MINFLUX、蛍光顕微鏡の究極解像度を達成!

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それは、光学顕微鏡法の聖杯(渇望の品)です。すなわち、この手法の分解能を、密集している分子を、個別に識別できるように向上させることです。ゲッティンゲンにあるマックス・プランク生物物理化学研究所のノーベル賞受賞者シュテファン・ヘル氏の周囲にいる科学者達が現在、長い間不可能と考えられていた事を成し遂げています。

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MINFLUX顕微鏡

Researchers achieve ultimate resolution limit in fluorescence microscopy

彼等は、互いにほんの数ナノメーター (ミリメーターの100万分の1)しか離れていない分子を光学的に分離する事を初めて可能にする MINFLUXと呼ばれる新しい蛍光顕微鏡を開発しました。この顕微鏡は、従来の光学顕微鏡よりも100倍シャープ(鮮明)で、今までで最高の超高解像度を誇る光学顕微鏡観察法、すなわち、ヘル氏によって開発された STED (Stimulated Emission Depletion:誘導放出抑制)とノーベル賞受賞者エリック・ベツィグ氏によって説明されているPALM/STORMさえも最大で20倍上回ります。MINFLUX に対して、ヘル氏は、STED と PALM / STORM の長所を、全く新しい発想で利用しています。この革新的な大発明は、研究者たちが、生命が、分子のレベルで機能する仕組みを研究するための、新たな機会の扉を開いてくれています。

”我々は、蛍光顕微鏡で実現し得る究極限界である、各分子の直径に相当する、ナノメーター分解能を、MINFLUXを使ってごく普通に達成しています。”と、マックス・プランク生物物理化学研究所所長ヘル氏は説明しています。”私は、MINFLUX顕微鏡が、細胞生物学の最も基本的なツールの1つになる可能性を秘めていると確信しています。このコンセプトによって、分子詳細で細胞をマップ化し、リアルタイムで細胞内部の素早いプロセスを観測することが可能になるはずです。この事が、生きた細胞で起こっている分子過程に関する我々の知識に革命をもたらしてくれるかもしれません。”

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アッベ限界

The Göttingen physicist, who also works at the Max Planck Institute for Medical Research and the German Cancer Research Center in Heidelberg, has long been convinced that fluorescence microscopy resolution can be increased down to the dimension of individual molecules – with classical use of focused light and conventional lenses.

「マックス・プランク医学研究所とハイデルベルクにあるドイツがん研究センターでも勤務しているこのゲッティンゲン物理学者は、蛍光顕微鏡分解能が、収束光と従来型レンズの伝統的利用法で、各分子の大きさまで高められ得ると長い間確信してきました。」

In fact, the physicist Ernst Abbe had formulated in 1873 that the resolution of light microscopes is limited to half the wavelength of light, which is about 200 nanometers. More than 100 years later, this Abbe limit is still valid. However, Hell was the first to show that this limit can be overcome with STED microscopy, which he conceived in 1994 and established experimentally five years later.

「事実、エルンスト・アッベは、1873年に、光学顕微鏡の解像度が、約200ナノメートルである光の半波長に制限されることを明確に説明しています。100年以上経っても、このアッベ限界は未だに健在です。しかし、ヘル氏は、この限界が、彼が1994年に着想して、5年後に実験的に確立したSTED顕微鏡で克服可能な事を初めて証明しました。」

※Abbe limit = Abbe diffraction limit = アッベ回折限界

STEDとそれから数年後に開発されたPALM/STORMは、実際には、アッベ限界を約10倍上回る、約20~30ナノメートルの分離精度を達成しています。こういった極高分解能光学顕微鏡の開発の功績により、ヘル氏とベツィグ氏は、ウィリアム・モーナー氏とともに2014年にノーベル化学賞を共同受賞しています。

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STED and PALM/STORM

STEDと PALM/STORM はどちらも、それらが、蛍光を連続して放出できるように、交互にそれらのスイッチをオン・オフする事で、隣接した蛍光性分子を分離しています。しかし、当該手法は、1つの決定的な点で違っています。それは、STED 顕微鏡が、試料中の固定位置、換言すれば、ドーナツの中心を除く焦点領域内のあらゆる場所で、分子蛍光をオフにするためにドーナツ型レーザー光線を使っているという事です。その利点は、ドーナツビームが、対応する発光分子が、空間中のどのポイントに位置しているのかを正確に明示できることです。不利点は、実際面では、そのレーザービームは、ドーナツの中心で単一分子にエミッションを限定するには、強度不足だという事です。PALM/STORMの場合、これに反して、スイッチ切り替えはランダムロケーションで単一分子レベルです。ここでのその利点は、1つは、既に単一分子レベルで機能しているということですが、不利な面は、空間での正確な分子の位置が分からないという事です。その位置は、カメラでできるだけ多くの光子を収集することで、探し出される必要があります。5万個以上の検出光子が、10ナノメートル未満の分解能を実現するために要求されています。実際問題として、従って、分子(1ナノメーター)分解能を日常的に実現することは不可能です。

ヘル氏は、新しい構想において、両方法の強みを独自に組み合わせるための考えを持っていました。”このタスクは、簡単なものではありませんでしたが、私の同僚達が、私と一緒に、このアイデアを実験的に実践する素晴らしい仕事をしてくれました。” MINFLUX (MINimal emission FLUXes)と呼ばれている、彼等の新しい技術は、現在、サイエンス誌に、筆頭著者として3人の若手科学者と共にヘル氏によって発表されています。

PALM/STORM同様、MINFLUXは、個々の分子をランダムにオン・オフしますが、同時に、それらの正確な位置が、STEDのようにドーナツ型レーザービームを使って割り出されています。STEDとは対照的に、そのドーナツビームはここでは、蛍光発光を励起しています。もし、当該分子が、リング上にあれば、それは輝きます。もし、きっちりダークセンターにあれば、それは発光しませんが、それの正確な位置は見つけ出せます。研究者は、この位置を、高速かつ高精度で見つける事ができる、かなりクレバーなアルゴリズムを開発しています。”このアルゴを使って、ドーナツ励起ビームの可能性を利用することが可能です。”と、その若い科学者は説明してます。分子分解画像を得た研究者が、”私達が、初めて、MINFLUXを使って、数ナノメートルのスケールで詳細に識別できたことは神ってるとしか言いようがありませんでした。”と付け加えています。

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100倍精度分解能

分子分解能に加えて、STEDとPALM/STORMの組み合わせは、さらなる大きな利点を与えてくれています。”MINFLUXは、相対的にはるかに高速です。それが、ドーナッツレーザー光線を使って機能しているので、はるかに少ない光信号を必要としています。すなわち、究極解像度実現のために、PALM/STORMと比べて1分子当たり、より少数の蛍光光子が必要だという事です。”とヘル氏は述べています。既にSTEDを使って、生体細胞内のリアルタイムビデオを記録可能です。しかし、別の研究員が強調しているように、今現在は、100倍優れた時間分解能で、細胞内の分子の動きを追跡することが可能になりました。彼は、MINFLUX を使って、過去に前例のない空間・時間分解能で、初めて、生きた大腸菌内の分子の動きを上手く撮影しました。”速度に関する限り、私達は、MINFLUXの可能性を最大限に生かしていません。”とエイラーズ氏が言っています。研究者達は、例えば、細胞ナノマシンやタンパク質折りたたみのような、生きた細胞内で超高速で起こっている変化さえも、将来研究できるようになることを確信しています。

2014年にノーベル化学賞を受賞したノーベル賞受賞者が、さらに自身が開発した画期的な大発明を改良して、史上類を見ない物凄い光学顕微鏡を作ったみたいです。人類の明るい未来に貢献すべく、日夜、文明・科学の進歩のために一生懸命頑張っている学者・科学者には感謝しても感謝しきれません。人間の素晴らしさを実感させられる記事でした。

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