四フッ化イリジウムがグラフェン並のポテンシャル!?

量子力学によって許可されている電子のエネルギー状態は、固体が絶縁体なのか、それが金属として電流を伝導するのかどうかを決定します。チューリッヒ工科大学の研究者が、今回エネルギー状態が今まで知られていない奇妙さを示す今までにない物質を理論的に予測しました。何だかよく分かりませんが、摩訶不思議な物質みたいです。

物質は基本的に、絶縁体、伝導体の他に半導体という性質も有していますが、それ以外の状態の物質が存在する可能性があるみたいです。

半導体の特性

Metal in chains

The first solid might, for instance, conduct an electric current, the second one might turn out to be an insulator, and the third one could be a semiconductor – that is, a material whose electric conductivity increases with increasing temperature (rather than diminishing, which is the case for metals) and that is the basis for transistors and computer chips.

「最初の固体は、例えば、電流を伝導するかもしれません、次の固体は絶縁体である可能性がありますし、最後のは半導体かもしれません。半導体とは、導電率が温度上昇とともに増す物質(減少するのではなく、それは金属の場合です)のことで、このことが、トランジスタやコンピュータチップの基礎にもなっています。」

which is the case for ~は、as is the case for ~とほぼ同じですが、As is the case forは文頭に持ってくることができても、which is the caseは文頭に持ってくることはできません。この辺のことは以前にも書いています

半導体というのは温度が上がると導電率が上昇します。逆に金属は温度上昇とともに、導電率が減少します。この半導体の特性がコンピュータを可能にしています。

バンドギャップとフェルミ準位

Two quantities determine, by and large, if and how a solid conducts electric current: its band structure and its Fermi level. The band structure refers to the possible energy states the electrons inside it can occupy. Whereas a free electron accumulates kinetic energy as it moves faster and faster, electrons embedded in a crystal lattice can only take on energy values that lie inside certain intervals or “bands”.

「2つの量が概ね固体が電流をどの程度伝導するのかどうかを決定します。それらは、その固体のバンド構造とフェルミ準位です。バンド構造は、その中の電子が占有できる可能なエネルギー状態を参照しています。一方、自由電子は、動きが加速するにつれて、運動エネルギーを蓄積し、結晶格子中に組み込まれている電子は、特定の間隔かバンド(帯域)の内側にあるエネルギー値だけを得ることができます。」

This follows from their quantum mechanical wave nature, which is also responsible for the fact that some values of the motional energy are off limits for electrons; those are also called band gaps. The Fermi level, on the other hand, derives from the fermionic nature of electrons, which means that two of them can never occupy the same energy state. If one were to build up a solid one particle at a time, each newly added electron would try to occupy higher and higher energy levels, starting from zero energy. The energy of the last electron would then be the Fermi level.

「この事は、それらの量子力学の波動性に従っています。それはまた、運動エネルギーの一部の値を電子がとれなくしている事実にも関与しています。そえらはまたバンドギャップとも呼ばれています。他方フェルミ準位は電子のフェルミオンの性質に由来していて、それは2個の電子が絶対に同じエネルギー状態を占有できないことを意味しています。もし誰かが一度に1個ずつ安定した電子を増やしていった場合、新たに追加された各々の電子は、ゼロエネルギーからどんどん高いエネルギー準位を専有していきます。結果的に最後の電子が専有するエネルギー準位がフェルミ準位です。」

バンドギャップは禁制帯とも言われている、電子がとることのできないエネルギー領域のことです。または電子が存在できない領域全般を指します。バンドギャップが大きいほど、電気抵抗は大きくなるので、電流が流れにくくなります。

エネルギーバンド

Whether a material is a metal or an insulator can now be easily predicted if its energy bands and its Fermi level are known. If the Fermi level lies inside a band, the most energetic electrons can move easily and hence conduct electric current. If, on the other hand, the Fermi level coincides with a band gap, one has an insulator. By the same token, other materials may be metals by that definition, but with very few possible at the Fermi level. “The material we predict is, if you will, a cousin of such so-called semimetals”,

「物質が金属か絶縁体かどうかは、それのエネルギーバンドとフェルミ準位が分かれば、今は簡単に予測できます。もしフェルミ準位がバンドの内側に存在すれば、最大エネルギー電子は簡単に動くことができるので電流を伝導できます。もし、それに反して、フェルミ準位が禁制帯と一致した場合、それは絶縁体です。同じように、他の物質はこの定義によって金属になり得るかもしれませんが、フェルミ準位ではほとんど可能性のないエネルギー状態です。”我々が予測している物質は、いうなれば、いわゆる半金属のいとこです。”」

most energetic electrons = 最もエネルギー状態が高い電子、最外殻電子のことで、原子核との結合が一番弱いので、外部からの干渉で簡単に原子から離脱してしまいます。離脱した最外殻電子は自由電子となって電気伝導を可能にします。

energy band = エネルギーバンド、電子が存在可能なエネルギー領域のこと。価電子帯(価電子によって満たされるバンド)から伝導帯の間にバンドギャップ(禁制帯)が存在し、フェルミ準位が禁制帯内にあった場合、価電子帯が満杯なため、電子は自由に動けず伝導帯へも移動できずに絶縁体になります。価電子帯や伝導帯等のバンド内にフェルミ準位があれば金属で、半導体は絶縁体と同様に禁制帯にフェルミ準位が存在していますが、バンドギャップが小さいので簡単に電子が伝導帯へ移動可能なんだそうです。

フェルミ準位がバンドギャップ内にあっても、電子が存在可能なエネルギー準位が生じて、電子が移動できるようになります。(ドーピング)

参考サイト導体と絶縁体
参考サイト半導体/電子デバイス物理

グラフェンはバンドギャップゼロ

One semimetal that has made the headlines is graphene. The particular way in which the energy bands of graphene’s electrons approach each other at so-called Dirac points is responsible for the electrical and thermal conductivities of this peculiar material, whose discoverers were awarded the Nobel Prize in Physics in 2010. Since the band gap actually vanishes at the Dirac points, they are also called nodes (in analogy with the nodes of a standing wave).

「大ニュースになった半金属の1つがグラフェンです。グラフェンの電子のエネルギーバンドがディラックポイントで互いに接近するその特有さが、その発見が2010年にノーベル物理学賞をもたらした、この独特な物質の電気・熱伝導性に貢献しています。バンドギャップは事実上ディラックポイントで消滅するので、それらは同様にノード(定常波または定在波の節との類推で)とも呼ばれています。」

グラフェンはバンドギャップがない半金属物質みたいです。

グラフェン並の新物質

In other semimetals the energy bands touch not at isolated points but along well-defined lines or surfaces. “The peculiarity of our new material is that its energy bands touch along interconnected nodal loops, and those nodal loops form a chain”, says Soluyanov. “That may sound strange and rather theoretical, but we have actually found a real material that is likely to have those properties. That such nodal chains should appear is not an accident, but dictated by the symmetries of the material’s crystal lattice.”

「他の半金属では、エネルギーバンドは孤立点ではなく、明確な線か表面に沿って接しています。”我々の新しい物質の特異な点は、それのエネルギーバンドが相互接続した節輪に沿って接していて、それらの節輪が鎖を形成しているということです。”とSoluyanovは言う。”これは奇妙でどちらかと言えば理論的に聞こえるかもしれませんが、我々は、それらの特性を持っていそうな実在する物質を実際に持っています。そのような節鎖が出現することは、偶然ではなく、物質の結晶格子の対称性によって決定付けられています。”」

nodal loopはノーダルループでいいと思いますが、一応節輪と訳しておきました。nodal chainもノーダルチェーンかノーダルチェインでいいと思いますが一応節鎖と訳しておきました。ググるとノーダルループもノーダルチェーンも全く引っかからないので、そうするのが無難とも言えます。節輪と節鎖については結構引っ掛かります。

Incidentally, physicists are able to draw an interesting analogy between solid state and high energy particle physics. In high- theories nodal chains would be impossible due to the high level of symmetry of the vacuum. In a crystal, by contrast, there are far fewer symmetries, creating a kind of novel vacuum.

「ちなみに、物理学者は、固体物理学と高エネルギー粒子物理学との間に面白い類似性を引き出すことができます。高エネルギー理論では、節鎖は真空の高度の対称性のせいで不可能です。結晶では、それに反して、対称性の著しい欠如が、新奇な真空らしきものを作り出しています。」

門外漢には良く分からないアナロジーになっています。

To find the nodal chain material the researchers took a long and winding road. Assuming it would be easier, they first set out to look for materials with a single nodal loop and determined what kind of symmetry properties the of such a material should have. All in all, 230 different types of crystal symmetries are known, and it is those symmetries that are largely responsible for the properties of a material’s band structure.

「節鎖を持つ物質を探すために、研究者は紆余曲折を経験しました。それがもっと簡単だと思って、最初に単節輪を持つ物質を探し始め、そのような物質が持つべき結晶格子の対称性を決定しました。全部で230種類の結晶対称性が知られていて、それら対称性が、物質のバンド構造の性質に大きな役割を果たしています。」

The Long And Winding Road(ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード)はビートルズの歌の名前ですが、直訳すれば長い曲がりくねった道ですが、ここでは紆余曲折の経験と意訳しておきました。took a long and winding road = 長い曲がりくねった道を通ったで、この場合、紆余曲折の経験をしたでいいのではないかと。

四フッ化イリジウム

Soluyanov and his colleagues then scoured massive online databases (ICSD – Inorganic Crystal Structure Database) in which thousands of known solids are listed alongside their crystal structures. Eventually, they chanced upon one that had not only a nodal loop, but the more intricate nodal chain: iridium tetrafluoride. “It was an unexpected surprise”

「Soluyanovと彼の同僚達は、その後、何千もの既知の固体がそれらの結晶構造と一緒にリストアップされている膨大なオンラインデータベースを徹底的に調べました。最終的に彼等は節輪だけではなく、もっと複雑な節鎖を持つ物質に出くわしました。四フッ化イリジウムという物質です。”それは予想外の驚きでした。”」

四フッ化イリジウムが未知の特性を有するかも知れない物質みたいです。

This little known and, so far, not particularly useful solid could be the prototype for a new kind of material with potentially technologically interesting properties. For instance, the physicists in Zurich predict that the electric conductivity of such solids should be influenced by magnetic fields in a characteristic way. This phenomenon is also known as magneto-resistance and plays an important role in modern data storage technologies.

「このほとんど知られていない、今のところ特に役立つわけでもない固体が、潜在的に技術的に興味深い性質を持った新しい種類の物質のプロトタイプである可能性があります。例えば、チューリッヒの物理学者は、そのような固体の電気伝導率は特徴的な形で磁場に影響されるはずだと予想しています。この現象はまた磁気抵抗としても知られていて、最新のデータ保存技術において重要な役割を果たしています。」

高温超伝導の可能性

Furthermore, the of iridium tetrafluoride has certain peculiarities that have been connected with higher-temperature superconductivity. “All of that’s a long shot, of course”, Sigrist concedes. Experimental tests of the novel nodal chain metals have still to be done, and surprises are quite possible.

「さらに、四フッ化イリジウムのバンド構造は、高温超伝導と関連付けられている、いくつかの特性を有しています。”全てはロングショットです。もちろん”, Sigristは認めています。新しい種類の節鎖金属の実験検証はこれから先も行われる必要があり、サプライズの可能性はかなり高いと言えます。」

四フッ化イリジウムが高温超伝導のカギを握っているとしたら、これは凄い発見だし、近い将来大きなニュースになることは間違いありませんが、この手の研究はほとんど立ち枯れに終わってしまうので、あまり期待はできないかもしれません。しかし、グラフェン並に有望な物質であることだけは確かなのかもしれません。