ハーバード大学工学応用科学部の研究者達が、ピンクダイヤモンドの原子スケール欠陥の集合体から作られた、世界最小のラジオ受信機を作り出しました。構成ブロックが原子2個の大きさのこの極小ラジオは、超過酷な環境に耐えることができ、生体適合性があるので、金星探査機から人心臓のペースメーカーまでどこにでも利用可能です。
原子2個分の大きさのラジオとか、イマイチ感覚が掴めませんが、どうやって操作するのか興味があります。周波数を合わせるつまみとかあるんでしょうか。
窒素空孔中心(窒素欠陥中心)
World’s smallest radio receiver has building blocks the size of 2 atoms
The radio uses tiny imperfections in diamonds called nitrogen-vacancy (NV) centers. To make NV centers, researchers replace one carbon atom in a diamond crystal with a nitrogen atom and remove a neighboring atom — creating a system that is essentially a nitrogen atom with a hole next to it. NV centers can be used to emit single photons or detect very weak magnetic fields. They have photoluminescent properties, meaning they can convert information into light, making them powerful and promising systems for quantum computing, phontonics and sensing.
「今回新たに開発されたラジオは、窒素・空孔中心(窒素-欠陥中心)と呼ばれている、ダイヤモンド中の極小の欠陥を利用しています。窒素空孔センターを作るために、研究者たちは、ダイヤモンド結晶内の1個の炭素原子を、1個の窒素原子で置き換え、その隣のアトムを取り除き、基本的に、隣に空孔を持った窒素原子系を作り出しています。窒素欠陥センターは、単一光子の放出や微弱磁場の検出用に利用可能です。それらは光輝性を有しているので、情報を光に変換できることを意味しており、それらを、量子計算、フォントニクス、センシング用のパワフルで将来有望なシステムにしています。」
phontonics (フォントニクス) は、photonics (フォトニクス) の綴ミスかと思いましたが、どうやら、フォントニクス技術なるものが実際に存在するみたいです。
ラジオには5個の基本部品
ラジオは、電源、受信機、空気中の高周波電磁信号を低周波電流に変換するための変換器、その低周波電流を音に変換するためのスピーカやヘッドフォン、チューナー(波長変調器)の5つの基本構成部品を持っています。
原子2個の大きさに、これだけの部品を詰め込むことが可能なのは驚きです。
今回開発されたハーバードのデバイスでは、ダイヤモンド窒素欠陥中心の電子は、レーザーから放出される緑色光によって駆動、あるいは、ポンピングされています。これらの電子は、例えば、FMラジオで使われている波動も含めた電磁場に反応しやすいです。NVセンターが電波を受けると、それらを変換して、赤色光として音声信号を発し、それはその後、簡素なスピーカーやヘッドフォンを通して音に変換されます。
この新開発のラジオは、緑色レーザー光によって駆動されているようです。
磁場で放送局チェンジ
An electromagnet creates a strong magnetic field around the diamond, which can be used to change the radio station, tuning the receiving frequency of the NV centers.
「電磁石は、ダイヤモンドの周囲に、ラジオ放送局を変えたり、NV中心の受信周波数を同調するのに利用可能な、強力な磁場を作り出します。」
信号を増幅するために、数十億のNVセンターが使われているみたいですが、今回のラジオは、光のストリームというよりも、1度に1個ずつ光子を放出する、単一NV中心で動いているようです。当該ラジオは、ダイヤモンド本来の強度のおかげで、とにかくやたら打たれ強いです。チームは、摂氏350度(華氏約660度)で音楽をプレイしています。
“Diamonds have these unique properties,” said Loncar. “This radio would be able to operate in space, in harsh environments and even the human body, as diamonds are biocompatible.”
「”ダイヤモンドは、こういったユニークな性質を持っています。”と、ロンカーは語りました。”今回我々が開発したこのラジオは、宇宙空間などのかなり過酷な環境で使え、ダイヤモンドが生体適合性なおかげで、人体内でさえ動作可能です。”」
信号増幅用に、数十億のNVセンターを使っているのに、1個のNVセンターでラジオが機能しているという下りがイミフですが、何れにしても、世界最小のラジオであることは間違いないみたいです。原子2個分サイズのラジオがどう使われるのか楽しみです。