米国標準技術局 (NIST) の科学者達が、水素原子の直径よりも短い、もしくは、人毛の幅の100万分の1にも満たない、ほとんど想像を絶するほどの短い距離を横切る、超極小粒子の動きを測定する新しい装置を開発に成功したそうです。その携帯端末は、かつてない正確さで自身の微小部品の原子スケールの動きを感知できるだけではなく、研究者は、その高感度計測ツールを大量生産するための方法も、既に考案しているみたいです。
今回の研究の詳細は、Nature Communications誌12月6日号に掲載されました。
高感度計測ツール
Device for detecting subatomic-scale motion
It’s relatively easy to measure small movements of large objects but much more difficult when the moving parts are on the scale of nanometers, or billionths of a meter. The ability to accurately measure tiny displacements of microscopic bodies has applications in sensing trace amounts of hazardous biological or chemical agents, perfecting the movement of miniature robots, accurately deploying airbags and detecting extremely weak sound waves traveling through thin films.
「大きい物体の小さな動きを測定することは比較的簡単ですが、作動部分がナノメートル規模の場合、測定は困難を極めます。微小体の僅かな移動を正確に計測できる能力は、微量の有害な生物エージェントや化学物質の感知、小型ロボットの動作仕上げ、正確なエアバッグ設置、薄膜を通過する微弱音波検知の分野に用途を持っています。」
この高感度計測ツールは、色々な用途に応用できるみたいで、既に量産体制にあることを考えると、この機能が、そのうちスマホなんかにも搭載されるんではないでしょうか。
研究者達は、金ナノ粒子におけるサブアトミックスケール(亜原子規模)動作を計測しました。彼等は、金ナノ粒子・金シート間に、約15ナノメートル幅の小さなエアギャップ(空隙)を工作することで、この事を成し遂げました。この隙間は極小なため、レーザー光線すら貫通できません。
レーザービームですら通れないほどの超微小ギャップを作り出したようです。
表面プラズモン
しかし、電子の集団の波状運動である表面プラズモンによって励起された光は、金表面と空気の間の境界に沿って移動するように制限されました。
表面プラズモンとは何なのか?光と磁気の相互作用を利用したデバイスの研究
表面プラズモンとは金属の表面で電子が集団で振動していることで、金属と誘電体の界面に光が入射されると電子の振動を励起します。励起された電子がさらに電磁波(光)を生じ、隣の電子を励起します。これを繰り返すことで金属の表面を光が伝播していきます。
表面プラズモンは、金属表面での電子の集団振動みたいです。
The researchers exploited the light’s wavelength, the distance between successive peaks of the light wave. With the right choice of wavelength, or equivalently, its frequency, the laser light causes plasmons of a particular frequency to oscillate back and forth, or resonate, along the gap, like the reverberations of a plucked guitar string. Meanwhile, as the nanoparticle moves, it changes the width of the gap and, like tuning a guitar string, changes the frequency at which the plasmons resonate.
「研究者達は、光波の連続する頂点間の距離である光の波長を利用しました。波長、もしくは、同等に、それの周波数の正しい選択により、レーザー光線は、引っ張ったギターの弦のように、ギャップに沿って往復振動する、または、共振する特定周波数のプラズモンをもたらします。その一方で、ナノ粒子が動くに連れて、それは、ギャップの幅を変え、ギターの弦をチューニングするように、プラズモンが共振する周波数に変わります。」
プラズモンは光より高感度
レーザー光線とプラズモンの間の相互作用は、ナノスケール粒子の僅かな位置ずれを検出するのに必要不可欠です。光は、レーザーの波長より小さい物体の位置や動きを簡単には検知できませんが、光をプラズモンへ変換することでこの制限を克服できます。プラズモンが微小ギャップに閉じ込められているおかげで、それらは、金ナノ粒子のような、かなり小さい物体の動きを感知するのには、光よりも感受性が高い(高感度)です。
光をプラズモンに変換することで、極小粒子の極小動作を測定可能にしているようです。
The amount of laser light reflected back from the plasmon device reveals the width of the gap and the motion of the nanoparticle. Suppose, for example, that the gap changes—due to the motion of the nanoparticle—in such a way that the natural frequency, or resonance, of the plasmons more closely matches the frequency of the laser light. In that case, the plasmons are able to absorb more energy from the laser light, and less light is reflected.
「プラズモンデバイスから反射したレーザー光線の量が、そのギャップの幅とナノ粒子の動きを明らかにしてくれます。例えば、そのギャップが、プラズモンの固有振動数または共振(共鳴)が、レーザー光線の周波数とより厳密に一致するような形で、粒子の動きが原因となって、変わると想像してみて下さい。その場合、プラズモンは、レーザー光線からより多くのエネルギーが吸収でき、結果として、反射される光量は減少します。」
ナノスケール計測
実用的なデバイスでこの動作検知技術を使うために、研究者達は窒化ケイ素製の数マイクロメーター長の、小型飛込板のような振動カンチレバーである、微小スケールの機械構造に金ナノ粒子を埋め込みました。作動していなくても、そういったデバイスは完全に静止せずに、それらの分子のランダム運動によって室温で高周波で振動しています。その振動の振幅は僅か(原子より小さい距離を動く)にもかかわらず、新しいプラズモン技術を使えば簡単に検知できます。同様の、一般的にもっと大きいですが、機械構造は、科学的計測や実用センサー(例えば、車やスマホで動きや位置を検出する)双方によく使われています。NISTの科学者たちは、ナノスケールで動きを計測するためのこの新しい手法が、多くのこういった微小機械的なシステムのさらなる小型化や性能向上に役立つことを希望しています。
スマホに内蔵したり、車載したりして、実際に似たようなセンサーが使われているみたいですが、今回の新しいセンサーは、より高精度でセンシングできるので、ナビゲーションシステムの性能が向上したり、スマホの超微妙な動きにも反応するシステムを使ったゲームやアプリが作れるようになるのかもしれません。かなり期待が持てる技術です。
プラズモン共振器
“This architecture paves the way for advances in nanomechanical sensing,” the researchers write. “We can detect tiny motion more locally and precisely with these plasmonic resonators than any other way of doing it,”
「”このアーキテクチャは、ナノ機械検知分野の発展のために道を開いてくれます。”と研究者達は書いています。”我々は、このプラズモン共振器を使って、それを行うための他のどんな方法よりも、局所的かつ正確に僅かな動きを検知することができます。”」
The team’s fabrication approach allows production of some 25,000 of the devices on a computer chip, with each device tailored to detect motion according to the needs of the manufacturer.
「チームの製造手法が、それぞれのデバイスがメーカーのニーズに従って動作を検知するように調整してある、約25000のオンチップデバイスの生産を可能にしています。」
製造業者のニーズに応じてカスタマイズ可能で、さらに既に量産体制に入っている、この超高感度表面プラズモン共振器デバイスの値段がいくらぐらいするのか興味があります。