かつてholographic memory(ホログラフィックメモリ)と言われいたストレージ技術が持て囃されていた時期がありました。10年前に10年後にはストレージ媒体の主流になっているだろうなんていう話もあったのですが、その後音沙汰無しです。一体全体この夢の次世代記録メディアに何が起こったというのでしょうか?あれ程期待されていたのが嘘のような廃れっぷりです。まず11年前の記事から見て行きましょう。Holographic Memory
Five to ten years out, holographic storage could become a mainstream consumer technology – or a colossal flop. The still unanswered questions involve the long-term reliability of the components and, of course, cost. The technology must be dependable enough to convince customers to trust it with their most important data yet cheap enough to become ubiquitous.
「5年から10年先には、ホログラフィック記憶装置は民生技術の主流になっているか、あるいは、とてつもない失敗作に終わっている可能性があります。未だに答えられていない問題は、部品の長期間の信頼性と、もちろん、価格を含んでいます。その技術は顧客に彼等の最も重要なデータを委ねるに値する信頼性を保証しなければならないし、さらに、当たり前に使われるほど安価でなければなりません。」
2005年の段階では2010年~2015年で主流になると言われていましたが、やはりとてつもない大失敗に終わってしまったのでしょうか?ホログラフィックメモリの最先端を行っていると思われていたInphaseという会社は2011年に倒産しています(Longmont’s InPhase files for Chapter 11)。
ホログラフィックメモリの行方
holographic data storage (ホログラフィックデータストレージ)の2012年以降の動きを追ってみました。New Holographic Memory Device Could Boost Electronics’ Storage Capacity, Processing Power
But the dream of a fast, high-capacity holographic storage system remains elusive. Khitun and his team’s holographic memory system could mark a turning point, but their device is still very much an experimental prototype. Back in 2005, one of the major players in holographic storage, InPhase, boldly declared its intention to bring holographic storage to market by the the following year. That never happened, and the bankrupt company was sold for parts in 2012.
「しかし、高速で高密度のホログラフィック記憶装置の夢は幻のままです。Khitunと彼のチームのホログラフィックメモリシステムは転換点となり得ますが、彼等のデバイスは未だ、ただの実験的な試作品に過ぎません。2005年に遡れば、ホログラフィックストレージの主要なプレイヤーの1企業だったInPhaseは、翌年にホログラフィック記憶装置を市場に投入すると意気込んでいました。それは決して起こりませんでしたし、その破産企業は2012年に切り売りされました。」
2014年の新しい手法を用いたホログラフィックメモリの開発に成功したというニュース記事の中で、この新技術も所詮はInPhaseの二番煎じのような扱いを受けています。この後も技術的革新のないまま今を迎えているような感じです。結局は元々達成不可能な技術だったのかもしれませんし、あるいは、まだ未完成な技術なのかもしれません。
日本で研究が続けられていた
日立ではBlu-lay Discの 10倍以上の記録容量と転送速度を実現する次世代光メモリとしてホログラフィックメモリに関する研究を行っています。ホログラフィックメモリは、従来の光ディスクで行っていたbit-by-bitの記録とは異なり2次元データを一度に記録再生し、さらにホログラムの原理を利用して3次元的に情報を記録するため、転送速度と記録容量の大幅な向上が見込めます
日立が粛々とホログラフィックメモリの研究開発を行っていたようです。かなり実用段階に近いような書き方なので、日本が世界初のホログラフィックメモリを市場に送り出す可能性がありそうです。日本の技術もまだまだ捨てたもんではないですね。
4年後には製品化?
東京理科大学は、5インチのディスクで2テラバイトのデータを記録できるホログラムメモリを開発した。成功の要因は、新しく開発した東京理科大学独自の「3次元クロスシフト多重方式」と「記録媒体の進化」だという。
ホログラムメモリの開発に成功したようです。
「今後は、3次元クロスシフト多重方式の実用化開発を進める。商用化としては、2020年の東京オリンピック/パラリンピック開催に伴う高精細映像の記録用途として活用されることを目指す」
4年後のオリンピックを目指した商用化を考えているようですが、ただ、
実用化へ向けた開発を共同で行う企業や団体、投資家も合わせて募集していくとしている。
なお、同研究開発は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「エネルギー・環境新技術先導プログラム」プロジェクトによって始まっている。媒体の開発を行う三菱化学、NPO法人ナノフォトニクス工学推進機構、大日本印刷との共同開発である。
実用化へ向けた道のりは限りなく遠いような気もします。ホログラフィックメモリの製品化は、このプロジェクトが先か、日立が先か、といった感じになるのかもしれません。目処としてはやはり東京オリンピックという事になりそうです。その頃にはホログラムディスク1枚で数十テラバイト程度の高速高密度記録媒体が誕生しているかもしれません。そうなればHDDは無用の長物になることはほぼ間違いないでしょう。嬉しい限りです。