トポロジカル絶縁体表面状態に逆スピンを初めて検出!

米国海軍研究所の科学者が、位相絶縁体(TI)セレン化ビスマス(III) (bismuth selenide, Bi2Se3) の位相的に保護されたディラック状態と、ヒ化インジウム (indium arsenide, InAs)表面の瑣末な2次元電子ガス(2DEG)状態で生じたスピン偏極の初の直接比較を報告しています。海軍研究所(NRL)の研究チームは、線形ディラック状態と放物線形2次元電子ガス表面準位由来の分極への寄与を明確に区別するために、2つの材料を厳選しました。全く同じデバイス構造と測定が、線形ディラック表面状態と2次元電子ガス表面準位の両方を兼ね備えていることで知られる位相絶縁体 Bi2Se3 とトリビアルな2DEG表面状態だけを示す普通の半導体InAsの各々に対して執り行われました。

スピン偏極(スピン分極)

NRL detects opposite spin in topological insulator surface states

それぞれのケースで、スピン偏極は、非偏極のバイアス電流によって自然発生させられていて、酸化物トンネル障壁を持った強磁性金属接点を使って検出されています。研究者達は、この2つの寄与が提供しているスピン分極のサインが逆なことを実証して理論予測を裏付け、InAsを将来の実験のための共通参照サンプルとして確立しています。

チームは、位相絶縁体表面状態に予想されているスピン電圧のサインを明確に導き出すために、スピン依存型電気化学ポテンシャルベースの詳細モデルも開発し、彼等の実験的観測と過去の理論的予測の裏付けもしています。

”スピン分極を電圧として直接検出し、これら2つの根本的に異なるシステムが提供する寄与を差別化することが、TI材料の基礎特性の理解と、それらを将来のデバイスアプリ用電子回路に融合させることの鍵になります。”と、今回の研究論文の筆頭著者コニー・リー博士が言及しています。研究主幹で実験責任者ベレンド・ヨンカー博士は、”このような2DEG状態とTIシステムの共存は、測定されたスピン電圧のサインに大きな論争を引き起しています。InAsは広く利用可能な簡単に準備できる参考見本で、世界中の研究グループが将来的に似たような分極測定のベンチマークとして使用できます。”と指摘しています。トポロジカル絶縁体は、バルクが名目上絶縁体なのに対し、表層が、周囲の揺動から位相的に保護されている、質量ゼロのディラック電子で占められる、線形分散金属状態に占有されている、物質の新しい量子相を成しています。

トポロジカル絶縁体(位相絶縁体)

この種の物質は、段階的にだけ変化する性質を説明する数学の一分野のトポロジー(位相幾何学)の研究から予測されました。2016年ノーベル物理学賞は、未来のエレクトロニクス、超伝導体を向上させ、量子コンピュータをもたらすかもしれない、今までにない量子的性質を発現する物質のエキゾチック相を研究するために位相的概念を利用しているという理由で、3人の物理学者に授与されました。

One of the most striking properties of topological insulators is that of spin-momentum locking—the spin of an electron in the TI Dirac surface state is locked at right angle to its momentum. This consequently implies that when an unpolarized charge current flows in the topologically protected surface states, a net electron spin polarization should spontaneously appear.

「位相絶縁体の最も顕著な性質の1つが、TIディラック表面状態の電子スピンが、それのモーメンタム(運動量)に対して垂直にロック(固定)される、スピンモーメンタムロッキング(スピン運動量固定化)です。この事が、非偏極電荷電流が、位相的に保護されている表面状態を流れる時、ネット(正味の、あらゆる要素をプラスマイナスした最終的な数値)の電子スピン偏極が自発的に現れるはずである事を必然的にほのめかしています。」

2DEG状態とTIディラック状態

Electrically accessing these states is sometimes complicated by potential band bending at the TI surface that may lead to charge accumulation and formation of trivial 2DEG states with parabolic energy dispersion. These 2DEG states nest within and coexist with the linear Dirac states, and may also generate a spin polarization due to strong Rashba spin-orbit coupling—a momentum-dependent splitting of spin bands in two-dimensional condensed matter systems. Their helical spin texture, or sign of the induced polarization, however, is predicted to be opposite to that of the TI Dirac states, and with smaller magnitude.

「こういった状態に電気的にアクセスすることは、電荷蓄積や放物線形のエネルギー分散を伴うトリビアルな2DEG 状態の形成の原因になる、TI 表面のポテンシャルバンドベンディングによって時々複雑化します。こういった2DEG 状態は内部に巣を作って、線形ディラック状態と共存し、強いラシュバ型スピン軌道相互作用(2次元凝縮物質系における運動量に依存したスピンバンド分裂)によるスピン分極も発生させます。それらのヘリカルスピンテクスチャー、あるいは、誘電分極のサインは、しかし、TIディラック状態のそれとは正反対で小規模であることが予測されています。」

チーム発見は、次世代の位相絶縁体とスピン軌道相互作用ベースの量子デバイスのスピンの電気的操作における必須の一歩です。