新しい研究によると、細菌の中で育ったクラゲの蛍光タンパク質を使って、レーザーを作り出すことに初めて成功したそうです。バクテリアの中で育てられたクラゲというのが、イマイチよく分かりませんが、とにかく科学的には快挙のようです。
日本人はクラゲというと、中華料理のクラゲサラダを思い浮かべる人が多いと思いますが、今の時期に海水浴に行くと、クラゲに刺されるので注意が必要です。子供の頃、海でクラゲが大量発生した時に、クラゲすくいをやっていた記憶がありますが、クラゲはそのくらい、日本人には馴染み深い存在でもあります。越前クラゲなんてのもいますし。
ポラリトンレーザー
New Laser Created from Jellyfish’s Fluorescent Proteins
The breakthrough represents a major advance in so-called polariton lasers, the researchers said. These lasers have the potential to be far more efficient and compact than conventional ones and could open up research avenues in quantum physics and optical computing, the researchers said.
「その大発見は、いわゆる、ポラリトンレーザーの大きな前進を意味しています、と研究員達は語った。これらのレーザーは、従来のものよりも、はるかに高効率で小型であるポテンシャルを持っていて、量子物理学と光コンピューティングの分野で、研究の道を開拓するということもあり得ます。と研究者達は言った」
ポラリトンレーザーを調べてみました。エネルギー効率の良い電気ポラリトンレーザー
ポラリトンレーザーは、コヒーレント光(光子)ビームに頼る従来の半導体レーザーよりもエネルギー効率を高くできる可能性がある。光共振器中で光と電子励起の混成状態が形成されると、半分は光で半分は物質の励起子ポラリトンが生成される。これを用いれば、従来のレーザーでは必要な反転分布が起こらなくても、コヒーレント光を放出できる。
ポラリトンレーザーは、半分光で半分物質という、半魚人のような不思議な励起子ポラリトンから放出されるみたいです。
光パルス
Traditional polariton lasers using inorganic semiconductors need to be cooled to incredibly low temperatures. More recent designs based on organic electronics materials, like those used in organic light-emitting diode (OLED) displays, operate at room temperature but need to be powered by picosecond (one-trillionth of a second) pulses of light.
「無機半導体を使う従来のポラリトンレーザーは、極低温に冷却される必要があります。有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイのような、有機エレクトロニクス素材を基にしたより最新のデザインは、室温で動作可能ですが、ピコセコンド(1兆分の1秒)の光パルスを装備する必要があります。」
By repurposing the fluorescent proteins that have revolutionized biomedical imaging, and by allowing scientists to monitor processes inside cells, the team created a polariton laser that operates at room temperature powered by nanosecond pulses — just billionths of a second.
「細胞内部のプロセスを、科学者達が観察する事を可能にする事で、生物医学画像に革命をもたらした蛍光タンパク質を転用することで、チームは、たったの10億分の1秒である、ナノ秒パルスによって室温で駆動可能なポラリトンレーザーを開発しました。」
ピコ秒パルスに適したエネルギー作成は、ナノ秒パルスの1000倍厄介らしいので、ナノ秒パルスで室温で放出可能なポラリトンレーザー開発がいかに凄いことかが分かります。
遺伝子組み換え細菌
研究者達は、今回の研究のポラリトンレーザーを作り出すために、遺伝子組み換えした大腸菌を使ってenhanced green fluorescent protein (eGFP)(機能強化された緑色蛍光タンパク質)を作り出したという事らしいのですが、クラゲは何處へ行ったんだという話で、クラゲは関係ないような感じです。遺伝子組み換え大腸菌の中で成長したクラゲが蛍光タンパク質を生成しているのかもしれませんが、クラゲの名前が出て来ないのが全く謎です。
と思ったら、クラゲの遺伝子を大腸菌に組み込んだという事のようです。細菌の中で育ったクラゲの謎が解けました。遺伝子組み換えによって達成された技術とも言えるみたいです。
光ポンピング
The researchers filled optical microcavities with this protein before subjecting them to “optical pumping,” where nanosecond flashes of light are used to bring the system up to the required energy to create laser light.
「研究者達は、ナノ秒フラッシュ光が、そのシステムをレーザー光を作り出すのに要求されるエネルギーに至らせるために使われている、光ポンピングする前に、微小光共振器をこの蛋白質で満たしました。」
光ポンピングの意味を調べてみました。光ポンピング
レーザー媒質に光を照射し基底状態(準位)からの光吸収により、特定の励起準位の原子占有数を熱平衡での値より著しく多くさせることをいう。光のポンプによって、低い状態にある原子を高い状態にくみ上げる操作に例えられる。上下のレーザー二準位間で必要な原子数の反転分布を得る代表的方法の一つである。たとえば、三準位レーザーでは基底準位の原子を上のレーザー準位へ選択的に励起することにより、この準位の原子数が下のレーザー準位に比べて多い状態、すなわち反転分布が実現されている。ポンピング光としては強力なランプや別のレーザーを用いる。狭義には光ポンピングは、特殊な光照射により、基底状態のわずかなエネルギー差をもつゼーマン副準位間や超微細準位間で大きな原子占有数の差をつくることをいう。
光ポンピングは、光のポンプで原子を組み上げる操作の事のようです。
Importantly, after reaching the threshold for polariton lasing, pumping more energy into the device resulted in conventional lasing. This helps confirm the first emission was due to polariton lasing,
「重要なのは、ポラリトンレージングのための閾値に達した後で、さらなるエネルギーのデバイスへのポンピングが従来のレージングをもたらすという事です。この事が、最初の光の放射がポラリトンレージングによるものだった事を確認するのに役立ちます。」
ポラリトンレージングは閾値が低いのが売りなので、そういう事になります。
利得媒体
Conventional lasers create their intense beams by taking advantage of the fact that photons can be amplified by excited atoms in the laser’s so-called “gain medium.” This is typically made from inorganic materials, such as glasses, crystals or gallium-based semiconductors.
「従来のレーザーは、光子がレーザーのいわゆる利得媒体中の励起原子によって、増幅されるという事実を利用することで、強い光束を作り出しています。利得媒体は、一般的に、硝子、クリスタル、あるいは、ガリウム系半導体などの無機物でできています。」
Polariton laser light is nearly indistinguishable from conventional laser light, but the physical process that creates it relies on a quantum phenomenon to amplify the light.
「ポラリトンレーザーは、従来のレーザーとほとんど区別できませんが、それを作るための物理的工程は、光を増幅するための量子現象に依存しています。」
Repeated absorption and re-emission of photons by atoms or molecules in the gain medium gives rise to quasiparticles called polaritons. In certain conditions — before the energy level required for conventional lasing is reached — the polaritons synchronize into a joint quantum state called a condensate, which gives off laser light.
「利得媒体の原子か分子によって光子の吸収と再発光が繰り返される事が、従来のレージングが必要とするエネルギー準位に達する前に、ポラリトンと呼ばれる準粒子を生じさせます。ポラリトンは、レーザー光を放つ凝縮と呼ばれる結合量子状態に同期します。」
ポラリトンレーザーの利点はレーザー光放出のために要する光ポンピングのエネルギーの閾値が従来のレーザーより低いことなので、弱い光でもOKというか、ナノ秒パルスでいいので、有機ELや、量子コンピュータへの応用が期待されるところです。
数年後には遺伝子書き換え大腸菌も誕生します。それにより、さまざまな人工蛋白質が合成される事が可能になり、ありとあらゆる分野で、今までは考えられなかった目覚ましい進歩がもたらされるのではないでしょうか。