常温超電導(室温超伝導)が遂に可能に!?

研究者は、米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所(バークレーラボ)で製造したナノ材料の極薄スライスの中に、電子のための3次元競技場を作り上げました。バークレー研究所、カリフォルニア大学バークレー校、ドイツからの科学者達で成る研究チームが、今回の研究に携わっています。

今回史上初、電子が1つの表面上を周回して、その後その物質の大半を通って、反対側の表面へ回って戻ってくるという、独特な動きをすることを観測することに成功したそうです。

別の種類の超伝導体

Scientists find twisting 3-D raceway for electrons in nanoscale crystal slices

The possibility of developing so-called “topological matter” that can carry electrical current on its surface without loss at room temperature has attracted significant interest in the research community. The ultimate goal is to approach the lossless conduction of another class of materials, known as superconductors, but without the need for the extreme, freezing temperatures that superconductors require.

「室温で損失無しで表面上に電流を流せる、いわゆる位相物質を作り出す可能性は、リサーチコミュニティの中に相当な関心を引き付けています。究極のゴールは、超電導体として知られている、しかし超伝導体が要求する極低温の必要がない、別の種類のロスレス伝導に近づくことができるようになることです。」

“Microchips lose so much energy through heat dissipation that it’s a limiting factor,”

「マイクロチップは、それが限定要因になっている放熱によって、莫大なエネルギーを失います。」発熱問題がネックになっています。

“The smaller they become, the more they heat up.”

The studied material, an inorganic semimetal called cadmium arsenide (Cd3As2), exhibits quantum properties—which are not explained by the classical laws of physics—that offer a new approach to reducing waste energy in microchips. In 2014, scientists discovered that cadmium arsenide shares some electronic properties with graphene, a single-atom-thick material also eyed for next-generation computer components, but in a 3-D form.

「小型化すればするほど、熱くなります。研究対象の物質は、古典的な物理法則では説明不可能なヒ化カドミウムと呼ばれる無機半金属で、マイクロチップのエネルギー浪費を減らすための新しいアプローチを提供しています。2014年、科学者達は匕化カドミウムが、次世代コンピュータコンポーネントとして同じように期待されている原子1個の厚さのグラフェンといくつかの電子物性を共有していて、しかし3次元形であることを発見しました。」

炭素三兄弟の末っ子のグラフェンです。フラーレン、グラファイト、カーボンブラックを含めれば六兄弟ですが、ウルトラ六兄弟みたいで嫌なので、超強力三兄弟にしておきます。ウルトラ兄弟で言えば、ゾフィー、エース、タロウみたいなもんです。

ヒ化カドミウムとか、聞いただけで体に悪そうですが、カドミウムと聞くとイタイイタイ病を思い出すのでそう思えてしまいます。

キラリティー

“What’s exciting about these phenomena is that, in theory, they are not affected by temperature, and the fact they exist in three dimensions possibly makes fabrication of new devices easier,”

「これらの現象が面白いのは、理論的に、それらは温度によって影響されず、それらが新しいデバイスの製造を簡単にさせる可能性がある三次元で存在しているという事実です。」

The cadmium arsenide samples displayed a quantum property known as “chirality” that couples an electron’s fundamental property of spin to its momentum, essentially giving it left- or right-handed traits. The experiment provided a first step toward the goal of using chirality for transporting charge and energy through a material without loss.

「匕化カドミウムのサンプルは、電子の基本性質のスピンとそれの(磁気)モーメントを対にする、基本的にそれに左利き特性か右利き特性を与えている対掌性(キラリティー)として知られる量子的性質を示しています。その実験は、損失無しで電荷とエネルギーを物質を通じて輸送するためにキラリティーを使うためのゴールへの第一歩になりました。」

couple A to B = AとBをつなぐ、AとBが対になる

キラリティーがイミフだったので調べてみました。以前にもやったような気もしますが、おさらいという事でとにかく調べてみました。

「右手と左手は重ならない」という性質、キラリティーの謎

右手と左手は同じ形をしているけど、お椀を重ねるようには重ねられないですよね? キラリティーとは「構成要素が同じなのに立体構造(右手系)がその鏡像(左手系)と空間的重ならない」という性質のことを言います。右手と左手の役割(例えば右利きとか左利きとか)が違うように右手系の物質と左手系の物質では性質が異なります。なのでキラリティーのある物質の右手系(あるいは左手系)だけを完全に創り分けたいというのが、物質科学の夢です。
人や生物を創る構成物質(アミノ酸や糖類)にもキラリティーがあります。でも不思議なことに 身体の中のアミノ酸は左手系だけで右手系はありませんし、糖類は右手系しかありません。ではなぜ生命体の構成物質には右手系か左手系のどちらか一つしかな いのでしょうか?この問題は「ホモキラリティー問題」として知られる未だベールに包まれた生命科学の大きな謎です。このように「キラリティー」は常に科学者の好奇心を掻き立てる魅力あふれるテーマなのです。

光のキラリティーなるものも存在するようです。このキラリティーという概念もかなり奥が深そうなのであまり考えないようにします。

実験材料製造

In the experiment, researchers manufactured and studied how electric current travels in slices of a cadmium arsenic crystal just 150 nanometers thick, or about 600 times smaller than the width of a human hair, when subjected to a high magnetic field.

「その実験において、研究者は、強力な磁場にさらされた時、たったの150ナノメートルの厚さ、あるいは、人の髪の毛の幅の約600分の1のヒ化カドミウム結晶の薄片中を、電流がどのようにして移動するのかを作って研究しました。」

The crystal samples were crafted at Berkeley Lab’s Molecular Foundry, which has a focus in building and studying nanoscale materials, and their 3-D structure was detailed using X-rays at Berkeley Lab’s Advanced Light Source.

「その結晶サンプルは、ナノスケール材料を作って研究することに特化している、バークレー研究所の分子工場で丹念に作り上げられ、それらの3次元構造は、バークレー研究所の改良型放射光施設で、X線を使って細かい手入れがされました。」

Many mysteries remain about the exotic properties of the studied material, and as a next step researchers are seeking other fabrication techniques to build a similar material with built-in magnetic properties, so no external magnetic field is required.

“This isn’t the right material for an application, but it tells us we’re on the right track,”

「その研究対象の材料の奇妙な性質について多くの謎が残っていて、次のステップとして、研究者は、外部磁界が必要ないように、磁性が組み込まれた似たような材料を構築するための他の製造テクニックを探しています。”これは応用するには正しい物質ではありませんが、我々が正しい方向に向かっている事を教えてくれています。”」

If researchers are successful in their modifications, such a material could conceivably be used for constructing interconnects between multiple computer chips, for example, for next-generation computers that rely on an electron’s spin to process data (known as “spintronics”), and for building thermoelectric devices that convert waste heat to electric current.

「研究者が改良に成功すれば、そのような材料は、例えば、データ処理に電子のスピンを利用する(スピントロニクスと廃熱を電流に変換する熱電デバイス構築で知られている)次世代コンピュータのための、複数のコンピュータチップ間の相互配線を作るために、たぶん、使えるようになるかもしれません。」

It wasn’t clear at first whether the research team would even be able to manufacture a pure enough sample at the tiny scale required to carry out the experiment,

「研究チームが実験を遂行するために必要な微小スケールで十分純粋なサンプルを作ることができるかどうかでさえ、初めは不透明でした。」

“We wanted to measure the surface states of electrons in the material. But this 3-D material also conducts electricity in the bulk—it’s central region—as well as at the surface,” he said. As a result, when you measure the electric current, the signal is swamped by what is going on in the bulk so you never see the surface contribution.”

「”我々は、材料中の電子の表面状態を測定したかったのです。でも、この3次元材料は、表面だけではなく、中心部までバルクで電気を伝導しています。”彼は言った。結果として、電流を測定する時、信号はバルクで起こっている事によって圧倒されてしまい、表面部分だけ知ることは不可能です。」

中心部に至るまで、ほぼ材料全体に電流を伝導するので、表面の電気の流れだけ測ることは不可能なようです。ディラック半金属ですからね。

So they shrunk the sample from millionths of a meter to the nanoscale to give them more surface area and ensure that the surface signal would be the dominant one in an experiment.

「なので彼等はそれらにもっと表面領域を与えるのと、表面信号が実験で支配的になることを確実にするために、百万分の1メートルからナノスケールへサンプルを縮小しました。」

“We decided to do this by shaping samples into smaller structures using a focused beam of charged particles,” he said. “But this ion beam is known to be a rough way to treat the material—it is typically intrinsically damaging to surfaces, and we thought it was never going to work.”

「”我々は、荷電粒子の集束ビームを使ってサンプルを微小構造に形作ることでこれを成し遂げることを決めました。”と彼は言った。”しかし、このイオンビームは物質をラフに取り扱うことで有名で、典型的に本質的に表面を損傷させるので、絶対にうまくいかないと考えていました。”」表面破壊屋っていうことみたいです。

But Philip J.W. Moll, now at the Max Planck Institute for Chemical Physics of Solids in Germany, found a way to minimize this damage and provide finely polished surfaces in the tiny slices using tools at the Molecular Foundry. “Cutting something and at the same time not damaging it are natural opposites. Our team had to push the ion beam fabrication to its limits of low energy and tight beam focus to make this possible.”

「しかし、現在、Philip J.W. Mollが、ドイツのマックス・プランク固体化学物理研究所でこのダメージを最小化する方法を発見し、分子工場でツールを使ってその微小薄片表面を精巧に磨けるようにしています。”何かを切ると同時にそれを傷付けないようにすることは本来正反対です。我々のチームは、この事を可能にするために、イオンビーム加工を低エネルギーと光束密度の限界までプッシュする必要がありました。”」

natural opposites, natural oppositeは、natural enemy(天敵)と考え方は一緒で、本質的に正反対(真逆)と言った意味合いです。tight beam focusは、beam focusは直訳すればビーム焦点ですが、この場合、ビーム集束度、ビーム収束度でもいいかと。焦点を絞るは考えを絞るという意味合いもあるのでややこしいし、要は、ビームを限界まで細くするという意味になれば全く問題ありません。

電子の奇妙な動き

When researchers applied an electric current to the samples, they found that electrons race around in circles similar to how they orbit around an atom’s nucleus, but their path passes through both the surface and the bulk of the material.

「研究者が試料に電流を印加した時、電子は、原子軌道の周りを回るのに似たやり方で、円形にグルグル走り回っていましたが、それらの経路は、その試料の表面とバルクの両方を通過していました。」

The applied magnetic field pushes the electrons around the surface. When they reach the same energy and momentum of the bulk electrons, they get pulled by the chirality of the bulk and pushed through to the other surface, repeating this oddly twisting path until they are scattered by material defects.

「印加された磁場は、表面の電子をあちこちへ振り回していました。それらがバルク電子と同じエネルギーとモーメントに達した時、そのバルクのキラリティーによって引っ張られ、反対側の表面へ押しやられ、それらが材料欠陥によって散乱されるまで、この奇妙に捻れ曲がった経路を繰り返します。」

表面電子が磁場に動かされることで、バルク電子と同じエネルギーとモーメントを得た時、例の電子のレースが始まるみたいです。

The experiment represents a successful marriage of theoretical approaches with the right materials and techniques,

「その実験は、理論上のアプローチと正しい材料とテクニックとのうまくいった結婚を象徴しています。」成功した融合でもいいです。

“This had been theorized by Andrew Potter on our team and his co-workers, and our experiment marks the first time it was observed,” Analytis said. “It is very unusual—there is no analogous phenomena in any other system. The two surfaces of the material ‘talk’ to each other over large distances due to their chiral nature.”

「”これは、我々のチームのAndrew Potterと彼の同僚達によって理論化され、我々の実験がそれを初めて観測しました”とAnalytisは語った。”それはとても珍しく、他のどのような系においても類似した現象は存在しません。材料の2つの表面が、それらのキラル特性のおかげで長距離をお互いに応答し合っています。”」

“We had predicted this behavior as a way to measure the unusual properties expected in these materials, and it was very exciting to see these ideas come to life in real experimental systems,”

「我々はこの挙動を、これらの材料において予想された特異な性質を評価するための方法として予測していましたし、実際の実験系でこれらのアイデアが現実となるのを目にしてとてもワクワクさせられました。」

“Philip and collaborators made some great innovations to produce extremely thin and high-quality samples, which really made these observations possible for the first time.”

Researchers also learned that disorder in the patterning of the material’s crystal surface doesn’t seem to affect the behavior of electrons there, though disorder in the central material does have an impact on whether the electrons move across the material from one surface to the other.

「”Philipと協力者達が、実際にこれらの観測を初めて可能にした極薄で高品質なサンプルを作り出すためのいくつかの偉大な革新を起こしました” 研究者達はまた、材料中心における障害が電子が1つの表面から他の表面へとその材料を横切って移動するかどうかに影響を与えるのにもかかわらず、材料の結晶表面のパターニングでの障害が、そこでの電子の動きに影響を与えるようには見えないことを学びました。」

The motion of the electrons exhibits a dual handedness, with some electrons traveling around the material in one direction and others looping around in an opposite direction.

「電子のその動きは、一部の電子は材料の周りを一方向に回り、他の電子は逆方向に材料の周りを輪を描いて動くことで、両利きを示しています。」

dual handednessで両利き手、両利き、dual roleなら一人二役、二役、二重の役割という意味になります。dual memoryなんてのもあります。

Researchers are now building on this work in designing new materials for ongoing studies, Analytis said. “We are using techniques normally restricted to the semiconductor industry to make prototype devices from quantum materials.”

「”研究者達は現在進行中の研究のための新しい材料を設計するのにこの研究を利用しています。”とAnalytisは言った。”我々は量子材料からプロトタイプデバイスを作るために通常は半導体産業に限られているテクニックを使っています。”」

従来とは全く別の種類の常温超伝導体を実現するための次のステップが現在進行中なので、近い将来冷却装置が必要ない超電導体が本当に開発されるかもしれません。非常に期待大の研究と言えるのではないでしょうか。