コレステロールには、腸内細菌のように、悪玉と善玉があるのですが、コレステロールと聞くと、善悪関係なく体に悪そうに聞こえるから不思議です。コレステロールは減らした方がいいと良く言われますが、善悪関係なく減らせばいいみたいに聞こえ、実際コレステロールが体内でどういう役割を果たしているかを知っている人は少ないと思われます。
今までは、コレステロールが何をしているのかは知られていはいなかったようです。
コレステロールは情報伝達者
Researchers zero-in on cholesterol’s role in cells
科学者達は、長い間、コレステロールに悩まされていました。それは、基本的には必要なのですが、著しく有害で、細胞の中でそれが最も豊富な場所である細胞膜内で、それが何をしているのかは誰も知りません。イリノイ大学シカゴ校の化学者達は、細胞膜内のコレステロールの位置と動きを特定するための革新的な光学式画像化技術を、今回始めて使用しています。彼等は、それの多くの他の生物学的な役割に加えて、コレステロールが、細胞膜に渡って情報を伝達する信号伝達分子であるという驚くべき発見をしています。
今回の研究結果は、Nature Chemical Biology 誌に掲載されています。
”コレステロールは、心臓病に関連しているという悪評を持つ脂肪です。”と、今回の研究を主導した、UIC化学部教授ウォンファ・チョー氏は言います。”それは非常に詳細に研究されていますが、細胞機能についてはあまり知られていません。それの役割は?それは悪い脂肪?絶対にそんなことはありません。例えば、脳は、大体半分が脂肪で、コレステロールは脳内で最も豊富な脂肪です。”と、彼は言った。コレステロール不足は、いくつかの病気を引き起し、体内で12余りのステロイドホルモンを作るための、出発物質にもなっています。チョー氏の過去の研究が、コレステロールが多くの調節分子 (大部分が細胞タンパク質) と相互作用することを明かしていますが、コレステロールが調節分子の1つであるとは、思ってもみませんでした。
”我々は、それが、例えば、増殖や発達などの細胞調節に重要な役割を果たす可能性があることは分かってはいました。”と、彼は言った。”我々は、コレステロール値を上昇させる高脂肪食が、高い癌の発生率と何らかの関係性があるのは分かってはいるのですが、その仕組みは完全には理解できていません。”と、チョー氏は言いました。
最も大きな問題の1つが、理論的には、調節脂質や信号伝達脂質が、情報を伝達するためだけに一時的にしか存在しないはずだということなのですと彼は言った。
コレステロールは細胞膜の主成分
”しかし、コレステロールは、そこにずっと存在し続けます。”と、彼は言った。細胞膜は細胞の総コレステロールを最大で90%含有していて、コレステロールが、細胞膜脂質の約40パーセントを構成しています。
コレステロールは、実際には脂質あるいは脂肪分子の二重層である、細胞膜に安定性を与えてくれています。コレステロールは、他の信号伝達分子が活動している可能性があるプラットフォームとしての役割を果たしていると考えられている、いかだを互いに寄り集まって作り出しています。”しかし、この論文の中で、我々は、単一コレステロール分子がそれ自身で信号トリガーになることができることを明らかにしています。”
これまで、科学者達は、コレステロールが、細胞膜の両方の層、恐らく内層により多く存在していると考えていましたが、今回の研究が、初めて、リアルタイムで生体細胞の内層と外層内のコレステロール濃度を同時に測定し、コレステロールが圧倒的に外層中に存在していることを明らかにしています。
コレステロールは、約40%の細胞膜外層を構成ているのに対し、内層の方はたったの約3%にしか過ぎません。特定の細胞刺激に応じて、内層のコレステロール量は倍増し、外層のコレステロール量は、同じ量だけ減少します。
コレストロールと癌の関係
彼等は、通常細胞では内層中のコレステロール濃度は低いのに対し、がん細胞中でははるかに高いことも発見しています。この事は様々な細胞株を使ってチェックされています。
今回の新しい研究は、スタチン薬ががんリスクを下げる、プラスの副作用があることを明かしてくれています。チョー氏等は、スタチンを使って細胞を処理すると、内層のコレステロール濃度が劇的に低下させ、細胞増殖活動の抑圧を引き起こすことを発見しました。この事は、細胞コレステロール値の薬理学的調節を介して癌を治療するための新しい方法を提案しています。”まだコレステロールの調節機能の初歩研究に過ぎませんが、、コレステロールが、多種多様な細胞過程と細胞制御に関係していることを指し示している、未発表の多くのデータを手元に持っています。”と、チョー氏は言っています。
コレステロールのような脂質は、それらが、ほとんどの生体分子のように水に溶けることができない(水溶性ではない)ので、研究するには非常に扱いが難しい物質で、この事が、定量的技術を非常に困難なものにしてしまっています。
チョー氏等は、6年前に新しい戦略を考案し、生体細胞内の脂質の直接定量化を可能にする、光学式結像技術を開発しています。彼等は、脂質結合タンパク質分子に、脂肪と結合すると色が変化する蛍光センサーを付加しました。その色変化が、遊離脂質との結合度合いを表し、細胞膜内の任意の場所にどれくらいの脂質が存在しているのかを、研究者達に判断させてくれます。
がん細胞は内層にコレステロールを、通常細胞よりもはるかに多く含んでいるようです。なので、癌細胞の内層コレステロール濃度を減らせれば、ガン細胞の増殖を制御することができるみたいです。高コレステロールは体に悪いことは確かですが、不足することも体に悪いことも確かなようです。バランスが大事ということみたいです。ただ、何で、ガン細胞が内層に多くコレステロールを持っているのかは不思議です。そこのところのメカニズムは今後研究によって解明されていくんでしょうが、コレステロールがガン細胞増殖に一枚絡んでいる可能性があることは、非常に興味深いとも言えます。