光子が非常に奇妙な動き(環状軌跡をたどる)をする3スリット干渉

物理学者が、光子の新奇ループ状軌跡を伴う、200年の歴史を持つ有名なダブルスリット実験の一種を初めて敢行しました。こういった光子は、1つのスリットを進行方向へ通過後、次のスリットへ輪を描いて逆向きに通過し、その後、時折、再び3番目のスリットを輪を描いて進行方向へ通過します。面白いことに、全体的な干渉縞に対するこのループ状軌道の寄与は、重ね合わせの原理の通常形からの明らかな逸脱をもたらしています。この明確な逸脱は、重ね合わせの原理の誤った適用として理解でき、いったん、ループ状軌跡と直線軌道間の付加的干渉が説明されれば、重ね合わせは正しく適用できます。

今回の新しい実験に関する論文は、Nature Communications誌最新号に掲載中です。

光のループ

Physicists detect exotic looped trajectories of light in three-slit experiment

こういったループを描いたややこしい光子の動きは、発生可能性が低いので、非常に検出するのが困難なようです。過去に研究者は、この種の異常な軌道の存在を示唆していましたが、それらを観測することには成功しませんでした。環状軌道の発生可能性を高めるために、研究者は、科学者達が、金属表面に存在可能な強く閉じ込められた電磁場と表現している、表面プラズモンをサポートする3つのスリットをデザインしました。3スリット近くのこういった電磁場の存在が、全体的な干渉パターンへの環状軌道の寄与度を2桁で上昇させます。こういった異常な軌道がスリット周囲の近接場と関連があることの物理的解釈を今回の研究が提供しています。このため、環状軌道をたどる光子の確率を上げるために、スリット周辺の近接場の強度を高めることが可能です。

環状軌道を説明する重ね合わせの原理

ループした軌道を持つ新しい3スリット実験は、1801年にトーマス・ヤングによって初めて行われたオリジナルのダブルスリット実験の数ある変種の1つです。それ以来、研究者は、光子の代わりに電子、原子、分子を使うバージョンを実行しています。

二重スリット実験がそれほど多くの注目を集めている理由の1つが、それが、量子重ね合わせの原理の物理的発現を示しているからです。個々の粒子が干渉パターンを作り出すことができる観測結果が、粒子が同時に両方のスリットを通過しなければならないことをほのめかしています。この同時に二つの場所や状態を占有する能力が、量子重ね合わせの決定的な特徴になっています。今のところ、全ての過去の実験バージョンは、重ね合わせの原理によって正確に説明されているように見える結果を産み出しています。これは、ループした軌跡が通常の状態では非常にまれで、全体的な干渉縞に対するそれらの寄与度が概して無視できるためで、従って、そういったケースに重ね合わせの原理を適用する事が、非常に正確な近似値をもたらす結果になっています。

It is when the contribution of the looped trajectories becomes non-negligible that it becomes apparent that the total interference is not simply the superposition of individual wavefunctions of photons with straight trajectories, and so the interference pattern is not correctly described by the usual form of the superposition principle.

「総干渉がただ単純に直線軌道を持つ光子個々の波動関数の重ね合わせではないことが明白になるのは、環状軌道の貢献度が無視できなくなった時で、そういうことなので、その干渉縞は、通常の重ね合わせの原理では正しく説明しきれなくなってしまうのです。」

It is when A that B の強調構文が使われています。BなのはAの時と、Aを強調する形になっています。ここでは、ループ状軌道の寄与度が無視できない時が存在することを強調するために、この強調構文が使われています。

重ね合わせの原理は常に有効で、有効でないのは、2個3個のスリットを持つシステムに重ね合わせの原理の誤った適用です。過去200年間、科学者は、もし、2個や3個のスリット干渉計のうち、1個のスリットだけに光が照らされるなら、干渉を観測するのは不可能だと仮定し、これはこのシナリオが通例あるいは典型例を表しているためです。

しかし、今回の研究論文の中で、研究者は、この事が、光子がループした軌跡をたどる確率が無視できる場合に限り真であることを実証しています。驚くべきことに、ループ状軌跡をたどる光子が、直線(直接)軌跡をたどる光子に干渉する時に、3スリットのうちの1つだけが照らされた時でさえ干渉縞は形成されます。

重ね合わせの原理は、この驚くべきシナリオに、2つの波動関数の合計か重ね合わせを使うことで適用可能です、1つの波動関数が一直線の軌道を説明し、もう一方で環状軌道を説明しています。ループした軌道を考慮に入れないと、重ね合わせの原理の間違った適用を意味することになってしまいます。

干渉効果

“To some extent, this effect is strange because scientists know that Thomas Young observed interference when he illuminated both slits and not only one. This is true only if the probability of photons following looped trajectories is negligible.”

「幾分、この効果は、科学者達が、トーマス・ヤングが、彼が1つだけではなく両方のスリットに光を当てた時に干渉を観測したのを知っているだけに奇妙でもあります。この事は、光子が環状軌跡をたどる確率が無視しても問題ない場合に限り当てはまります。」

A and not only oneは、一つだけではなくA、という風に訳します。

それがこういった実験に適用されると物理学者の重ね合わせの原理の理解に影響を与える事に加え、その結果は、干渉効果に依存している量子シミュレーターや他の技術用アプリケーションを持つ可能性がある光の新しい性質をも明らかにしています。

珍しいループ状経路は、干渉分光法におけるデコヒーレンスの研究や量子ランダムウォーク、量子シミュレーター、量子計算に使われる、他のアルゴリズム用の特定のプロトコルの複雑性を高める研究において、重要な意味を持っているかもしれません。

loopedには常軌を逸した、変わった、狂ったという意味もあり、loopyにも、頭のおかしい、狂った、気の狂ったという意味があります。なので、looped trajectory で、常軌を逸した軌道、変わった軌道と訳すのもありかもしれません。実際にかなり異常な軌跡をたどっているので、この場合、そういった訳でもかなりしっくりきます。

しかし、本当にあんな軌道を描くことが有り得るのかかなり疑問です。一つ目のスリットを通過した後で、一旦Uターンして、2つ目のスリットを通過した後再びUターンして3つ目のスリットを通り抜けるという、意味不明なメチャクチャな動きをしています。あの動きをプログラミングされることなく勝手にできるとしたら、電子や光子や原子や分子があたかも生き物かのように思えてきます。何とも不可思議で不気味な挙動であります。

参考サイトExotic looped trajectories of photons in three-slit interference