Paul’s Caseのimmense design of thingsとは何なのか?

Paul’s Caseは、Willa Cather (ウィラ・キャザー)の1905年の短編小説で、1980年にドラマ化もされています。主人公のポールを演じたのは、ジュリア・ロバーツの兄のエリック・ロバーツなのですが、原作に忠実で、非常に良く出来た作品です。ポールという高校生の少年の短い生涯を書いた話ですが、非常に切なくなる、何ともやるせない気分になる物語です。

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immense design of things

immense design of thingsは、Paul’s Caseの最後に登場するのですが、これが何を意味すのかを知るのに、色々とググってみたのですが、人によって様々な解釈があるようです。死後の世界という人もいれば、資本主義社会制度や現実世界と言う人もいます。現実世界は元いた世界のことで、Paul dropped back into the immense design of thingsは、ポールは元いた世界に戻って行ったということになります。虚しい現実逃避を続けていたポールが、自ら命を断つことによって、最後に現実に戻ったということで、つまり、全ての人間は、死という現実からだけは、どうあがいても逃避できないことを意味しています。形振り構わずに天分以上の存在になろうとすれば、最後にはポールのような絶望だけが待っているという教訓なのかもしれません。immense design of thingsは、人それぞれ色々な解釈が出来るように、作者があえてこのようなエンディングにしたのは明白で、実際に、作者は最後までエンディングの意味については語っていません。偽りの自分を演じていた現実逃避の幕が閉じ、逃避していた憎むべき現実に戻っていったという解釈もあるようですが、何かしっくりしないものがあります。

design of things

このサイトに、前述のdesign of thingsの意味をサポートする解釈が載っています。

Whereas Paul had attempted to design his own life before committing suicide, he now finds himself forced back into a larger design, one beyond his ability to control or manipulate.

自殺以前は、自分自身で、人生を自由に設計していたのに反し、今は、ポールは、自分の自由にはならない、より大きな設計の中に引き戻されています。(思うままに偽りの自分を演じられる現実逃避の世界から、死によって、自分を偽れない現実世界に引き戻された。)

design of thingsは、自身の人生設計を意味し、immense of design of thingsは。これが宗教的な天国や地獄を意味しているのか、ポールが忌み嫌っていた社会システムを意味しているのどうかは分かりませんが、少なくとも、ポールは、死の直前に自分の愚かさを悔い、彼のこの後悔の念は、彼が死ぬほど忌み嫌っていた退屈な日常世界への再帰属を意味しますが、後悔先に立たずで、若気の至りでは済まされない、本当に何とも言えない気分にさせられます。

ポールの性質

Paul’s Caseの副題、A Study in Temperamentは、ポールの事例における、彼の気性に関する一考察みたいな意味です。ちなみに、この短編小説は、日本では、ポールの場合:気質の研究と訳されているようです。このポールの性質において、彼が同性愛であることが、この物語に重要な要素を加えているという人もいます。確かに、ニューヨークで、エール大学の学生と怪しい一夜を過ごした後で、遂に、dark cornerを覗き込み、それが何かを知り、そのことには以前から薄々気付いていたけど、実際にはっきりすると、思っていたほど悪くなかったと言ったとも取れるで、このことが、彼に死を決意させた可能性もあります。ポールのgaydar(ゲイを見分ける能力)が、この学生を自分と同じ類の人間と思わせたのでしょうが、冷たくあしらわれたことで彼に自殺を決意させたとも言えるかもしれません。この世に自分の居場所はないと考えた末の自決だとすれば、immense design of thingsは、逃れようのない宿命で、男は男として生きていくしかなく、ポールが今まで精一杯演じてきた、男としての性質を演じ続けるしかないということです。当時のアメリカでは、ポールのhomosexualityが受け入れられる土壌はなかったとだろうし、ポールは、幼少期から、自分が、周囲の同性達とは違うという感覚(dark corner)に悩まされ続け、その結果として、精神が歪んでしまった可能性もあります。

宿命には逆らえない

Then, because the picture-making mechanism was crushed, the disturbing visions flashed into black, and Paul dropped back into the immense design of things.

そのとき、列車との衝突で脳が潰れたことで、不快な情景は消えて無くなり、ポールは、元の逃れられない宿命の中に戻っていきました。

不快な(忌まわしい)光景とは、彼が忌み嫌うCordelia streetのことで、死の直前に、過去のことが走馬灯のように頭の中を駆け巡ったのでしょう。

ポールは、平凡な人間という宿命、労働者階級という宿命、男に生まれてしまった宿命から逃れようとして、NYに到着するやいなや銃を購入します。宿命から逃れるために死を選択したとしても、それもまた宿命(死すべき運命)であったという、あまりにも皮肉な話です。

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