2個のセシウム原子から作られた巨大分子

2個のセシウム原子からできている、1-micrometer-sized molecules(1マイクロメートルサイズの分子)が存在する事が、2原子間の結合エネルギーが予想と一致したことで、実験的に証明されたそうです。

セシウムというと、日本人は放射性セシウムを真っ先に思い浮かべると思いますが、とにかく日本人には非常に馴染み深い物質である、そのセシウムからmicrodimer(マクロダイマー)と呼ばれる巨大分子を作り出すことに成功したみたいです。

マクロダイマー

Focus: Giant Molecule Made from Two Atoms

Strongly bound diatomic molecules such as H2or O2 are less than a nanometer across. Surprisingly, scientists have been able to create two-atom molecules more than a thousand times larger by using exotic atoms that attract one another only very weakly. Now, a pair of physicists have calculated what makes these “macrodimers” stable, and they have verified their predictions by creating micrometer-sized molecules containing two cesium atoms. The macrodimers could have applications in quantum computing.

「水素原子、または、酸素原子などの、強固に結合している2原子分子は、直径で1ナノメートル未満です。驚くべきことに、科学者達は、お互いに引き付ける力が非常に弱い異種原子を用いることで、1000倍を越える大きさの2原子分子を作り出すことができました。現在、一組の物理学者は、何がこれらのマクロダイマーを安定させているのかを計算して、2個のセシウム原子を含むマイクロメートルサイズの分子を作ることで、彼らの予測を実証しました。そのマクロダイマーは、量子計算分野で利用できるかもしれません。」

マクロダイマー(巨大2量体)が量子コンピューターにも利用できるらしいので、これは大きなポテンシャルを秘めた、将来が楽しみな巨大分子なのかもしれません。

リドベルグ原子

Interest in these macromolecules stems from the challenges they pose to conventional understanding of molecules and bonds. More than a decade ago, physicists predicted that molecules with interatomic distances as large as 1 micrometer might be created by using a pair of atoms in so-called Rydberg states. These are atoms in which a single outer-shell electron has been excited to a high quantum state so that it orbits far away from the nucleus. Although Rydberg atoms are unstable, they can live as long as tens of microseconds, and experimenters have succeeded in creating macrodimers from them, confirming their existence indirectly by destroying them and detecting specific spectroscopic signatures [1].

「これらの巨大分子への関心は、それらが、分子と結合の従来の理解に突き付けている挑戦から生じています。10年以上前に、物理学者たちは、1μmの原子間距離を持つ分子が、いわゆるリュードベリ状態にある一対の原子を使うことで作れるかもしれないと予想しました。これらは、1個の外殻電子が、原子核から遠く離れて軌道を回れるように、高量子状態へ励起されている原子です。リュードベリ原子は不安定ですが、それらは数十マイクロ秒間も存続可能で、実験者は、リドベルグ原子からマクロダイマーを作り出して、それらを破壊して、特定の分光指標を検出することで、それらの存在を間接的に証明することに成功しました。」

The physicists performed detailed quantum calculations of the force between two cesium atoms in specified Rydberg states. The interatomic force could be attractive or repulsive, they found, depending on the distance between the atoms. For some pairings of Rydberg atoms, the force vanished at certain distances, meaning that the two atoms could remain at rest in the form of a macrodimer with an expected lifetime of some tens of microseconds.

「物理学者達は、特定のリュードベリ状態における2個のセシウム原子間の力の詳細な量子計算を実行しました。彼らは、原子間に働く力が、原子間の距離次第で、誘引にも反発にもなる事ができる事を発見しました。いくつかのリドベルグ原子の組み合わせに対して、原子間力が、特定の距離で消滅し、2個の原子が、数十マイクロ秒の期待寿命を持つマクロダイマーの形であり続ける事ができるかもしれない事を意味しています。」

リドベルグ原子の意味を調べました。リドベルグ原子とは

原子の電子状態は一般に主量子数、方位量子数などの量子数で記述されるが、主量子数の非常に大きな電子状態に励起した原子のことをリドベルグ原子と呼ぶ。最外殻電子が1個のアルカリ原子は主量子数が十分大きい場合、原子核およびその近傍に内殻電子のイオン核が局在し、その周りに最外殻電子が大きく広がっている状態になり、水素原子のモデルで非常に良く近似できる。この時の原子状態は以下の性質を持つ。

  • 原子半径が大きい
  • 結合エネルギーが小さい
  • エネルギー準位間隔が小さい
  • 寿命が長い
  • 隣接準位間のE1遷移の確率が大きい

特にエネルギー準位間隔がマイクロ波領域に属するものもあり、マイクロ波の検出に適している。

リドベルグ原子がマクロダイマーの作成に適している事が良く分かります。

マクロダイマーキュービット

other physicists have already proposed using Rydberg macrodimers as the basis of logical gates in a quantum computer. If two quantum bits (qubits) were encoded in the states of a pair of Rydberg atoms constituting a macrodimer, the absence of any force between the atoms could improve the precision of operations carried out jointly on those qubits.

「他の物理学者達が既に、量子コンピューターの論理ゲートの基礎として、リドベルグマクロダイマーを使うことを提案しています。もし2個の量子ビット(キュービット)がマクロダイマーを構成している一組のリドベルグ原子の状態にエンコードされれば、原子間に何の力も存在していない事が、それらキュービットに対して、一緒に実行される操作の精度を向上させる事ができるようになる可能性があります。」

マクロダイマーを構成している2原子を、それぞれキュービットとして使えれば、1個の分子を2個の量子ビットとして扱え、原子間に何の力も存在していないので、量子もつれ状態が実現しやすい環境を得られるわけです。リドベルグ原子をキュービットとして使うための研究はかなり前からされているようなので(レーザー励起リドベルグ原子を用いた量子もつれ状態の生成とその量子情報への応用)、そのうちマクロダイマーをキュービットにして、量子コンピュータに応用する研究者も出てくるのではないでしょうか。