換(エネルギー輸送)は、特殊なたんぱく質が可能にしてくれているようです。今後こういったたんぱく質を人工的に作り出して、超高効率な人工光合成を可能にする集光システムが開発される可能性があるっぽいので、かなり楽しみな研究であると言えます。